制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

「子ども・子育てビジョン」閣議決定、数値目標が明らかに

2010年01月30日 10時04分57秒 | 子ども手当・子育て
29日の閣議で、今後5年間で取り組む少子化対策を取りまとめた「子ども・子育てビジョン」が決定された。目新しい取り組みはないが、その代わりに数値で約40の目標が定められており、実現する「方法」の議論から始めることができる。子ども・子育ての「あり方」や目新しい取り組みの是非について議論するよりも、現実的な目標を定めて着実に進めていく必要があるからだろう。

「子ども・子育てビジョン」について
~子どもの笑顔があふれる社会のために~
http://www8.cao.go.jp/shoushi/vision/

ビジョンに盛り込まれた主な数値は、今後5年間で認可保育所などの定員を215万人から26万人増(年間5万人程度×5年間)の241万人に、3歳未満児の保育所利用率を24%(75万人)から35%(102万人)に、学童保育の利用者を81万人から111万人に、保育所などでの一時預かりの利用を348万人から3952万人(年間延べ人数)に、「認定子ども園」を358ヶ所から2000ヶ所以上に、地域子育て支援拠点を7100ヶ所から中学校区に1つ=1万ヶ所にすることなど。
この施策により必要となる予算は、年間7000億円ほど(2014年度)。来年度は、子ども手当の国庫負担が重くなるだけに、それだけの予算を確保できるかわからないことに加え、その予算に見合った社会資源整備ができるのかもわからない。実効性に乏しいとの批判を跳ね除けるためにも、実現する「方法」の具体化を進めてほしい。

認可保育所の定員25万人増…子育てビジョン
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100129-567-OYT1T00530.html

保育所定員5年で26万人増 子育てビジョン閣議決定
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010012901000220.html

保育所定員5年で27万人増、政府の子育て支援策
http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY201001290185.html?ref=goo

なお、これらの数値目標は、Output指標。子ども・子育てビジョンの成否を問う数値目標は、Outcome指標であらねばならない。子ども手当や高校授業料の実質無料化に加えて、これだけの子育て環境整備を行うのだから、「出生率がどれほど上向くのか」「子どもの数がどれほど増えたのか」などの政策のOutcome=効果を評価しなければならない。

また、ビジョンには「子ども家庭省(仮称)」の検討が明記された。このブログでも取り上げているが、厚生労働省と文部科学省の縦割り行政を解消するための法整備などを進めていく模様。省庁再編=子ども家庭省の実現がどれほど必要なのかわからないが、それよりも先に取り組むべきことは、Input=財源の確保とOutput=社会資源の整備の具体化、Outcome=出生率の低下や子どもの数の減少に歯止めをかけ、それらの数値を上向かせることだろう。

「子ども家庭省」の検討明記 政府が子育てビジョン
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100130ATFS2903S29012010.html


なお、具体策を協議する「子ども・子育て新システム検討会議」の設置が決まっている。幼保一元化を含む子育て支援のための「包括的・一元的なシステム」の構築について検討し、6月をめどに基本方針を取りまとめるとのこと。

政府「幼保一元化」に着手、参院選前に基本方針
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100129-567-OYT1T01216.html

「幼保一元化」の実現に向けて、省庁再編に着手か

2010年01月28日 09時56分03秒 | 子ども手当・子育て
鳩山首相が参院予算委員会で、「省庁の体制が古くなっているので、できれば参院選の後、省庁全体の在り方を見直していきたい。しっかり研究する必要がある」と述べた。文部科学省が所管する「幼稚園」と厚生労働省が所管する「保育所」を統合する「幼保一元化」についても「2011年度ということで考えている」と述べ、参議院後に検討を開始し、2011年度の通常国会に関連法案を提出する考えを示した。
その後の記者会見では、「幼保一体化の話は子どもの立場というものを重視していく必要がある」などと、国民の視点の視点を採り入れた「新しいあり方」の検討を始めるべきだとの考えを改めて述べ、厚生労働省を分割して文部科学省と一緒にするといった「旧来型の省庁再編」を想定しての発言でないことがわかった。

参院選後に中央省庁再編、首相が表明
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100127-567-OYT1T00584.html

首相、参院選後に省庁再編の考え 幼保一元化法案提出も
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2010012701730.html

民主党は、マニフェストで「子ども家庭省」の設置を検討すると掲げている。まずは「子ども家庭局」を立ち上げて、厚生労働省と文部科学省などから子どもに関する部局を集めて「省」に昇格させる考えだった。切り離される側の省庁側も分割・再編が進むことになり、その結果として、省庁再編が機動的に行われることになる。
このような再編構想が「旧来型」だとすれば、参議院選挙後に始められる検討は、そもそも「幼稚園」と「保育所」の機能の違いは何か、目的が違うものを一緒にできるのか、一元化にしたときに子どもや親、地域社会にどのようなメリットが生まれるのかということだろう。その検討を進めて、そもそも「幼保一元化」がなぜ必要なのか、どのように進めるべきなのかを検討し、厚生労働省と文部科学省の一部を再編すべきならばする、ということだろう。これが、国民視点・子ども視点の「現代型」の構想だろう。

国民視点・子ども視点での議論は簡単ではない。例えば、「延長保育」は、子育て中の親にとってメリットがあるといえるが、夜遅くまで、なかなか来ない迎えを待つことになる子どもにとっても同じメリットがあるかといえば、そうともいえないだろう。親が大変だから延長保育を広めよう、「待機児童」が減らないから幼保一元化しようという考え方は、どちらかといえば、行政視点・親視点。説明にあたって、国民視点・子ども視点が足りないともいえる。様々な立場からメリット・デメリットを出しあい、総合的に捉えて評価していく必要があるだろう。また、省庁再編に踏み込まなくてもできることは多くある。「目的」と「手段」を考えれば、省庁再編が先にあってはならないだろう。


なお、「幼保一元化」の検討は、仙石行政刷新担当大臣を中心に既に進められている。子育て支援の目玉政策として、幼稚園と保育所を一元化した「認定こども園」の認定基準の緩和や手続きの簡素化などを行政刷新会議にて検討。必要ならば、文部科学省と厚生労働省の縦割りや二重行政の解消にも踏み込むことになっている。

鳩山内閣「幼保一元化」を加速へ 子育て支援の目玉に
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009101101000415.html

今回の鳩山首相の発言を受けて、「幼保一元化」の検討が一段と加速するものと思われる。まずは、行政刷新会議における「認定子ども園」の検討を注視していきたい。

子ども手当の市町村向け説明会、準備期間が足りないなどの意見が相次ぐ

2010年01月24日 10時09分13秒 | 子ども手当・子育て
厚生労働省が実施した課長会議を受けて、全国の都道府県で、市町村の担当職員向けの説明会が実施されている。このブログで紹介した配布資料よりも詳しい情報がないのだから当然かもしれないが、市町村側からは厳しい意見や注文が相次ぎ、都道府県側も質問に答えられないなど、不安を残すスタートとなった。
厚生労働省が、全国の説明会で出された意見や注文(要望)、質問を集約していると思うので、「子ども手当に係るQ&A(VOL.2)」の公開を待ちたい。

子ども手当説明会 「財政負担増」「時間ない」 市町村、県に意見や注文
http://news.goo.ne.jp/article/nishinippon/region/20100122_local_FT_003-nnp.html

福岡県での説明会では、システム経費の補助に質問が集中したとのこと。「システムを早期に業者に発注したいが、補正予算成立前でも契約してよいのか」の質問は当然だが、そもそも、これだけの情報しかないのに業者は見積もりを出せるのだろうか。

子ども手当 岐阜で説明会(岐阜県)
http://www.kyt-tv.com/nnn/news8625481.html

「子ども手当に係るQ&A(VOL.1)」をみると、

・子ども手当として申請を受けて、児童手当+子ども手当として、一括して支給
・子ども手当てのうち、児童手当に相当する分の付記は不要
 6月の定期支払においては、児童手当(2010年2月・3月分)も合わせて支給する
 この場合は、児童手当分を明示する必要がある
・申請にあたっての書類には、所得額は不要。被用者・非被用者の年金種別は必要
・子ども手当の支給者は、主たる生計維持者で、児童手当の受給者と同じ
・監護の要件や被用者・非被用者の区分などを確認するため、子ども手当においても現況届は必要
・子ども手当の現況届は6月。ただし、4月5月に新たに申請した者は不要

となっている。
市町村の負担増にならないように交付する「子ども手当及び児童手当地方特例交付金」のことを考えなければ、事務処理やITシステムを簡素化できそうである。
現在の資料から読み取れるITシステムの主な機能は、

・適用システム
 子ども手当の支給者を管理する台帳システム
 窓口での各種申請を受け付ける
 申請書や現況届から、支給の対象者(主たる生計維持者と監護している子ども)と金融機関の情報などを登録する
 申請書や現況届などから、子ども手当の支給の開始および停止、市町村への寄付などを決定する
 児童手当システムの受給者台帳から、必要な情報を取り込む(申請免除者の移行作業)
 住民基本台帳や外国人登録などのシステムから、異動情報(転入・転出・出生・死亡など)など、事務に必要な情報を取り込む(日次)
 子ども手当を受けられるにも関わらず、申請がなされていない世帯の情報を出力する(案内などの送付)

・給付システム
 適用システムに基づき、子ども手当を支給するシステム
 子ども手当の台帳データを使い、金融機関向けの口座振替データを作成する
 金融機関からの戻ってきたデータを使い、消込を行う
 支払状況報告などに必要なデータを作成する

・統計システム
 適用システムと給付システムのデータを使い、都道府県および国への報告資料を作成するシステム
 子ども手当て交付金の概算交付申請や清算交付申請などに必要なデータを作成する
 その他の交付金の申請に必要なデータ(児童手当からの増加分など)を作成する

である(要確認)。
一見すると単純な機能にみえるが、事務には例外的な事項が多くあり、それらをITシステムの機能として取り込んでいくと、かなり複雑になる。例えば、住民基本台帳上の世帯と実際が違ったり、主たる生計維持者が世帯主とは違ったりというのはよくあることだし、住民票を移していない(移せない理由がある)人も多くいる。決定の通知を出すにも、標準的な漢字コード表には含まれない字(外字)を別の字で置き換えられないので、市町村ごとに作成している字形に対応させなければならない。
住民基本台帳などとのインタフェースも開発しなければならないなど、地方自治体向けのITシステム開発は簡単な仕事ではない。

全国児童福祉主管課長会議資料のURL 子ども手当の事務処理は煩雑か

2010年01月22日 09時13分32秒 | 子ども手当・子育て
WAM-NETで、1月19日に開催された全国児童福祉主管課長会議の資料が公開されている。

全国児童福祉主管課長会議資料(平成22年1月19日開催)
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/vAdmPBigcategory60/FEFB6F19CA78CE38492576B000058C07?OpenDocument

子ども手当の事務処理について、どの程度の情報が公開されているかみていきたい。

子ども手当ての円滑な実施(システム経費)
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/0/fefb6f19ca78ce38492576b000058c07/$FILE/20100119_1shiryou1-7~10.pdf

まずは、第二次補正予算に計上された、システム経費123億円について。人口規模に応じた補助金となるとのこと。基準額が300万円で、それからは、1人あたり65円から30円の単価をかけた上乗せ額を積み上げ。上限は、7000万円となる。人口15万人の市においては、1175万円とのこと。この金額ではITシステムを導入できないと思われるので、市町村においても予算の確保が必要になるかもしれない(ITベンダーが補助金を計算して、その額に合わせて見積もってくるかもしれない)。

次に、子ども手当の事務処理について。「子ども手当に係るスケジュール例」をみると、児童手当に子ども手当を上乗せしたことから煩雑な仕組みとなっているようである。別々に支給を決定するのではなく、子ども手当として一括して支給を決定するなど、事務の簡素化・効率化を進めないと大変になるかもしれない。
例えば、小学校修了前の子どもに関しては、児童手当の支給対象になるかを確認し、1万3千円との差額を子ども手当とするといった事務処理だとすると、市町村の窓口では、これまでと同じように現況届を出すように求め、児童手当の支給額を求め、差額を求めて子ども手当の支給額とし... などと煩雑さが増すことになる。

スケジュール例の6月あたりに「現況届」と書かれている。また、子ども手当に係るQ&A(VOL.1)の問5~問8に書かれていることからは、子ども手当として1万3千円を支給するが、その内訳に児童手当が入っているか否かを市町村は把握しておかなければならないように読める。子どもの数の掛け算で世帯あたりの支給額を計算すればよいとの単純な考え方ではなさそうである。

事務処理を支援するITシステムも複雑さを増す。最初は、住民基本台帳システムと外国人登録システムから住民のデータを持ってきて、子ども手当の支給申請データをつくればよいと考えていた。児童手当の支給者は基本的に申請が免除されることが明らかになったので、児童手当システムから支給者のデータを移行して申請がなされたものと扱えばよいと考えていた。そのため、このブログでは、それほど難しくないだろうと書いた。
しかし、児童手当の事務(児童手当支給者の管理と児童手当支給額の計算、現況届の管理など)がそのまま残り、1万3千円との差額として支給される子ども手当の事務(子ども手当支給者の管理と子ども手当支給額の計算など)が上乗せされるとなれば、ITシステムのつくり込みは大変になる。

既存の児童手当システムがそのまま使えればよいが、そのシステムを開発したITベンダーが1年間限りの子ども手当システム(既存システムへの機能追加分として)の開発に着手しないかもしれない。そうなった場合は、子ども手当システムを開発しているITベンダーに切り替えざるをえなくなる。児童手当システムを動かし続け、新たに導入する子ども手当システムに支給決定データを取り込むようにするのか、新たに導入する子ども手当システムに児童手当システムの機能を丸ごと取り込むようにするのか。
1年後には、子ども手当システムを入れ替えなければならないことを考えれば、それほど費用をかけたくないし、この1年をどのように乗り切るかを検討する時間はあまりない。4月には申請受付が始まるので、すぐに決めて着手しなければならない。

少なくとも、今回の課長会議で明らかになった情報だけでは、子ども手当システムの発注はかけられないだろう。小学校修了前の子どもがいる世帯から、新たに子ども手当の申請があった場合に、児童手当の支給分があるか否かを確認するための事務が必要か。児童手当を支給している世帯においては、子ども手当の支給開始後も現況届を出す必要があり、2010年度の子ども手当の支給にあたって児童手当の支給分があるか否かを確認するための事務が必要か(スケジュール例をみると、どうも必要になりそうである)。この2点だけでも明確になると、検討を進められる。課長会議の場で、どのような説明がなされたのかを知りたい。

全国児童福祉主管課長会議が開催、子ども手当の事務概要が明らかに

2010年01月19日 09時36分02秒 | 子ども手当・子育て
厚生労働省は、地方自治体の児童福祉担当者を集めた会議(全国児童福祉主管課長会議)にて、子ども手当の支給時期などの具体的な事務手続きを説明した。

9月末までに市町村へ申請 子ども手当で厚労省
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011801000875.html

基本的には、先週末に報じられたとおり(このブログでも取り上げている)。新たに明らかになったことは、児童手当を受給中の世帯は、申請が免除されるということ。児童手当は、小学生修了までの児童がいる世帯が対象(所得制限あり)。暫定的に児童手当を存続させることになったことから、前年度の受給決定を継続できるとしたのだろう。本来ならば、現況確認が必要だが、いずれにせよ子ども手当の額は同じなのだから、少しでも事務を軽減しようという考えである。

なお、現在、児童手当を受給しているから申請しなくても大丈夫というわけではないので、注意が必要である。例えば、小学生と中学生の2人の子どもがいる世帯においては、小学生の子ども分の申請は免除されるけれども、中学生の子ども分は申請しなければならない。別の市町村に引っ越した場合も申請が必要になる。児童手当の事務は、市町村ごとになされているため、引っ越した先で改めて申請しないと情報が引き継がれない。このような申請が必要になるケースを整理して、「うっかり忘れがないように」と注意を促す必要があるだろう。

子ども手当は、所得制限がなく、支給年齢も中学生修了までに引き上げた。そのため、支給者数が、児童手当の1239万人から1735万人へと、500万人ほど増える。4月1日には、子ども手当システムに、児童手当システムの受給者データを移行して申請免除者を決定(支給対象者の約2/3)。その次に、住民基本台帳などから住民データを取り込んで、子ども手当の申請が必要な者を抽出(約1/3)。それぞれに対して、子ども手当の支給開始と手続きについての案内を郵送するということになるだろう。
新たに導入する子ども手当用のITシステムには、既存の児童手当システムとのインタフェース、住民基本台帳などとのインタフェースを実装する必要がある。児童手当システムからのデータ移行は1度きりだが、住民基本台帳などからの異動データ取り込みは、これからも使い続ける必要がある(支給資格を連動させるため)。
インタフェースの実装は、それほど難しくはない。問題は、残された時間が2ヶ月少々ということと、作業できるSEを確保できるかということ。既存の児童手当システムに、移行用データを出力する機能があるか、そのデータは、新たに導入を決定する子ども手当システムに取り込めるか、正しく取り込めたことを確認する試験期間を確保できるか(市町村向けシステムには「外字」を正しく処理することが求められる。文字化けしていないことを確かめる必要がある)などを一つひとつチェックしていかなければならない。
しかも、現時点で明らかになっている情報では、子ども手当システムの発注もかけられない。IT業界も、子ども手当システムを設計できない。4月1日に、子ども手当システムの導入が間に合わない(業者決定できていない)市町村が続出するおそれがある。
それでも、4月から申請を受け付けなければならないし、6月には支給を開始しなければならない。遅くともそれまでには、支給対象者のデータファイル(金融機関向け)が必要になるということなので、担当者は大変である。

子ども手当法案と厚生労働省から出された資料をみてみないと、これより先は何ともいえない。詳しい情報が入れば、このブログで紹介したい。

子ども手当の事務処理の概要が明らかに

2010年01月15日 09時34分42秒 | 子ども手当・子育て
厚生労働省は、18日に召集される通常国会に提出される「子ども手当」の法案(児童手当法改正法案)の概要をまとめ、各都道府県などに示した模様。毎日新聞がその内容を報じている。

<子ども手当>年3回分割支給、市町村に申請必要 法案概要
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100114-00000110-mai-pol

子ども手当の財源確保には、紆余曲折があった。そのため、今国会に提出される子ども手当法案は、1年限りのものとなった。支給額は、半額の1万3千円で、6月以降に支給される(児童手当を受給している世帯は、2月・3月の2ヶ月分の児童手当を合わせて支給)。6月の支給額は、4月・5月の2ヶ月分の2万6千円。その次の支給額は10月で、6月から9月までの4ヶ月分の5万2千円、来年の2月にも同額の5万2千円が支給される(いずれも子ども1人あたり)。

子ども手当を受け取るには、市町村の窓口での申請手続きが必要となる。所得制限がないため、住民であることを確認できれば、支給が開始される。窓口で現金を支給するとなるとかえって大変になるので、口座振込を基本とする市町村が多くなると思われる。子育て応援特別手当を支給するにあたっての検討事項に、DV被害者への対応などがあったが、子ども手当を支給するにあたっても同様の対応策が求められることになるだろう。

子育て応援特別手当の申請・支給事務フローのイメージなどは、厚生労働省のホームページにそのまま残されている。参考にしていただきたい。子育て応援特別手当は、政権交代に伴って執行が停止された手当。定額給付金と同様、景気対策のための1度きりの支給だが、所得制限がなく、世帯主に支給するという点で子ども手当に近い。子ども手当の事務処理や必要となるITシステムの基本的な考え方は、子育て応援特別手当と児童手当を足して2で割ったようなものと考えてよいのだろうか。

子育て応援特別手当(21年度版)の申請・支給事務フローイメージ
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/juyou/kosodate/pdf/info_090618c.pdf

平成21年度支給実施要綱(例)
http://www.mhlw.go.jp/za/0828/d23/d23-01.pdf

なお、6月の支給に間に合わせようと申請者が列をなすと市町村の事務処理能力を超えてしまうおそれがある。申請の時期を分散させるために、できるだけ早くから申請を受け付けるようにする(子ども手当に移行する)とか、9月末までに申請がなされたら4月に遡って支給されるようにするといった方法が考えられているようである。


子ども手当の支給に必要な費用は、2兆2554億円。そのうち、国の負担は1兆4556億円。来年度は、この倍の4兆5千億円となる。児童手当を残して、その上に子ども手当をかぶせるという「苦肉の策」は、2010年度の1年限り。その翌年度には、児童手当法分がなくなるので、その分の財源を確保しなければならないし、さらに2兆2千億円余りを確保しなければならない。民主党は、予算の組み替えを進めるとしているが、4兆5千億円は簡単に捻出できる額ではない。2000年度からスタートして少しずつ伸びてきた介護保険制度の給付額が5兆8369億円(利用者の自己負担額を除く。なお、国の負担は1/4)であることを考えると、その額の大きさをわかっていただけると思う。

平成19年度 介護保険事業状況報告(年報)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/06/tp0624-1.html


6月・10月・2月に分割して支給するのは、現行の児童手当と同じ。4月からの2ヶ月のずれは、前年度の所得の確定が6月であるため。子ども手当には所得制限を設けていないが、児童手当を残しているために、支給開始が6月になったのだと思われる(参議院選挙を意識してのこともあろうけれども)。

子ども手当の財源問題、生活保護の母子加算などの事項要求問題など、まとめて調整中

2009年12月24日 09時54分43秒 | 子ども手当・子育て
税制改正大綱の閣議決定を受け、次年度予算の編成に必要な積み残しの問題についての大臣間の調整が続いている。
これまでは、各大臣の足並みが揃っているとはいえないような状況で、「政治主導」でものごとが決められているようには思えなかった。1日でこれだけ決められるのだから、ある程度の論点出しが終わった時点で「関係閣僚が集まって、どうするか決める場」を設ければよかったのではないかとも思える。逆にいえば、何をするにも財源の裏づけが必要となり、そこが決まらないと何も決められないということなのだろう。

子ども手当の財源確保の問題についても、暫定的に「児童手当を存続させる」ことで、総務省や地方自治体の反発を抑え込もうとしている。現行法が形式的であれ残り、その部分についての負担と位置づけられたのだから「財政負担を拒否」や「支給事務を拒否」という声を上げづらくなる。また、同時に、地方交付税を1.1兆円増の16兆9千億円として地方自治体にも「配慮」して、マニフェストの目玉政策の実現に向けての環境を整えようとしている。

地方交付税は16・9兆円 09年度より1・1兆円増
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2009122301000377.html

長妻大臣と原口大臣の合意内容は、児童手当を1年間に限り存続させ、この額に子ども手当を上乗せして支給額を1万3千円にする。児童手当に相当する分については、地方自治体と事業主の負担割合をそのままとするというもの。1年間の暫定措置としての合意であり、2011年度から必要となる財源の確保については、今後の検討(先送り)となった。

地方と事業主も負担=子ども手当、10年度は1万3000円-政府
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-091223X124.html

児童手当の上にかぶせることになった子ども手当法案を厚生労働省にて検討(これまで用意していた法案を修正)し、次期通常国会に提出する。法案成立を経て、2010年4月から6月にかけて支給が始まる。参議院選挙に何とか間に合わせることができたと、ほっとしているだろう。
また、事項要求に留めていたことについても、藤井大臣・長妻大臣の話し合いで次々と決まった。今日は、記事へのリンクを並べるに留めたい。なお、高校の授業料無償化の実現方法も子ども手当と同様。都道府県が実施中の低所得層の減免をそのまま残し、不足分を国が予算化するというもの。都道府県は国に全額負担するよう求めるだろうから、2011年度からどうするかは、今後の検討となるだろう。

父子家庭にも児童扶養手当 予算折衝で合意、来年度から
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2009122301000291.html

診療報酬、10年ぶりプラス改定 薬価は引き下げへ
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2009122302260.html

低所得障害者の利用は無料=父子家庭にも児童扶養手当
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091223-00000092-jij-pol

<高校授業料>私立は年収別で助成 公立徴収せず 文科相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091223-00000055-mai-pol

協会けんぽ救済に組合から900億円=保険料率は9.3%に圧縮-財務、厚労両省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091223-00000088-jij-pol

児童扶養手当、父子家庭に拡大 生活保護の母子加算継続
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091223AT3S2300R23122009.html

子ども手当、「所得制限なし」で決着 後は財源の確保

2009年12月22日 10時08分33秒 | 子ども手当・子育て
21日、鳩山首相が、子どもは「社会全体で育てはぐくんでいくもの」と考え、「所得制限は、基本的に設けない」という方針を出し、ここ数日の議論に決着をつけた。右往左往した感はあるが、これからは財源確保のための調整。国債発行額に44億円のキャップがかかっているのだから、どこかから捻出しなければならない。長妻大臣は、所得制限を設けるべきでないと主張し続けたのだから、厚生労働省から何とか財源を捻出しないと他省庁からの協力を得られないだろう。こちらも「政治主導」で決着をつけてほしい。

子ども手当の所得制限なし、タバコは増税 首相が表明
http://www.asahi.com/politics/update/1221/TKY200912210330.html?ref=goo

子ども手当の財源、地方・企業も負担で調整 鳩山内閣
http://www.asahi.com/politics/update/1222/TKY200912210453.html?ref=goo

たばこ、1本5円増税の方針 1箱100円値上げ見通し
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2009122104400.html

このブログでも書いたが、民主党が所得制限を設けるように求めたことから、800万円から2000万円まで様々な基準額と意見が出された。しかし、結局のところ、所得を正しく把握することが難しく、把握しようとすると事務経費がかさむことから見送られることになったようである。管副総理が所得の把握のためには納税者番号の導入が不可欠と述べていたことが思い出される。藤井大臣が納税者番号の導入時期について「4年間の任期の後半の仕事」と述べていたが、検討が加速する可能性も出てきた。
また、読売新聞社の調査結果では、子育て世代の30歳代で所得制限を設けるべきが75%、全体でも72%と多数を占めている(反対は22%)。高所得層にも配るのか、バラマキではないかとの批判に対しては、自治体に寄付する制度を設けるとしているが、定額給付金のように申請しないようにするだけでも十分かと思う(定額給付金は、先日、予算の1%にあたる190億円が国庫に返納された)。国庫に返納されると、どう使われるかわからない。それならば、自治体に寄付するという積極的な行動を選択することで、自分の住む地域の子育て環境の充実などに使うことができる。自治体は、子ども手当を寄付することの意義を積極的にアピールすべきだろう。

子ども手当に所得制限「賛成」72%…読売調査
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091219-567-OYT1T01242.html


電通が子ども手当が支給されることになる世帯の500人にインターネットを使って調査したところ、子ども手当の使途は「将来のための貯金(6636円)」「子どもの塾や通信教育など(1485円)」「通園料・授業料の補填(1429円)」となった。1万3千円の半分ほどが貯蓄にまわることになり、経済効果としてはそれほど大きくならないことが明らかになった。

経済波及効果は2.4兆円=子ども手当、半分が貯蓄に-電通調査
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-091221X766.html

子ども手当は、景気対策・経済対策を目的とするものではない。貯蓄にまわった分が、将来、子どものために使われるならば、それでもよいかと思う。生活費にまわってしまうかもしれないが、各家庭のお金の使い方にまで国が口を出すこともないだろう(子ども手当法の目的には、しっかり書き込まれると思うが)。

子ども手当の所得制限 年収2000万円 ほとんど意味なし?

2009年12月19日 10時10分04秒 | 子ども手当・子育て
政府・与党で、子ども手当の所得制限額の調整が続いている。これまでの所得制限を設けない方針からの転換は「規定路線」かのようである。

「年収2000万円」浮上=子ども手当の所得制限
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091218X284.html

もっとも有力な案が「2000万円」である。年収2000万円となると、子ども全体の0.1%程度。これでは、所得制限をかけていないようなものであり、削減できる額も20~30億円程度。所得把握の経費が必要となるため、トータルの予算額は、所得制限なしの場合を上回ることになると思われる。これでは、「鳩山由紀夫首相のお孫さんに差し上げるのが適当か」が発端であるかのようである。
昨日のブログに書いたが、児童手当の事務と同じことを子どもがいる世帯すべてに対して実施すると、大変なことになる。原口総務大臣は、さっそくと「イニシャルコストやシステムのコストまで入れると大きい。1.5倍かかるという話もある」と述べ、厚生労働省が補正予算に計上しているとされる(所得制限なしで見積もった)約120億円では足りない、もっと積み増さないと足りないとの考えを示している。どう考えても、捻出した額を上回ってしまう。
年収2000万円というと、東京都港区のような高所得層が多く住む一部の地域を除いて、いちいち確認しなくてもよい水準である。住民税のITシステムから取り込んだ年収の確認に留めるなど事務の簡素化をはかり、「性善説」的に支給するほうがトータルの予算額を抑えられるかもしれない。性善説で組み立てておいて、もし不正が見つかれば、支給額の何倍ものペナルティを課せばよい。年収2000万円を上回る世帯なのだから、それぐらいのことをしても大丈夫だろう。

子ども手当所得制限「事務経費に配慮を」 原口総務相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091218-00000551-san-pol

その一方で、児童手当並みの「800~860万円」との案も出されている。民主党の重点要望は、次年度予算を圧縮するために出された「助け舟」であり、それに乗るべきとの考えである。この額でも、小学校卒業までの全児童の約9割に支給できるし、削減できる額も2000億円を超える。しかし、支給対象にならない約1割は、扶養控除の廃止に伴って負担増となる。子ども手当は、児童手当の名称を替えて支給額を増やしたものに過ぎず、中・高所得層にとっては負担が増えるようなものだったのかとの失望が広がるだろう。これではマニフェストからの後退感はぬぐえず、来年の参議院選挙に支障が出るとの反対意見が強い(民主党は、これを覚悟の上で重点要望のトップに持ってきたにも関わらず、政府=鳩山首相と長妻大臣が理解していないとの不満があるらしい)。

子ども手当 所得制限、年収2000万で調整 首相、公約実施固執せず
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091218-00000071-san-pol

そもそも、これだけ迷走しているのは、厚生労働省の予算規模が膨れ上がっていて、他省ではできている圧縮に失敗しているからである。「政治主導」を標榜するなら、長妻大臣は、無理を承知の上で、全ての予算をさらに一律1割カットすること、カットできない予算は局のなかで調整すること(できないとは言わせない)、確保した財源をマニフェストの実現に充てたうえで予算額の圧縮にまわすことを命じ、すぐに報告を求めるぐらいの覚悟=強権発動が必要だろう。国土交通省にできて、厚生労働省にできないわけがない。
このまま財源確保の決着をつけてしまうと、やりたい放題が止まらない厚生労働省の役人の高笑いが聞こえてきそうである。厚生労働省の予算は無駄だらけ。押しに押せば、いくらでも圧縮できるはず。次年度予算は仕方ないにしても、その次は、民間の知恵をどんどん入れて「官僚主導」を排すべき。長妻大臣には、ピエロで終わってほしくない。

「子ども手当」所得制限で最終調整 参院選対策か 財源捻出か
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091219-00000058-san-pol

民主党の重点要望を受けて、子ども手当と高校無償化の調整が続く

2009年12月18日 09時54分55秒 | 子ども手当・子育て
昨日は、民主党の重点要望のうち、関連するものについてざっと書いた。後からの振り返りのため、このブログで取り上げてきたことを転載しておく。

1 重点要望
(1)子ども手当
 子育ての心配をなくし、社会全体で子育てを応援するため、「子ども手当」は、初年度、子ども1人当たり、月額1万3千円とし、地方には新たな負担増を求めない。所得制限については、その限度額は予算編成にあたり政府与党で調整し決定する。

(2)高校無償化
 みんなに教育のチャンスを与えるため、公立高校生の授業料を無償化し、私立高校生には年額12万円(低所得者世帯は24万円)を助成する。また、所得制限は設けない。

(9)診療報酬の引き上げ
 全国で発生している医療崩壊を防ぐため、地域医療を守る医療機関の診療報酬本体の引き上げが必要である。
 特に、救急医療や不採算医療を担っている大規模・中規模病院の経営環境を改善するため、格段の配慮を求める。また、医療を現場で支えている看護師の待遇、生活の医療である歯科医療についても診療報酬の引き上げが必要である。

(10)介護労働者の待遇改善
 介護の必要な高齢者に良質な介護サービスを提供する必要があり、とりわけ介護労働者の待遇改善が図られるべきである。

(11)障害者自立支援法廃止
 障害者自立支援法の廃止に際して、障害者の負担が増加しないよう配慮すべきである。

http://www.asahi.com/politics/update/1217/TKY200912170004.html?ref=goo


子ども手当に所得制限を設けることに関して、納税者番号がないと市町村の事務負担が重くなり過ぎるとして反対の立場をとってきた管副総理が「不可能ではない」「技術的に可能」と述べたと報じられている。このブログでも書いたとおり、児童手当では、決定に際して所得を把握しているのでできなくはない。申請者が正しい所得を申告してくれたならば、受理して決定するだけで済む。それでは不正受給を防げないので、市町村の職員がきちんと確認しなければならない。技術的に可能かというよりも、市町村のその事務負担をどうするかという問題である。児童手当から子ども手当に切り替えるにあたって要件を緩めて支給者数が増えれば、事務負担も比例して増える。市町村は職員数を減らしており、限られた職員数でどのように運用するか=所得を正しく把握するかという問題が急浮上することになるだろう。市町村に配慮して支給者数を現行並みとすると、児童手当の名称を替えただけになってしまう。不正が増えるのも困る。管副総理の発言を受けて、市町村がどのように動くか、注視していきたい(児童手当の廃止で財政負担は軽くなるが、子ども手当の事務負担が重くなる。どう評価するか?)。

子ども手当の所得制限は可能=菅副総理が前向き姿勢
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091217-00000092-jij-pol

また、子ども手当と同時に廃止になる扶養控除については、年齢と所得を制限して「成年控除」として存続させる方向で調整が進んでいる。このブログでは、障害者を対象とする新たな控除を創設すべきかと書いたが、「○○控除」として創設するには対象者が少なすぎるとの反対があったことから、23~69歳までの「成年控除」を残すことになったようである。

成年控除、課税所得400万円以下は存続 政府税調
http://www.asahi.com/politics/update/1216/TKY200912160452.html?ref=goo


また、高校の無償化の所得制限と特別扶養控除の縮減についても動きがあった。高校の無償化について、民主党の重点要望で所得制限を設けないことが明記されたため、その方向で調整が進むようである。特別扶養控除の縮減についての結論は出ていないが、文部科学省が縮減するとメリットが半分になるとの試算結果を出しているため、何らかの巻き返しがあるかもしれない。

所得制限、見送り強まる=高校無償化で-政府
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091216X940.html

<高校無償化>特定扶養控除縮減ならメリット半分に 文科省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091216-00000128-mai-pol