<前回よりつづく>
さて、この日二つ目のお寺は金鋼輪寺。
黒門をくぐったすぐ横にある歴史資料館の前に
「顔出し看板」があるのが目に入りましたが、
顔を出したい思いをぐっと堪え、国宝の本堂を目指し
参道の石段を駆け上がります。
金剛輪寺の見物の一つが、参道沿いにずらりずらりとならぶ
小さなお地蔵さまと赤いかざぐるま。
地蔵。
風が吹いてくると、風上から順にからからと回りだすのです。
今回は参拝客も多く、愛宕念仏寺のような不気味な感じは
ありませんでしたが、普段の夕暮れに一人で訪れるとかなりびびるので要注意。
今回、お地蔵様のシルエットがキューピーの「たらこ」に
似ていることを発見。
たらこ。
無言でぞろり、と並んでおられる様子に、
脳内にはいずこからともなく「た~らこ~♪、た~らこ~♪」の
歌声が響いてまいりました。
今回公開されたのは、「生身の観音」と呼ばれる木彫りの聖観音。
何でも、あの行基が像を刻んでいると、いきなり像から血が流れ出したとか。
そこで行基は彫るのを止め、荒彫りのまま完成品とし、仏像を祭ったといいます。
(・・・そや、こんどから納品に間に合わなさそうな時はこの手を使おう。)
先の聖徳太子作に続き、今度の秘仏本尊は行基作。
東京国立博物館で開催中の仏像展にも負けないオールスターぶりですな。
ノミの跡を残したボディに、こけしのような形の輪郭。
全体的に簡素化されたラインが、
なんか「レゴの人形」みたいなイメージを持ちました。
←顔の形が、この人に似ている。
あ、今度レゴにパテ盛って観音作ってみよ!
金剛輪寺には、普段から魅力的なブツがたくさん。
外からは見えない後陣もワクワクしまっせー。
本堂内陣の左隅におられた、彩色の毘沙門がまたがる獅子は、
色といい形といい、「ドラえもん」にしか見えません。
体は青でお腹だけ白、しかもご丁寧に、赤い首輪と金の鈴まで!
柄の悪いおとっつあんみたいな半跏の大黒像も珍しいです。
その中に、端整なオトコマエの坐像の写真が。
この金銅製聖観音菩、何でも廃仏毀釈の折、
アメリカのボストン美術館に亡命してしまわれたそうです。
(なんでも、あのビゲローが連れて帰ったんやとか。
どうもビゲ郎氏、何万点もの日本美術を守ったのか、
それとも買いあさったのか、微妙なトコあるよなー。
でも、ここで逐電させとかんと後世に残ったかどうか・・・
バーミヤンの石仏しかり、もとに戻せんもんは壊したらアカン。)
舞台上手(?)の持国天、後やサイドから観たら
ケツがばばーんとでっかいのに、前からは結構スラリと見えて。
この持国天の着こなしをマスターすれば、
体形のコンプレックスにもオサラバじゃなくって?
ファッション雑誌の表紙を持国天が飾る日も近いでしょう。
「ハードな素材をシックに決めて
2007冬の着こなしは持国天スタイルでキマリ!!」みたいなん。
そして、ジコちゃん系の女の子が街に溢れたり。ないか。
もう少し秋も深まれば、「血染めのもみじ」として名高い
真っ赤な紅葉も楽しめるでしょう。
…うーん、しかし「地蔵の群れ」「生身」「血染め」と
不気味なイメージが拭えない、不思議なムードのある寺です。
湖東三山の最後は、西明寺。
本堂の近くまで車でのぼることもできますが、
ブツにアプローチするプロセスを楽しむ為にも、
ぜひ国道沿いの山門からの入山をお薦めします。
駐車場から山門へは、国道307号線を横切る必要があります。
見通しが良くないので、十分に注意してください。
山門をくぐって驚くのは、その先、参道が何と名神高速道路の上を通っているのです。
砂利や石垣で、一見違和感のない風景ですが、
まわりをよく観ると、そこは名神高速を横切る陸橋の上。
山を切り開いて高速道路が開通した、ってのがよく分かると思います。
(名神を走っている時も、甲良町に入ったら頭上を気にしてみてください。)
山門すぐの庭園にある天然記念物「不断桜」は、
11月に満開となる珍しい桜。もう花をつけていました。
(金剛輪寺の本堂前にも、少しだけ花をつけた桜がありましたよ。)
西明寺の参道は、コケの美しさも秀逸。
でも、持って帰ってしまう心無い輩も多いのでしょう。
この寺のお気に入りの立て札が、
「この苔は、西明寺が好きです。」
うーん、「とるな」というメッセージを、上手く婉曲して表現していますね。
さて、本堂前。あまりにも美しい国宝五重塔を多聞塔に見立て、
「多聞天ごっこ」などに童心にかえるえびと仏友マスカット。

左:えびと国宝三重塔。 右:多聞天。
薬師瑠璃光如来と日光、月光の「薬師三尊」スタイル。
西明寺の秘仏本尊、開帳は住職一代に付き1回限りなんだとか。
厨子の中のお薬師さんは、全身のバランスの取れた、
実にスタンダードな美しさの仏像でいらっしゃいました。
この周囲を、四天王と十二神将が固めております。
この十二神将が、個性的で表情も実にユーモラス。
長浜にある海洋堂フィギアミュージアムで売ってても
フルコンプ目指すよな、コレ。やっぱ鎌倉の躍動感は素敵。
闘神なのに頭上は耳ピン立ちのうさちゃん、
右手の形も乙女チックな安底羅(あんちら)と、
ウィンクばっち~ん☆の毘羯羅(びきゃら)がステキ。
乙女な安底羅と、ばっち~ん☆な毘羯羅。
後陣にいらっしゃる白塗りの弁天坐像も、
頭にじいさまなどを乗せ、実にファニーでいらっしゃる。
役行者+前鬼・後鬼、のジオラマは、
やはりそのまま海洋堂フィギアミュージアムで展示してそう。
逆立つ前鬼の髪型に「スーパーサイヤ人入ってますね」と、
だんだんコツが分かってきた模様の初心者ポンジュース氏。
(あれ、役行者いたのは金剛輪寺やったっけ?)
その後、多賀大社の名物「糸切り餅」を求め
更に北へと走ったものの、到着時には5時を回っており
既にタイムアップ、多賀大社周辺のお店は閉まっておりました。
巻き寿司の要領で餡を餅でくるみ、
この細長いロールを糸を使ってひと口大のサイズに
切り揃えた「糸切り餅」、あっさりしてて美味いんやけどな~。残念!
腹いせ(?)に、そこから湖北まで走り
ご当地B級グルメの雄、つるやの「サラダパン」をゲット。
ついでに、彦根城築城400年を控えた彦根で
巷で話題の「ひこにゃん」ピンバッチも入手。あいかわらずゆるい!
一生に一度の、湖東三山秘仏ご開帳は、
湖東~湖北のローカル名物借り物競争みたいな
幕引きとなりましたが、1日3寺でお腹イッパイのプチ旅でした。
特別開帳は10月27日まで。急いで急いで!