制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

ライフ・イノベーションの工程表を考える その1

2010年01月04日 09時43分05秒 | 情報化・IT化
昨年末の30日、「新成長戦略 ~輝きのある日本へ~」が閣議決定された。
今回、公表されたものは、経済産業省で議論が進められてきた「成長戦略会議」を土台とした「基本戦略」で、これからの肉付け作業を経て、6月初めに「成長戦略実行計画(工程表)」の取りまとめがなされることになっている。

「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」について
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/091230.html

2020年度まで国内総生産(GDP)を実質2%成長させ、現在の1.4倍の650兆円に増やすことを目標として掲げている。2009年の名目GDPは、2007年から1割程度も減少したが、何とか世界2位の座を守った。しかし、2010年には、おそらく中国に抜かれて3位に転落するのは、ほぼ避けられないと報じられている。これからの10年で1.4倍のペースで経済が成長したとしても、もはや「経済大国」とは言えなくなっているかもしれない。

「二番底」回避へ正念場=GDP、世界3位転落へ-10年の日本経済
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-091231X284.html

成長戦略は、「日本の強みを活かした成長」と「フロンティアの開拓による成長」に大別され、「日本の強みを活かした成長」は、環境・エネルギー分野の「グリーン・イノベーション」、健康(医療・介護)分野の「ライフ・イノベーション」の2本立てとなっている(これまでは、「グリーン・イノベーション」と対比させるように「シルバー・イノベーション」と報じられていたが、高齢者を「シルバー」と表現するのは日本だけで海外では通じないので、「ライフ~」に変更になったのだろう。なお、高齢者をシルバーと表現するようになったのは、電車の優先席に「銀色」が採用されたことがきっかけらしい)。

実質2%成長が目標 政府が成長戦略、環境・健康が軸
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2009123001270.html

新成長戦略 目標実現の具体策が見えない
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20091230-567-OYT1T00864.html

新成長戦略の公開後の社説などをみると、あまり評価は高くない。旧政権で議論されてきたことを改めて整理しただけとか、2%成長の具体策が見えないとかいった批判である。肉付け作業はこれからなので、6月初めの実行計画(工程表)待ちということだろう。その工程表のイメージを示すために、「グリーン・イノベーション」の工程表が公開されている。

工程表 グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略 [日本型低炭素社会の構築]
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/pdf/091230_3.pdf

同じように「ライフ・イノベーション」の工程表を1枚の紙の上に取りまとめるのは大変だろう。読売新聞が「民間からアイデアを広く募って、効果や実現性の高いものに絞り込むなど、抜本的に練り直した方がいい。新産業の育成や技術支援に必要な費用をどう工面するのかも示すべきだ」と主張しているように、経済産業省と厚生労働省の役人が取りまとめるようでは、成長戦略の魅力は半減。これまでのように任せてはいられない。
日本社会をよりよいものにするためにも、すべての国民が力を合わせ、知恵を出し合うべきである。このブログでも微力ながら「ライフ・イノベーション」の工程表に何を盛り込むべきかを考えていきたい。

年金照合の経費789億円を減額、照合件数を約2億件に引き下げ

2009年12月14日 09時58分19秒 | 情報化・IT化
概算要求が始まるまで、「宙に浮いた年金記録問題」の解決は、年金への不安を解消するための国家プロジェクトであり、これからの2年間を集中的に取り組む期間と位置づけていた。マニフェストに掲げたことなので、これまで「聖域」のように別枠で扱われてきたが、財源確保のためにはそうも言っていられなくなったようである。

旧政権下で厚生労働省は、年金記録の照合には、「7000人を投入しても10年はかかる」と説明してきた。それに対して、長妻大臣は、これからの2年間で集中的に取り組む。4年後には全件の照合を完了する方針を打ち出し、そのために必要な予算を優先的に注ぎ込む(当初は、プロジェクト全体で2000億円)と説明してきた。
財政状況がこれだけ苦しくなると、何かに取り組むならば、別の何かを諦めなければならない。このブログにそのように書いたのは数日前のことである。

長妻大臣は、次年度の概算要求に盛り込んだ経費789億円について「減る可能性がある」と述べ、これからの2年間の照合件数の目標を6億件から2億件程度に引き下げ、年金を受給中の世代に絞り込んで実施するなどの新たな方針を打ち出した。具体的には、取り組みの初年度は、70歳以上の国民年金受給者の約4000万件。その次の年度に1億数千万件に増やして対応。残る約6億件は、3年目以降に、必要性を判断して取り組むか否かを決めるとしている。
新聞各社が「後退」と表現しているが、政権与党として「現実的」になったともいえる。照合して確認しなければならない=ミスが多いと思われるケースと、それほどミスがないと思われるケースを区別せずに全件の照合に取り組むよりも、ミスが多いと思われるケースに絞り込んで取り組むほうが、投じた予算に対する成果を出しやすい。証拠(ミスがあった件数)を積み上げ、成果(回復した年金額と国民の安心)をアピールしていかないと、これだけの予算を投じた説明がつかない。

年金「4年で全件照合」断念、半分以下に後退
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091212-OYT1T01229.htm

厚労相、年金照合経費の減額検討 10年度予算
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009121301000178.html


そもそも、コンピュータの記録と紙台帳の記録を照合するのは、国民の不安や不信を払拭するためである。
1件ずつ照合作業を進めると同時に、記録管理の実態を国民に知らせ、照合により回復したことを知らせる。ミスが多いと思われるケースから取り組み、国民から「予算を使って、もっと急いでほしい」という声が上がるのを待って事業=プロジェクトを拡大する。ほどほどのところでバランスをとって落ち着かせる(きちんと管理されていないのではないかという不安や不信を払拭できれば、所期の目的は達成される)のが現実的な進め方だろう。
社会保険庁や市町村の職員がコンピュータに記録を打ち込んでいた頃は、すべてにおいて「申請主義」が基本だった。コンピュータに打ち込んだデータに抜けがあったり、ミスがあったりすれば、年金受給開始の手続き時に本人が気づくだろう、本人から確認と修正の依頼=申請があれば直せばよい、という考え方である。今日でも「申請主義」は基本だが、あまりに杜撰な管理がなされていることが明らかになってからは、広く情報提供して申請があるまで待つという姿勢では駄目。社会保険庁から「ミスと思われるので確認してほしい」と情報を届け、指示を待つぐらいにしないと、国民の理解が得られないだろう。

国民年金、28万人に支給額ミスか サンプル調査
http://www.asahi.com/national/update/1211/TKY200912110476.html

市町村が国民年金の事務を行っていた頃の記録 1.4億件のうち、2159件のサンプルを抜き出して紙の台帳(市町村)と電子データ(社会保険庁)の不一致率が0.3%。単純推計すると、42万件のデータが間違えており、そのうち年金受給額が回復するのは、28万件ということになる。
これまで、市町村が管理していた国民年金よりも厚生年金のほうがミスが少ないだろうと思われてきた。サンプル調査では、不一致率は、1.4%。年金受給額が回復するのは、256万人(0.4%)と国民年金を上回るとのこと。少々意外だが、何となくわからなくもない。

「年金通帳」の導入を見送り 断念もありうると示唆

2009年12月06日 10時29分51秒 | 情報化・IT化
2日に、事業仕分けで「廃止」や「見直し」とされた51の事業のうち、19の事業(540億円分)について対応が困難との方針を発表した。事業仕分けの対象となっていない64の事業を独自に仕分けして186億円を捻出したが、翌日の3日には、鳩山首相が「よほどきちんとした理屈をたてなければ、事業仕分けの努力が報われなくなる」と発言するなど、旗色が悪くなってきた。

鳩山首相、長妻厚労相の対応批判…事業仕分け
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091203-567-OYT1T00998.html

行政刷新会議の結論に沿った予算編成を―藤井財務相
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25464.html

事業仕分けの結果に不満を持つ役人は、何としてでも「復活」を狙ってくる。仕分け対象にならなかった他の事業に潜り込ませたり、いろいろと理由を付けて必要性を訴えたりする(例えば、年金通帳の予算を使えば、社会保障カードの検討を進められる、など)。大臣に「対応困難」と言わせれば覆るとの前例をつくってしまうと、次から次へと同じような動きが出てくるため、よぼどのことがない限り認められないだろうし、税収が大きく落ち込み、予算編成に向けた調整が難航するなか、「反旗」を翻した格好になった厚生労働省は、かえって状況を悪くしたように思える。

そのためか、4日の閣議後の記者会見で、民主党がマニフェストに掲げていた「年金通帳」の導入に向けての予算(約510億円)の計上を見送るとの発表があった。年金通帳とは、「年金の加入記録」や「これまでに支払った額と、受給見込の額」を記帳できるようにするもの。10月の初めには、金融機関やコンビニにも対応するATMを設置するといった構想を打ち出していただけに、19の事業の引き換えに差し出さざるを得なくなったと考えれば、2日の発表の代償は大きかったといえる(金融機関のATMなどで記帳できるようにするのは現実的でなかったし、「年金通帳」を国民が待ち望んでいたとは思えないので、結果的にはよかったのかもしれない。19の事業には、社会保障カードも含まれる。それだけの価値があったのだろうかと疑問が残る)。

年金通帳、来年度は見送り…厚労相が断念も示唆
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091204-567-OYT1T00800.html

社会保険庁が既に提供しているサービスを拡大して対応し、世論調査を行ったうえで、ある程度満足という結果が出たら、年金通帳の導入そのものを見直すこともありうるとの考え方も合わせて出された。社会保障カードに続いて年金通帳も来年度に計上する予算は0円になった(復活折衝はできないらしい)。いずれも、税と社会保障の「共通番号」が導入されることになれば、見直しは必至。共通番号の議論が決着するまでは、既存のサービスをうまく活用して(新たな仕組みをつくらずに)、取り組むようにと仕分けられることになるだろう。

厚生労働省は、この2つの事業の「予算計上見送り」が決まったとしても、国民から「落胆」や「反発」の声が上がらないことを謙虚に受け止めるべきである。社会保障カードは「国民1人1枚のICカード」、年金通帳は「全国に2200台の端末と通帳」がいかに便利なものかという説明から入る。これでは、国民の理解は得られない。国民が厚生労働省に求めていることは何か、どうすればその期待に応えられるのかを先に考え、実現する手段として、それらが必要という説明に切り替えなければ、同じことの繰り返しになるだろう。
このブログで、民主党のIT政策はあるのだろうかと書いたが、意外にも、自民党よりも良くわかっているのかもしれない。何らかの政策を動かそうとすると、必ずどこかでITを使うことになる。政策が先にあって、それを実現する手段としてITがあるはず。「IT政策」という捉えどころのないもの、「手段が目的化したもの」は要らないという、あるべき姿に戻った(浮ついた時代は終わった)と考えることもできる。

「電子政府・電子自治体」に代わる、民主党政権のIT政策は?

2009年12月01日 10時37分02秒 | 情報化・IT化
朝日新聞が「電子申請、19府県で休止・縮小 財政難が背景に」と報じている。

電子申請、19府県で休止・縮小 財政難が背景に
http://www.asahi.com/politics/update/1129/TKY200911290203.html?ref=goo

地方自治体が構築した電子申請システムの多くが、費用がかさむにも関わらず利用が増えないことから、休止・縮小の方向で検討に入っているとのこと。申請1件あたりに要する費用が1万円を超える県が「22」もあるなど、行政手続きの電子化が所期の目的を達成していないことが明らかになった。
この記事には書かれていないが、住民にとって、行政手続きが電子化されたことのメリットを必ずしも享受できないことも、この事態を招いた原因の一つである。インターネットを使ってできる手続きが全体の一部に留まり、書類を持って窓口まで行かなければならなかったり、わからないことを聞けなかったりということでは、使っても使わなくても一緒である。窓口まで行けば、その場で確認や修正できるし、年に何度もないことなのだから直接行ったほうが早いということになる。
1件あたりの費用を大幅に引き下げている愛知県や滋賀県などでは、電子認証を不要するなど手続きの簡素化に取り組んでいる。行政手続きを繰り返す仕事をしている人たちは別にして、それほど頻繁に手続きをしない一般の住民にとって、特別なハードウェア(公的個人認証用のICカードや、リーダ・ライタなど)や専用のソフトウェアを必要とせず、インターネットにつながったパソコンさえあれば、いつでも、どこでも、誰でもできるということでもない限り、電子申請システムを利用してみようとは思わないだろう。行政手続きの電子化を推進したいならば、手続きそのものを見直して「ブラウザを使って、手続きの最初ら最後まですべてできる」とすべきだろう(手続きの見直しまで踏み込まないと、利便性を向上させることはできない)。

電子政府・電子自治体の実態が明らかになるにつれて、これまで十分な検証がなされることなく積み上げられ、推進されてきた電子政府・電子自治体の構想(国のIT戦略)の見直しは不可避となる。現政権は、行政手続きの電子化=IT化にそれほど熱心でないように見えるので、「IT投資効果が小さい電子申請システムは無駄であり、改善できなければ、休止・縮小」と仕分けられることになるだろう。
しかし、投資対効果を評価して既存のITシステムの整理を続けていくと、2000年の「IT革命」前=電子政府・電子自治体に取り組む前の行政のあり方に戻ってしまうのではないかとの懸念も生まれる。朝日新聞が報じているように、過去の非効率なものを整理するとともに、行政手続きの電子化=IT化に代わる「新たな考え方」を導き出し、提示すべきだろう。


最近、注目を集めている技術が「クラウド」である。
経済産業省の「電子経済産業省アイデアボックス」は、セールスフォース・ドットコムが2週間で構築。同様に「エコポイント インターネット申請フォーム」は3週間で構築するなど、自治体・省庁ごとの要件を積み上げて一つひとつ手づくりをしてきたITシステムの「常識」が覆されようとしている。構築に要する期間も費用も、従来の方法と比べて、1桁から2桁ほど小さくなっている。
行政手続きの簡素化と標準化を進めて、「業務に合わせてITシステムを構築する」から「構築されたITシステムやサービスに業務を合わせる」ようにする、「独自仕様のITシステムの所有」から「ITサービスとして利用する」ようにすることが求められるだろう。
「インターネットの先のどこで情報が管理されているかわからない。これでは不安で使えない」ならば、クラウドの技術を活用した専用のデータセンタを構築してはどうだろうか。「そのまま使う(運用でカバーする)」「所有から利用へ」という「考え方=発想の転換」さえできれば、ITシステムの投資対効果は飛躍的に向上する。参加自治体が少しずつ資金と業務ノウハウを出し合えば、国に頼らなくてもできることである(下手に頼ると「実証事業」のオンパレードになり、参加自治体の「考え方=発想の転換」が遅れてしまう。切羽詰ったところまで追い込まれないと、なかなか「考え方=発想の転換」はできないし、「ウチはヨソとは違う」と言いたがる職員を説得できない。補助金を絞ったほうが早く進むかもしれない)。

この2つの「考え方=発想の転換」が必要とされているのは、遅れている「医療のIT化」も同様である。
これまでのIT政策の最初から最後まで「重点分野」に挙げ続けられていたことは、本当に不名誉なことだと思う。切羽詰った状況に陥っているのだから、早めに「高価な独自仕様のITシステムの所有」から「安価で標準的なITサービスの利用」へと舵を切るべきだろう。

既存のITシステムを社会保障番号に対応させる方法 その2

2009年11月25日 10時15分28秒 | 情報化・IT化
納税者番号について「長期的な課題だが、そろそろ導入の検討に入るべきだ」などと、今日も発言があった。
税と社会保障の共通番号制度の導入と並行して、国税庁と社会保険庁(1月から日本年金機構)を統合する「歳入庁」の創設も合わせて検討していく必要性も指摘されている。

納税番号と歳入庁セットで検討=菅副総理
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091124-00000078-jij-pol

これだけの大きな制度となると、どの省庁が中心となって検討することになるのだろうか。

このブログでは、昨日に続いて、社会保障番号について考えていきたい(納税者番号までは、なかなか追いかけられない)。
社会保障番号を現在の「保険者番号と被保険者番号の組」の代わりに使おうとすると、かなりやっかいな問題に直面する。社会保障番号は、国民一人ひとりに割り当てられる番号で、資格の異動があったとしても番号もカードも変わらない。例えば、今日付け(11月25日)で勤めていた会社を退職して無職になる、国民健康保険の加入手続きをした場合、どうなるだろうか。番号もカードも変わっていないから、医療機関は、資格が異動していることに気づかない。そのため、昨日までと同じように受診できる。医療機関は、そうと知らずに、被用者保険の被保険者のままだと思って支払基金にレセプトを提出することになる。これで間違いなく審査支払の事務ができるだろうか、という問題である。

社会保障番号だけでは、どの保険者の被保険者かわからないため、保険者は審査支払機関に「保険者番号と社会保障番号の組」と「資格を取得した日・喪失した日」をあらかじめ登録しておくことになる。この2つの情報があれば、社会保障番号が記載されたレセプトを医療保険者におくることができる。
わかりやすくするため、被用者保険の保険者をA、国民健康保険の保険者をBとすると、11月24日までの請求は保険者Aに、25日から30日までの請求は保険者Bにおくられるようにしなければならない。大きな問題は、レセプトのデータには、請求明細=医療行為の年月日データがない、ということである。医療機関からは1枚のレセプト(1つのファイル)で請求を出してくるので、資格異動の情報が登録されていたとしても、保険者AとBに請求分を切り分けておくることができないのである。
しかも、保険者Aは支払基金に資格喪失の情報を、保険者Bは国保連合会に資格取得の情報を登録することになるので、支払基金と国保連合会の間でそれらの情報を交換したり、相互に照会をかけられるようにしておかないと、切り分け先がわからなくなる(導入される頃には、審査支払機関は1つに統合されているかもしれない)。

さらにやっかいなのは、国民健康保険の加入手続きをせずに「無保険」となってしまう場合である。支払基金が国保連合会に問い合わせてはじめて無保険になっていることがわかる。医療機関は、社会保障番号が印字されたカードからは資格を喪失していることに気づかない。つまり、何かをするたびに支払基金と国保連合会を通して、資格を確認しなければならないということである(休日明けの午前中にアクセスが集中するので、それなりの仕組みが必要になるらしい)。

保険者間の異動は、1年間で全被保険者の3分の1程度にも及ぶらしい。これは例外的な場合に起こりうる問題ではない(ただし、導入される頃には、保険者が統合・再編されて数が少なくなり、比例して異動も少なくなっているかもしれない)。

解決する方法は、レセプトのデータフォーマットを変更して請求明細の年月日をわかるようにすること、レセプトオンラインネットワークを使って資格を確認できるようにすること、である。医療保険の被保険者番号、介護保険の被保険者番号、基礎年金番号などを社会保障番号に統合していくことになれば、様々なところに影響が出る。やっかいな問題も出てくるし、医療機関のレセコンや介護保険の事業者の請求システムなど、ITシステムの入れ替えも必要になる。運用も変えなければならない。それならば、それらの番号を残してこれまでどおりの運用を続け、社会保障番号と紐づけるようにする方法が現実的かもしれない(それならば、何のために社会保障番号を導入するのか?)。

大きなテーマになりそうなので、引き続き、検討していきたい。

既存のITシステムを社会保障番号に対応させる方法 その1

2009年11月24日 10時08分31秒 | 情報化・IT化
納税者番号と社会保障番号の「共通番号制度」の導入に向けて、本格的に動き出しそうである。
日本証券協会が個人投資家に対して行った意識調査では、節税への期待感などから「導入すべき(36.6%)」が「導入すべきでない(19.5%)」を上回る結果が出た。しかしながら、「分からない(42.5%)」と答えた人も多く、株式の売却損益や配当などの管理に加えて会社からの給与なども一つの番号で管理されることになると、答えも変わってくるかもしれない。

納税番号、導入支持が過去最高に=節税に期待感-日証協調査
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2009112200059

納税者番号と社会保障番号の制度・運用がどのようになるかはまだ明らかになっていないが、今回は、社会保障番号について考えてみたい。
このブログで書けそうなのは、社会保障番号から各保険者が管理に用いている被保険者番号のあたりが中心で、納税者番号から住民基本台帳番号へ、住民基本台帳番号から社会保障番号へ、社会保障番号から各保険者の番号へといった一連の流れの一部に過ぎない。逆にいえば、複数の分野の専門家を集めて検討を深めていかないと、制度・運用に必要な議論が満足にできないということである。

さて、社会保障番号を導入するためにはどうすればよいのだろうか。

医療保険制度や介護保険制度の保険者が導入しているITシステムの基本的な機能は次のようなものである。
基本となるのは、被保険者を管理するシステムである。被保険者の基本情報と資格情報からなり、資格の取得・喪失などを主に管理する。保険者としての業務を円滑にサポートするために、保険料の管理システムと給付実績の管理システムがある。この2つのシステムは、被保険者の管理システムと密接につながっており、キーとなる番号は、被保険者番号である。さらに、これらのシステムに必要なデータを外部のITシステムとやりとりするインタフェースがある。例えば、市町村国保のITシステムは、住民基本台帳システムなどの異動データを取り込んで被保険者資格の管理をしている。このように保険者が管理しているデータを最新の状態にし、事務処理のきっかけとするためのインタフェースシステムが必要となる。
医療保険制度においては、個人は、「保険者番号と被保険者番号の組」で特定することができる。新たに個人を特定する番号として「社会保障番号」が導入されると、その2つの番号をどのように紐づければよいかが問題になる。簡単に思いつく方法は次の2つ。保険者が一意の番号として振り出している被保険者番号の使用を止めて、社会保障番号に切り替える第1の方法。現在のITシステムをそのまま使い、管理するデータの一つとして社会保障番号を位置づける。社会保障番号は別の機関が振り出し、管理する第2の方法である。

社会保障番号の導入が決まったとしても、移行にはそれなりの時間を要する。現在の被保険者証に記載された「保険者番号と被保険者番号」を使って出されるレセプトと、新たな被保険者証に記載された「社会保障番号」を使って出されるレセプトが混在する可能性があるということである。そのような場合でも問題なく運用できるようにするためには、いずれのデータでも取り込める第2の方法が適切。しかし、パッチをあてて何とか動かしているようなものなので、社会保障番号に完全に切り替わってから更改するITシステムは、第1の方法が適切だろう(一番の問題は、社会保障番号への対応が求められる時期と、医療保険者の統合・再編の時期が重なりそうなことである。うまく計画しないと、多くのIT投資が無駄になる)。

社会保障カードを支える連携基盤システムを考えるにあたって、このような検討がなされたと思われる。実証実験にかける費用をこれらの検討の詳細化・具体化にまわして、早めに情報提供してほしい(このブログで書いたように、社会保障カード=ICカードはオーバースペック。カードの券面に2次元バーコードを印字しておけばよい)。

社会保障カードの実証事業 年金情報の閲覧のみ(実験の意味なし?)

2009年11月19日 10時13分54秒 | 情報化・IT化
事業仕分けに関連して「社会保障カード」を取り上げた。どちらの関心が高いのかわからないが、PVが急増する。国民に広く知られているものではないので、社会保障カードの関係者が多いと思うが。
社会保障カードが「予算計上見送り」と仕分けられ、実現の可能性が遠のいたことから、7地域に動揺が広がっている。そのためか、噂話程度で裏づけはないが、公開しておいたほうがよい情報を頂くことができた(星の数ほどあるブログの1つとはいえ、後々に検証できるように)。

実証事業は、以下の7地域で実施されている。

医療法人鉄蕉会(千葉県鴨川市)
株式会社日立製作所(三重県名張市)
株式会社サイバーリンクス(和歌山県海南市)
社団法人出雲医師会(島根県出雲市)
株式会社システム環境研究所(香川県高松市)
国立大学法人九州大学(福岡県前原市・大野城市)
株式会社NTTデータ(長崎県大村市)

厚生労働省
「社会保障カード(仮称)の制度設計に向けた検討のための実証事業」の受託者及び実証地域について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/09/h0909-1.html


なお、8月の受託者は、日本システムサイエンス株式会社である(このブログにコメントを頂いた。厚生労働省のホームページには、「各受託者」とあるので、別の会社や人が絡んでいるかもしれない。いずれにせよ、追及があったように、不適切で不透明な関係が疑われる契約である)。
また、実証事業の狙いは、

・中継データベースなどの情報連携の仕組みが機能すること
・社会保障カードが便利なものであることを利用者に実感してもらうこと
・社会保障カードを導入するにあたっての課題を抽出すること
・実証事業後も、社会保障カードの活用のモデルとして機能すること

である。
しかしながら、この実証事業で導入される社会保障カードでアクセスできるのは、構築する仕組みに接続された年金データベースのみ。閲覧できる情報項目は、ねんきん定期便と同一。医療保険や介護保険の被保険者証としては使えないというものらしい。その程度ならば、社会保険庁が提供している仕組みを使えばよい。利用者に申し込んでもらい、ユーザIDとパスワードを発行してもらえば、0円。ICカードと仕組みの構築に20億円もかけずに済む。

社会保険庁
年金個人情報提供サービス(手続きの流れ)
https://www3.idpass-net.sia.go.jp/neko/service/s00002.html

事業仕分けのやりとりでは、年金記録の確認には「年金通帳」を使う方針とはいえ、社会保障カードは、年金記録をオンラインで閲覧できるだけでなく、医療保険や介護保険の被保険者証としても使えるとのことであった。政策統括官がそのように答えながらも、導入に向けての実証事業では、被保険者証として使う際の課題を抽出することすら考えられていないというのは、あまりにもお粗末。健康情報にアクセスできるようにするコンソーシアムはあるらしいが、1990年代初めの保健医療ICカード事業と大差ない程度。五色町や加古川市などが有名だが、ほとんどの地域では普及することなく失敗に終わっている(当時の様子は、神戸新聞社のホームページに残っている)。
しかも、8月には、「年金加入記録や、医療機関を受診した際のレセプトや特定健診の情報も閲覧できる」と発表している(共同通信社が勝手に書いたこと?)。仕様書を出して公募しているのだから、年金情報の閲覧のみしかできないことはわかっていたはずである。

実証事業は、来年7月まで。来年度の秋には、日本システムサイエンス株式会社と7つのコンソーシアムから報告書が出され、公開されることになる。このまま続行して、報告書に「社会保障カードで年金記録を閲覧できるようになって便利になった(民主党の考える年金通帳なんて要らない)」とでも書いて、長妻大臣に報告するつもりなのだろうか。
決定からまだ2ヶ月少々。どの地域も、まだ利用者を募集するに至っていないと思われる。契約を済ませたから止められないとはいえ、前提条件が大きく変わっているのだから実証事業を続ける意味はないし、何の説明もなく社会保障カードを住民に配ると、(長妻大臣と行政刷新会議に逆らって、厚生労働省が社会保障カードの事業を推進し続けようとしている、のような)変な誤解を生じさせるおそれもある。ここは、7地域にお願いして使っていない分を返してもらい、「年金通帳」のあり方に関する検討にまわしたほうがよいのではないだろうか。

社会保障カードの「見送り」 厚生労働省の準備不足は明らか

2009年11月16日 10時01分23秒 | 情報化・IT化
先週の事業仕分け2日目、社会保障カードの来年度予算への計上見送りが決定した。並行して検討が進められていた国民電子私書箱は、補正予算の見直し時に執行停止・返納している。衆議院選挙で再び政権が交代し旧来の路線に戻すことになったとしても、今から別の構想がスタートしているだろうから、「国民が1人1枚のICカードを持ち、国が用意するプラットフォームを使い、公的な機関が管理する個人情報にアクセスする」という構想が再浮上する可能性は非常に小さくなったと思われる。

事業仕分けは、無駄が多いと思われる事業を公開の場でカットすることを目的としている。特に今年度は概算予算の圧縮が求められていることから、仕分け人からの厳しい質問が多くみられるが、社会保障カードの説明と質疑応答においては、厚生労働省側の準備不足は明らかであり、最初から諦めていたのか(もしくは、ITのみならず厚生労働省が所管する諸制度や大臣の方針の理解も不十分だった)と思われるほどである。

すべてを聞いていたわけではないが、退職(転職)に伴う医療保険者の異動や被保険者証の扱い、医療機関におけるレセプトの扱いに関する説明には、誤認があるように思えた。また、民主党のマニフェストに書かれていることの読み込みが浅いにも関わらず、「流行のキーワード」を並べた結果として、満足な説明ができず、かえって信頼を失うことになった。「ICカードは何にでも使える」という考え方が仇になったといえる(結局のところ、「何にでも使えるものは、何にでも使えないもの」ということだろう)。
例えば、税・社会保障の「共通番号制度」においては、その番号が公開され、様々な場面で使われることが前提である。例えば、サラリーマンは、就職するときに会社にその番号を知らせ、株を取引するには証券会社に知らせて、いわゆる「納税者番号」として使う。病院にかかれば、受付窓口に知らせて「被保険者番号」として使うことになる。ICカードの中に入れて、番号そのものを見えないようにしようという考え方とは正反対。カードの券面に印字し、特別なハードウェアがなくても使える・伝えられるようにしなければならない情報となる。それにも関わらず、「民主党が考える制度においても、社会保障カード(ICカード)を役立てることができる」と言ってしまったのだから、これらの検討が終わるまで予算計上を見送るようにと判断されても仕方ない。今さら反論しても復活折衝する余地はないだろう。

厚生労働省は、他省庁に先駆けてIT化を進めてきた。例えば、社会保険庁の年金システムを始めとする世界に類をみない巨大なITシステムを次々と企画し、運用してきた(運用はひどいものだったと明らかになったが)。医療分野においても継続的にIT投資がなされ、ようやくレセプトの電子化・オンライン化が実現しようとしている。旧労働省のITシステムを含め、相当なノウハウが蓄積されているはずである。しかしながら、ここ数年のIT化は完全に停滞しているといってよいほどであり、今回の社会保障カードの検討にあたっては、他省庁とはもちろんのこと、省内の調整すら満足にできない状況に陥っていることが明らかになった。

厚生労働省は、思い切ってIT政策を一新し、共通番号制度の実現に向けて検討を進めていってほしい。共通番号を実現するには、財務省や総務省との協議が必要であり、その前に、厚生労働省内の局をまたがって検討を進め、省としての考え方をまとめなければならない。これらは非常に難易度が高く、今回の事業仕分け対応のお粗末さをみると、現在の検討体制では無理がありそうである。
民間の知恵が必要ならば、堂々と使えばよい。しかしながら、これだけの大きな構想になると、「利権」も大きい。事業仕分けの場でも取り上げられ、3日前にコメントでいただいたような不透明・不適切とも疑われかねない業者選定・契約関係(事実を確認したわけでないが)は徹底的に排除すべきだろう。

貧困・困窮者を支援するワンストップサービスのあり方

2009年11月04日 10時36分02秒 | 情報化・IT化
ハローワークのワンストップ化により、失業等がきっかけとなり生活に困った人たちが1ヶ所の窓口で様々な情報が得られ、必要に応じて、その場で手続きができるようになる。このようなサービスのあり方は、当然、求められることだが、まだ足りない機能があるように思える。

昨日に続いて、情報化の切り口から考えてみたい。

地域でばらばらに提供されている様々なサービスを一ヶ所に集めておき、支援のニーズがあれば、対応するサービスにつなぐ。これがワンストップ化の基本となる「サービスへの振り分け機能」である。最初にどのような支援のニーズがあるのかを聞き取り、利用できるサービスの情報を提供する。どのサービスを利用するのか、どうなりたいのかなどを明確にしてから、それぞれの窓口につなぐような機能である。この機能があれば、必要な支援やサービスへと効率的につなぐことができる。さらに、最初に支援のニーズを聞き取り、関連する情報を提供することから、「知らない」ことによる抜け・漏れがなくなる。手始めに整備すべき機能といえる。

まだ足りない機能とは、窓口の一本化・一括化に留まってよいのだろうか、ということである。
それぞれの窓口につないだので、その先は、それぞれの機関に任せる。後は知らない(支援が得られなければ、また窓口にやってくるだろう)。これでは、十分に支援したとはいえない。つないだ先でどのような対応がなされたのかをしっかりみて、(うまく説明できなければ、本人の気持ちを代弁するなど)必要に応じて、その窓口で支援する。それぞれの機関が提供するサービスの利用が始まってからも、「横の連携」をはかって「総合的・継続的に支援する機能」である。

さらに、必要となるのは、既存のサービスで足りないニーズ、「制度の谷間」のニーズへの支援である。
例えば、失業等により、職探しをしている。また、生活費に困るようになった。この2つにサービスをつなぐことはできるが、失業につながったのはなぜかに向き合い、どうすれば貧困・困窮した生活から抜け出せばよいか、諦めそうになった心をいかに支えられるか、といった「福祉的に支援する機能」である。

これらの機能を提供するには、高度な専門性が必要になる。相談者の生活を広くみなければらないし、地域のさまざまな機関とのネットワーク化も進めなければならない。相談者一人ひとりを「チーム」として支える体制もつくらなければならない。既存のサービスでは足りない場合には、つくり出さなければならない。業務の量は多くなるし、高度な専門性を求められる。それなら基本の「サービスへの振り分け機能」に集中したほうがよい、とも考えられる。

全国のハローワークで簡単に実践できることではないけれども、「あるべき姿」として3都府県の1ヶ所でもよいから取り組み、全国展開するにあたってのモデル=ゴールの姿として提示すべきだろう。このようなモデル事業ならば、取り組む意義はある(実証事業・モデル事業は多くなされているが、ほとんどが役に立っていない)。
厚生省と労働省が一緒になってもうすぐ10年。「厚生労働省」なのだから、厚生行政と労働行政が一体となって取り組むべきだろう。

ハローワークのワンストップ化と「情報弱者」の支援

2009年11月03日 10時02分54秒 | 情報化・IT化
景気対策が息切れし、年末にかけて失業率が跳ね上がるのではないかと言われている。
昨年度の「年越し派遣村」の再現にならないように、「ハローワークでのワンストップサービス」が始まろうとしている。11月30日に東京都、愛知県、大阪府で試行した結果を踏まえて、全国に展開するか、継続的に実施するかを決めることになる。

<失業者対応>ハローワークで住宅、生活保護、融資も-来月30日
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/politics/20091031ddm012040181000c.html

ワンストップサービスは、職を探しにハローワークに集まった失業者に「ワンストップ」で必要な支援を提供するために、自治体(生活保護課など)や社会福祉協議会などの相談窓口が「出張所」を設けるというもの。失業して困っている人たちの多くは、日々の生活費に困っていたり、住まいがなく就職が難しくなっていたりなど、様々な支援を必要としている。その支援ニーズに応えるために、ハローワークに地域の相談機関の窓口を集め、ニーズを充たす適切な機関につなごうという考え方である。
窓口を集めることで「たらい回し」は少なくなるし、いろいろな場所に出向かなくても済むようになる。窓口があることで初めて知ることもあるだろう。

今回は、この考え方を情報化の切り口から考えてみたい。

ワンストップ化によって、失業者等は、自分が利用できる支援やサービスをすべて知ることができる。失業したら、まずハローワークの窓口に行くだろう。そう考えれば、その窓口で様々な情報が得られ、必要な手続きまでできる(次から次へと、メニューのように出てくる)のは、とても良いことである。

逆にいえば、窓口のワンストップ化が必要なのは、失業して生活に困ったら、どのような支援やサービスを利用できるのか、それらを利用することで自分の生活がどのように変えられるか、困りごとは解消するのかなどを知る術が用意されていないから、ということでもある。多くの人たちにとって「失業して生活に困る」という事態は日常でないし、自分がそうなると思っていないので、あらかじめ調べておこうとは思わない。例えば、そもそも「社会福祉協議会」があることを知らない、自分の住んでいるまちのどこにあるか知らない、生活費に困った人たちへの貸付が行われていることを知らない、どのような条件があり、自分が使える状況にあるかわからない... これらに一つでも「知らない」や「わからない」があると、支援やサービスに辿りつけない。自分が何に困っていて、それらをどう表現すればよいか、どこに行けば相談に乗ってもらえるのかわからない。そもそも、自分の困りごとを公の機関・窓口で相談してよいのか、解決につながるかもわからないという事態に陥ってしまう。「冷淡にあしらわれたら」と思うと、口に出す勇気が出ない。

インターネットには情報が溢れているようにみえて、いざ「非日常」に放り込まれると、必要な情報を集めて適切に行動することすらできなくなる。一般的な情報は多くあるが、自分の困りごとを解消するためにどうすればよいのかという「肝心な情報」は見つけられない。誰もが、いかに簡単に「情報弱者」となるか、ということである(特別な人たちのことではない)。生活費が尽きれば、インターネットにもアクセスできなくなる。テレビもみられない。誰とも連絡をとれなくなる。そうすると、ますます情報から遠ざかることになる。

年末年始を乗り切るためにワンストップの窓口を設けることも必要だが、失業者等の視点から必要な情報を集め、自らの困りごとに対応する支援やサービスを探して行動できるような「情報提供システム~いざというときに必要な情報が得られる場所」の整備と周知が必要だろう。いくら支援やサービスを用意しても、本当に必要とする人たちが「知らない」とすれば、それらを届けることはできない。「情報の支援」の充実こそ、第一に必要とされるのではないだろうか。