「聖ベネディクトの戒律」と道元禅師の「永平大清規」
五月一三日、「聖グレゴリオの家」のミサに参列。「主の昇天」の主日のミサの説教の後、ベネディクト会の「オブラーテ(献身者)」の入門式と誓願式が、来日中のドイツ聖オッティリエン大修道院のラバヌス・ペトリ神父の司式で行われました。オブラーテとは「聖ベネディクトの戒律」の精神に従って献身的な生活をする在俗の信徒のことをさします。 オブラーテの誓願式では、ベネディクト会の「戒律(regula=rule)」を記した書とともに、司祭から誓願者へと蝋燭の灯火を手渡す儀式が行われました。
このところ、道元についてFBで書いてきましたが、道元には、主著『正法眼蔵』とおなじく和文で書かれた重要な著作として『永平大清規』があります。
「清規」とは「修道者が守るべき規則」のことで、「清」とは「清衆」つまり修行道場の雲水のこと。
『永平大清規』と呼ばれる一連の著作を成立順に列挙すると、
1 「典座教訓」2 「対大己法」3 「辨道法」4 「知事清規」5 「赴粥飯法」 6「衆寮箴規」
で、道元三七歳の深草興聖寺に始まり、帝都を離れて山林に修行場を求めた道元が、越前吉峰寺、大仏寺、大仏寺改め永平寺にて著述した最晩年のものまで含みます。
「聖ベネディクトの戒律」が単に修道会の規則にとどまらず、今日のカトリック教会では在俗信徒が、世俗の中の福音を実践するためにも良く読まれています。それと同じく、道元の「清規」もまた、出家者だけでなく、在家にあって「菩薩行」をおこなう人の生活の指針として読まれてきました。
私は、とくに「典座教訓」という「永平清規」に惹かれます。道元の禅においては、料理や食事と云った日常生活の「作法」がそのまま仏道であるという教えが説かれています。入宋時の道元自身の体験を踏まえた大切なエピソードがあり、「修道」とはなにか、「文字とは何か」についての道元と老典座との対話問答が記されています。これについては、改めて次に、私なりに考えてみたいと思います。
===========================
「聖ベネディクトの戒律(古田暁訳)」はドン・ボスコ社からポケット版で、「典座教訓」は、故秋月龍珉老師の解説付きで大法輪閣または講談社学術文庫で読むことができます。