制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

民主党の重点要望を受けて、子ども手当と高校無償化の調整が続く

2009年12月18日 09時54分55秒 | 子ども手当・子育て
昨日は、民主党の重点要望のうち、関連するものについてざっと書いた。後からの振り返りのため、このブログで取り上げてきたことを転載しておく。

1 重点要望
(1)子ども手当
 子育ての心配をなくし、社会全体で子育てを応援するため、「子ども手当」は、初年度、子ども1人当たり、月額1万3千円とし、地方には新たな負担増を求めない。所得制限については、その限度額は予算編成にあたり政府与党で調整し決定する。

(2)高校無償化
 みんなに教育のチャンスを与えるため、公立高校生の授業料を無償化し、私立高校生には年額12万円(低所得者世帯は24万円)を助成する。また、所得制限は設けない。

(9)診療報酬の引き上げ
 全国で発生している医療崩壊を防ぐため、地域医療を守る医療機関の診療報酬本体の引き上げが必要である。
 特に、救急医療や不採算医療を担っている大規模・中規模病院の経営環境を改善するため、格段の配慮を求める。また、医療を現場で支えている看護師の待遇、生活の医療である歯科医療についても診療報酬の引き上げが必要である。

(10)介護労働者の待遇改善
 介護の必要な高齢者に良質な介護サービスを提供する必要があり、とりわけ介護労働者の待遇改善が図られるべきである。

(11)障害者自立支援法廃止
 障害者自立支援法の廃止に際して、障害者の負担が増加しないよう配慮すべきである。

http://www.asahi.com/politics/update/1217/TKY200912170004.html?ref=goo


子ども手当に所得制限を設けることに関して、納税者番号がないと市町村の事務負担が重くなり過ぎるとして反対の立場をとってきた管副総理が「不可能ではない」「技術的に可能」と述べたと報じられている。このブログでも書いたとおり、児童手当では、決定に際して所得を把握しているのでできなくはない。申請者が正しい所得を申告してくれたならば、受理して決定するだけで済む。それでは不正受給を防げないので、市町村の職員がきちんと確認しなければならない。技術的に可能かというよりも、市町村のその事務負担をどうするかという問題である。児童手当から子ども手当に切り替えるにあたって要件を緩めて支給者数が増えれば、事務負担も比例して増える。市町村は職員数を減らしており、限られた職員数でどのように運用するか=所得を正しく把握するかという問題が急浮上することになるだろう。市町村に配慮して支給者数を現行並みとすると、児童手当の名称を替えただけになってしまう。不正が増えるのも困る。管副総理の発言を受けて、市町村がどのように動くか、注視していきたい(児童手当の廃止で財政負担は軽くなるが、子ども手当の事務負担が重くなる。どう評価するか?)。

子ども手当の所得制限は可能=菅副総理が前向き姿勢
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091217-00000092-jij-pol

また、子ども手当と同時に廃止になる扶養控除については、年齢と所得を制限して「成年控除」として存続させる方向で調整が進んでいる。このブログでは、障害者を対象とする新たな控除を創設すべきかと書いたが、「○○控除」として創設するには対象者が少なすぎるとの反対があったことから、23~69歳までの「成年控除」を残すことになったようである。

成年控除、課税所得400万円以下は存続 政府税調
http://www.asahi.com/politics/update/1216/TKY200912160452.html?ref=goo


また、高校の無償化の所得制限と特別扶養控除の縮減についても動きがあった。高校の無償化について、民主党の重点要望で所得制限を設けないことが明記されたため、その方向で調整が進むようである。特別扶養控除の縮減についての結論は出ていないが、文部科学省が縮減するとメリットが半分になるとの試算結果を出しているため、何らかの巻き返しがあるかもしれない。

所得制限、見送り強まる=高校無償化で-政府
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091216X940.html

<高校無償化>特定扶養控除縮減ならメリット半分に 文科省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091216-00000128-mai-pol


2 コメント

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Unknown (ゆうくんパパ)
2009-12-21 17:55:40
特定扶養控除の縮減は、「メリットが半分になる」ではすみません。
いま、公立高校生の1割にあたる約23万人が、低所得のため、すでに授業料減免を受けています。
授業料が免除されている人には「無償化」の恩恵はありません。
ただただ、増税になるだけです。
低所得者に増税を押しつける政策は常軌を逸しているとしかいいようがありません。
文部科学省は、いったい何を考えているのでしょうか。
このままだと、高校中退者がますます増えてしまうおそれがあります。
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確かに(その2) (e-wel&gov)
2009-12-22 00:04:32
ゆうくんパパ、コメントありがとうございます。
よろしければ、「政府税制調査会、取りまとめ難航 特定扶養控除の縮減を再協議」(2009年12月15日 10時03分36秒)も合わせてご覧ください。民主党の「控除から手当へ」はスローガンとしては良いのですが、ご指摘のとおり、公平な仕組みを設計するのは難しいですね。
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