プラ製オカリナ

2023年07月10日 | 短歌
◇ プラ製オカリナ ◇
オカリナに 名器はあるのか
ときおりは 取りだして吹く
プラ製オカリナ

オカリナの吹き手として、地域のオカリナファンに名の知られている人がいる。温和でスマートな老人である

その人の用いているオカリナはプラスチック製だという話を聞いた。信じられぬ思いであった
プラ製オカリナは入門用として、初心者が最初に手にする安価なものである

手づくりの陶製であってこそ、オカリナはあのやわらかくて深い音色が出るのであろうし、それゆえに数万円という値でも吹き手は納得して求めるのではないか

コンクリートの床の野外音楽堂でのできごとであった
老名手が手をすべらしてオカリナを床に落としてしまうという事件が発生した
カランコロンという乾いた音を立てて、オカリナはころがり、あわてた老人が腰をかがめてそれを追った。瞬時のことであった

いい音色は材料によるものではないと思い知らされたときの感動が、あのシーンとともによみがえる

日常づかいのものとして陶製のオカリナを持つようになったが、ときおり最初に買ったプラスチック製のオカリナを取り出して吹いてみることがある

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