http://news.nifty.com/cs/item/detail/gendai-000196783/1.htm
2013年11月8日(金)10時26分配信 日刊ゲンダイ
北京の天安門に車が突入、建国の父・毛沢東の肖像画の下で爆発炎上して40人余りが死傷したのに続き、6日は山西省の共産党委員会庁舎前で連続爆発事件が起き9人が死傷した。一党独裁体制が揺らぎ始めている中国。もはや非常事態だ。いよいよ緊迫してきた。
<周到な計画性、明確な殺意>
共産党委員会を狙うとは尋常じゃない。中国当局が「ウイグル族のテロ」と断じた天安門の突入事件の直後から、北京を中心に武装警察部隊が厳戒態勢を敷いている。しかも、中国では今月9日から、向こう10年間の経済改革の青写真を打ち出す重要会議・党中央委員会第3回全体会議(三中全会)が開幕する。何者かが明確な意思を持って共産党を挑発したのは明らかだ。
中国在住のジャーナリスト・李大音氏もこう推測する。
「三中全会を前に共産党幹部は北京に集結し、地方都市の警備は手薄になっていた。そこを狙い撃ちしたわけで、周到な計画性を感じます。犯人像は断定できないとして、このタイミングでこうしたテロが起こった背景は、今なら習近平体制をグラつかせることができるという判断があったのでしょう。実際、習体制は内部で権力闘争が激化しているだけでなく、頼みの経済も急失速し、北京の大気汚染も耐え難いレベルになっている。民衆の不満は頂点で、それを習主席はロシアのプーチン大統領や毛沢東国家主席にならって、力で封じ込めようとしている。こうした姿勢がますます、反感を買っているのです」
最近の中国は爆破事件が続々と起きている。今年2月には広東省湛江市で爆薬を積んだ車が爆発、25人が死傷。山西省臨汾市の共産党幹部宅では、手製爆弾が爆発して1人が死亡した。7月は北京首都国際空港のターミナルで2人が負傷する爆破事件が起きた。飛行機の爆破予告も相次いでいる。
元中国共産主義青年団の幹部で現在は「月刊中国」を主幹するジャーナリスト、鳴霞(めいか)氏はこう言った。
「数年前までは貧富の格差や土地・家屋の強制収用に怒った庶民がデモや暴動を起こしていました。それが最近は明確な殺意を持ち、システマチックで軍事的な行動に移行しつつあります。これは背後に専門知識を持つ退役軍人の存在があると考えられます。かつて退役後も特権階級として優遇された軍人の多くが、今では医療も住宅も保障されず、困窮した生活を送っています。庶民同様、怒りを習体制に向けているのです。彼らにとって手製爆弾をつくるのは難しいことではないし、中には暗殺技術に秀でた者もいます。かつてトウ小平、江沢民が暗殺未遂に遭ったように、これから、習近平の命が狙われることもあるでしょう。三中全会が終わっても、来月26日には毛沢東の生誕120周年を控えています。いつ、何が起きても不思議ではありません」
暗殺、崩壊……。Xデーが迫っている。
(日刊ゲンダイ2013年11月7日掲載)
●中国騒乱の陰に格差…陳情門前払いに怒り爆発
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/world/20131108-567-OYT1T00219.html
2013年11月8日(金)08:10
(読売新聞)
中国山西省での連続爆発や北京・天安門前での車突入など、共産党政権を標的にした事件や騒乱が相次ぐ背景には、社会の隅々に重層的に広がる「格差」がある。党は9日開幕の重要会議、第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で、格差の是正策など経済改革を打ち出すとみられるが、力による統治は一段と強化する構えだ。
【太原(中国山西省)=竹内誠一郎】連続爆発から一夜明けた7日、標的となった山西省党委員会の庁舎の裏手1階にある「陳情窓口」は、事件による警備強化で閑散としていた。普段なら待合室には数百人の直訴者が殺到するというが、20人ほどしか見当たらない。直訴の理由は、土地の強制収用や不公正な司法に対する抗議など様々だ。「10万人に1人の金持ちと官僚がいい思いをしている」「庶民は耐え忍ぶだけだ」と一様に不満をぶつけてきた。
山西省は「全国でも陳情案件が多い」(党関係者)という。主要産業の石炭生産を担う炭鉱の経営者は、北京や上海の高級マンションを買いあさり、高級外車を乗り回す富豪ぶりで知られる。官僚との癒着も指摘される。だが、省の1人当たり域内総生産は全国31の直轄市、省、自治区の中で19位。大多数を占める炭鉱労働者らの低賃金が平均値を押し下げている。
社会の底辺では不満がくすぶる。その不満を吸い上げるシステムの機能不全が絶望を生み、一部民衆を過激な行動に走らせる。山西省にも同じ構造があった。
「ここではあんたの陳情は受け付けられない。省の窓口に行きなさい」
7日午後、庁舎から約20キロ離れた高級ホテルの正門前にいた元自動車整備工の男性(48)に地元警察担当者が冷たく告げた。
ホテルには、10月末から山西省入りした党中央規律検査委員会の汚職事件の調査グループが泊まっている。「民衆の声を直接、すくい上げる」というふれこみだ。男性は、職場の部下らとのトラブルで負傷し、障害者となったが、部下への判決に納得がいかず、説明を求めて3年以上になる。だが、この日も省の陳情窓口などをたらい回しにされた後、このホテルに回ったが門前払いとなった。ホテルから、地元当局者に連行された直訴者もいたという。
今年6月に福建省アモイで起きたバス放火事件、7月に北京空港で車いすの男が起こした自爆事件は、いずれも直訴が背景にあったとされる。男性は目を伏せながらつぶやいた。「ほかに方法がなかったのだろう。私も最後の手段としてやってしまうかもしれない」