記録的な大雪にも、雪山ゴコロが動かないほど
妙に気持ちがヘコんだこの週末。
多分ここんとこ、神経症や鬱に関する本に接しすぎたからでしょう。
こっちまでちょっとプチ鬱かも。
別に鬱の本を選んで読んでるわけではないのですが、
好きな作家が揃いも揃ってそっち方面の疾病を抱えてくださるので、
ここんとこ読む本、特にエッセイ関係は総じて鬱バナシに終始しておる状況です。
気分転換を兼ねて、今日は違う分野の本を選んでみました。
まさにお口直し?「食」についての二冊を読了。
一冊目は、食の怪人・小泉武夫さんの「奇食珍食」。
醸造や発酵の専門家ですが、この人の愉快なところは、
明らかに学問的関心よりも好奇心が先にたって、
世界のヘンなモノを食べ歩いてはること。
その上、文章も上手いのでどんどん引き込まれます。
ゲテモノ喰いを色眼鏡で見ることの無い一方で、
文化的なバックボーンもなく絶滅の危機にある種を食べる好事家や、
興味本位の残酷料理などは厳しく糾弾しておられる姿勢も好き。
中華の「酔蟹」について記した一説。
「…口に入れるとじっくりと、溶けてしまうかのような味が口中に広がり、
どんな悩みを持った者でも、おもわずほほえむほどである。」
どんな悩みを持った者でもほほえむ!どんなに美味いんでしょう♪
酔蟹喰いてー!
…去年の今頃、上海で喰った上海ガニはうまかったなぁ。
食べ物にナミダが出そうになった経験は、そうそうあるもんじゃないです。
二冊目は「開高健が喰った!」、菊谷匡祐著。
開高大兄と親交の深かった著者が、
当事の大兄の食べっぷりと共に、大兄の好んだ店を紹介。
同じく菊谷さんによる「開高健のいる風景」は、
開高ファンには興味深い作品ながらも
どこか覗き見趣味のような、ゴシップ紙のような匂いが感じられて
あんまし好きにはなれませんでしたが。
これは面白いよー!
どの店の料理の上手そうなのは勿論のこと、
イチイチ語られる(作中でもよく目にした)大兄のウンチクと、
そして何より、あまりにも豪快な大兄の喰いっぷりが痛快。
大兄の好きやった中華がよく出てくるし、
とくにビール飲みながら餃子を何人前も食べる描写が多いので、
今日は昼も夜も、二人前ずつ餃子を食べてしまいました。
東京や茅ヶ崎の店が多いので、向こうに住んでいたときに
読めなかったのが残念。出張の機会なんかに、ちょこちょこ行こっと。
とりあえず、近場福井県の「こばせ」に蟹喰いにいくぞー!
大兄のエッセイ「越前ガニ」(新潮文庫「地球はグラスのふちを回る」収録)は、
もっとも食べ物を美味そうに描写した作品のひとつやと思います。
この新潮文庫も、最近活字をデカくした改版が出たそうです。
ここんとこ開高特集や、関連本の出版が増えた気がする。
豪快にして繊細やったあの人を、世相が求めてるんでしょうか。
ということで、本からの滋養でココロの疲れを癒した週末でした。
【19日夕方追記】
今日の毎日新聞夕刊に、開高と若狭のカニの記事がでてました。
開高が通いつめた「こばせ」の主人のコメントも。
喰うぞー!