● 中国の反日デモが両国の株を圧迫、欧米緩和効果の期待後退 ロイター 2012年 09月 18日 14:43
[東京 18日 ロイター] 大規模化する中国の反日デモは日本と中国、両方のマーケットに影を落としている。日本株の圧迫要因となっているだけでなく、中国株も続落。深い経済関係を有する両国の亀裂はどちらにとってもデメリットと受け止められているためだ。
欧米中銀の大胆な緩和措置によるプラス効果への期待も後退、市場のリスクセンチメントを悪化させなかねいとの懸念も出ている。
<重要な経済関係有する両国>
中国は日本にとって最大の貿易相手国だ。貿易総額だけでなく、輸出額、輸入額ともにトップ。輸出入総額はこの10年で3.8倍の3449億ドルに拡大した。日本貿易振興機構のデータによると、2012年上期の日本の貿易総額に占める中国の比率は19.3%。前年同期から1.3%ポイント低下したが、2位の米国は12.7%であり、断トツのシェアとなっている。日本の進出企業は2万社を超え、2011年の対中直接投資額も香港、台湾に続き第3位だ。
尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる中国の反日デモ拡大は、日系企業が相次ぎ工場や店舗の操業・営業を停止する事態となっており、マーケットでは企業業績悪化への懸念が強まっている。18日前場の日経平均.N225は小幅プラスとなったが、ファーストリテイリング(9983.T: 株価, ニュース, レポート)や日産自動車(7201.T: 株価, ニュース, レポート)など中国と関係が深い銘柄の下げがきつく、指数を圧迫。「円安が下支えする一方、中国関連株が重しとなっている。問題が長期化すれば日本企業への悪影響は避けられない」(東洋証券・情報部長の大塚竜太氏)という。
反日デモ問題は日本株だけでなく、中国株の売り要因にもなっている。18日午前の上海総合指数.SSECは0.64%安となり、17日と合わせると2.7%の下落となり、上向き始めていた中国株は再び下落基調を強めている。圧迫要因の一つは大規模化する反日デモ問題だ。
中国の2011年貿易総額で、日本はEU(欧州連合)、米国、ASEAN(東南アジア諸国連合)に次ぐ第4位。日本への輸出品目が多岐に渡るのに対し、日本からの輸入品目は「集積回路」に集中している。「日本からの精密部品をコアにして組み立てている商品が多い。日本からの輸入が滞れば、ボトルネックとなって中国国内の生産が減速する可能性がある」(国内証券)という。両国の関係悪化は経済的にみて、どちらにとってもマイナスだ。
<リスクオフに振れれば円高再開も>
為替市場も敏感に反応しているようで、東京市場のドル/円は利食いに押されたものの、海外ファンド勢は中国の反日デモと日銀による追加緩和期待から円売りのスタンスを維持しているという。しかも「日本の輸出減の影響だけではなく、アジア地域の政情不安を背景に日本売りを口にする海外勢も出てきた」(外資系証券)との声も出ており、日本にとって歓迎できる円安ではない。
一方で、デモの拡大が逆に円高につながるとの見方もある。野村証券チーフ為替ストラテジスト池田雄之輔氏は「日系企業の小売店舗や工場などでは休業が相次いでいるもようで、その影響の表れ方は天災などによる供給能力の低下に似ている」と指摘。「その場合、日本の貿易赤字拡大を通じた円売り圧力よりも、中国景気への下押しによるリスクセンチメントの悪化を通じた円高圧力が大きいと予想される」と話す。市場センチメントがリスクオフに振れれば、再び円高が進行し、日本株にとってダブルパンチとなる恐れも強い。
<中国反日デモは景況感にも重し>
新たな国債買い入れプログラム(OMT)について量的な限度を設けずに買い入れるとした欧州中央銀行(ECB)に続き、米連邦準備理事会(FRB)もオープンエンド型の米量的緩和第3弾(QE3)を導入。「リフレ派のエコノミストでも驚くような大胆な措置」(マネックス証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏)とされ、効果への期待感は残っているが、景気は足踏みを続けている。
9月のニューヨーク州製造業業況指数がマイナス10.41と2カ月連続で悪化し、2009年4月以来約3年半ぶりの低水準となった。「期待感が先行しているが、米国はQE3の経済効果がすぐに出るわけでもない。財政の崖も意識されやすい。今後は、米国、中国、日本が政治の空白期に入るため、経済は停滞する可能性がある」(岡三証券・債券シニアストラテジストの鈴木誠氏)という。
さらに「人件費の上昇などで中国で生産するメリットは低下している。反日デモ問題が長期化すればチャイナ・リスクが意識され、中国に投資しようという外資系企業は減少するおそれがある」(楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏)との指摘もある。反日デモの長期化は中国経済のネガティブ要因となり、1兆元投資などを好感し上向き始めた市場のセンチメントを損ないかねない。
午前の国債先物は反落。米債利回りが上昇したことを嫌気した売りが先行したが、現物に国内勢からの押し目買いが観測されると、切り返して下げ幅を縮小させた。中国問題は円債のサポート要因になっており、市場では「0.80%割れの時間帯が短く含み益の幅が限られること、入札がないことによる需給が良好であることから、売られたところでは買いの機会だろう。9月末の決算を控えて、大きなオペレーションはしづらく、またそれほど環境が激変したわけではない」(UBS証券・シニア債券ストラテジストの伊藤篤氏)との声が出ていた。