2013年11月11日(月)18:31
読売新聞
動物園や水族館で人気者として欠かせない存在だったゾウやラッコなどが姿を消しつつある。
野生動物の輸入が制限される一方、飼育下での繁殖は課題が多く、財政難も影を落とす。専門家は「このままでは近い将来、花形スターが絶滅する」と危機感を強めており、全国149施設が加盟する日本動物園水族館協会(JAZA、東京都)は繁殖計画や飼育状況をデータベース化し、繁殖相手などをマッチングする取り組みに乗り出す。
◇財政難
「今度こそ成功させないと」。10月9日、神戸市立王子動物園。来春に出産を控えるアジアゾウ・ズゼ(23歳)が移送トラックに誘導されるのを飼育員が見守った。
ズゼは2004年に雌、07年に雄を産んだが育児放棄し、1歳と4歳で死亡。今回は9月にアジアゾウを自然繁殖させた「市原ぞうの国」(千葉県)に預けることにした。「赤ちゃんを産んだばかりの母ゾウがそばにいれば、見よう見まねで子育てしてくれるのでは」と王子動物園の花木久実子・飼育展示係長は期待する。
国内のアジアゾウは昨年度73頭。ピークより半減したアフリカゾウに比べると横ばいだが、アジアゾウに詳しい上野動物園(東京都)の飼育員は「繁殖を軌道に乗せないと半世紀後には10頭程度になる」とみる。背景には繁殖の難しさと、ワシントン条約で1975年に「絶滅の危険性がある生き物」に分類、輸入規制の対象になったことがある。繁殖目的の輸入でも、3頭以上での飼育や広大な敷地の確保などが最低条件だ。
6年前、アジアゾウの花子が死んだ札幌市円山動物園。市が3頭飼うとして試算したところ小学校1校の建設費に当たる約20億円、光熱費や餌代に年約2000万円との結果が出た。「子供らにゾウを見せてやりたいが、今の財政事情では」と担当者は頭を抱える。
◇水族館も
青森県営浅虫水族館(青森市)では昨年9月、雄のラッコ・モモタロウ(8歳)が死に、かつて4頭いたラッコが姿を消した。「今、ラッコはどこの水族館でも『虎の子』。譲ってくれるところはなく、飼育はあきらめた」と明かす。
愛くるしい姿がブームとなり、90年代、各地の水族館が購入。しかし平均寿命は15年ほどで、93年度の111頭から昨年度27頭まで減った。主な生息地はアラスカで、原油流出事故の影響や生態系保護のための規制強化を理由に98年を最後に輸入は途絶えている。
各施設で減る動物はほかにニシゴリラやマカロニペンギンなどもいる。