● NHK受信料訴訟 浮かぶ問題 曖昧な制度争点複雑化 gooニュース
2012年9月30日(日)08:05
(産経新聞)
■契約の成立いつから/ホテルに請求5億円/未払い分の「時効」は
10月から月額最大120円値下げされるNHK受信料。NHKは平成24~26年度で1162億円と見込まれる減収分を補うため、受信料の支払率を上げようと未払い者への督促申し立てを過去1年で1000件超と加速させ、昨秋には未契約の一般世帯に初めて訴訟も起こした。しかし、一連の裁判では受信契約が成立するタイミングや、未払い分を何年遡(さかのぼ)って請求できるかなどが争点となり、受信料制度が抱える“曖昧さ”も浮き彫りになっている。(織田淳嗣)
昨年11月、一般世帯で初めてNHKから受信契約締結を求めて提訴された東京都内の男性。NHKから契約を求める申込書が届いたのは同9月で、男性が応じなかったところ、2カ月後に提訴された。当初は契約締結に加えて10~11月の2カ月分の受信料4580円を請求された。
ところが今年4月、口頭弁論を前にした準備書面でNHK側は「9月に申込書が到達した時点で、契約は成立したと解すべきだ」と新たな主張を展開。請求額についても、男性が平成18年3月からBS受信機を持っていた証拠が見つかったとして、過去6年分の16万8720円に増額した。
契約成立を「申込書到達と同時」とする主張について、NHK側は「契約締結は放送法に基づく義務であり、申し込みを拒絶することは許容されていないから」としている。
この成立時期が焦点となっているのが、7月に東横イン(東京都大田区)に対して起こされた訴訟だ。NHKはテレビの設置台数に応じた受信契約を結ばなかったなどとして、東横インに未契約の3万3767件の今年1~7月分に当たる約5億5210万円を請求。訴状によれば、3月14日にNHKからこれらの契約の申込書が東横インに到着。NHKはこの時点での契約成立を主張している。
東横インは答弁書で「放送法は受信機の設置者から自発的に締結することを予定しており、受信機の設置者が申し込みを行う。水道、電気、ガスなど公共性の高いサービスで供給者から契約の申し込みをする制度は取られていない」などと反論し、争う姿勢だ。
前出の男性の件では、未払いをどこまで遡って請求できるかも争われている。
NHK側は、18年3月に男性がBS画面に表示された受信機の設置確認を促すメッセージに従って操作した記録が見つかったとしている。しかし、今年2月、東京高裁での受信料未払い訴訟の判決で、受信料債権は短期消滅時効(5年)の適用を受けるとした判断が確定。民法では1年より短い期間で定期的に一定の金銭の給付を受ける債権についての時効を5年と定めており、受信料がそれに該当すると判断した。
しかし、NHKは取材に対し「消滅時効期間は民法の一般原則に照らして10年」と主張し、消滅時効をめぐって別の裁判でも争っている。男性側の代理人弁護士は「裁判で認められたばかりの5年の時効を超えて請求するのは理不尽」と主張している。
【用語解説】受信料支払い督促と訴訟
NHKによると、平成18年11月~24年8月に、受信契約を結びながら受信料を支払わなかったとして支払い督促を申し立てた総件数は2975件。そのうち1166件が訴訟になった。未契約者への提訴は一般世帯6件、事業所5件。
● 日本郵便、霧中の船出 あす合併 サービス向上も一部店舗のみ gooニュース
2012年9月30日(日)07:57
(産経新聞)
日本郵政グループの郵便事業会社と郵便局会社が10月1日に合併し、「日本郵便」が発足する。平成19年10月の分社化で、郵便配達員による貯金や保険の取り次ぎができなくなるなど低下したサービスを高め、顧客の利便性の向上を目指す。だが、当初は一部店舗にとどまるうえ、業績低迷の打開策は見えないままだ。
日本郵便の誕生で、日本郵政の幹部は「分社化によって生じたさまざまな弊害を解消したい」と意気込む。
両社の合併で、郵便配達員がゆうちょ銀行の利用者から通帳を預かり貯金の引き下ろしを代行する通帳預かりサービスが始まる。高齢者の多い地方などで求められていた。また、郵便事業会社と郵便局にそれぞれあった窓口を一本化し、不在郵便物の受け取りと切手購入などが同じ窓口でできるようになる。
ただ、10月1日から通帳預かりサービスや窓口が一本化されるのは、全国約2万4千局ある郵便局のうち、それぞれ52局にとどまる。具体的な拡大目標も示していない。
また、統合に伴い郵便局と併設されている集配センターの統合や人事、経理など重複部門をスリム化する。日本郵政の斎藤次郎社長は「年間数百億円の経費節減になる」とし、合理化による収益力の向上を目指す。
日本郵政の郵便事業の業績は長期低迷が続く。電子メールの普及による郵便物の減少や宅配業務の競争激化などにより、22年3月期から24年3月期まで3期連続の最終赤字を計上した。宅配便サービスでは、コンビニなど小売りの販売窓口をヤマト運輸など競合相手に奪われつつある。
楽天などと連携し、海外向け配送サービスの強化に取り組むが、収益に大きく貢献するまでに至っておらず、事業拡大に向けた展望は開けていない。