goo blog サービス終了のお知らせ 

童話と絵本の会

楽しい童話や絵本を集めています。気にいった童話や絵本があればお知らせください。

童話と絵本の会 2021.12.31 赤い鳥 二年生 おふろ

2020-11-23 15:53:21 | ア行の絵本

2021年 12月 31日(金)晴れのち曇り 4℃  60%RH am11:50

 

童話と絵本の会の準備をしています。 お気に入りの童話や絵本があれば教えてください。

 

今日の絵本

_おふろ=堤 文子 え 渡辺三郎

__赤い鳥 二年生  赤い鳥の会 代表 坪田譲治 与田準一 鈴木珊一 

___1980  株式会社小峰書店 

_____私の蔵書

 

れい子ちゃんと、きみ子ちゃんは 七つと 六つの、

きょうだいです。 ある ゆうがた、 おかあさまが、

「きょうは、 わたしは いそがしいから、 ふたりで

おふろへ いってらっしゃい。 もう 大きく なったんだから、

それくらい できるでしょう?」と おっしゃいました。

「ええ ええ。」

「ねええ。」と、 ふたりは 大よろこびで、 とびあがりました。

ふたりだけで おふろへ いくんですから、

もう 小さな 子では なく、 すっかり、 おねえさまに

なったような きがして、 うれしくて たまりません。

ふたりは おおいそぎで、 シャボンばこ、 あらいこ、 

おかさまが、 えりから あごへ おつけになる クリーム、

それから、 おしろいと、 はけと、 くしとを、 がちゃがちゃと、

メッキの さげものに いれ、 手ぬぐいかけから、 

手ぬぐいと、 ゆあげの 大タオルを ひっぱり おろしました。

 おかあさまは、 いつも おむこうの 赤ちゃんを

つれていって おあげになります。 れい子ちゃんと 

きみ子ちゃんは、 その まねをして、 キューピーちゃんを

つれていくことにしました。

 

 ふたりは、 キューピーちゃんに、 水色の、 ろの、 ちゃんちゃんこに、 

くろじゅすの えりを かけた、 よそゆきのを きせました。

 それから、 おかあさまに お金を いただくと、

「いってまいりまぁす。」

「よく 気をつけてね。」

「いってまいりまぁす。」と 大よろこびで とびだして、

おふろやの まえまで、 いきも つかずに はしりつづけました。

 ふたりとも、 きょうは、 おかあさまが なさるとおりに

じょうずに やってこなければ、 と おもいながら、

きどって、 ばんだいへ お金を おきました。

 れい子ちゃんは てばやく、 きものを いれる ざるを とって、

「どうぞ。」と、 きみ子ちゃんに あげました。

「あら、 どうも。」と、 きみ子ちゃんは、 すまして

えしゃくをしました。 ふたりとも、 きょうは 活動の ビラや、

うりだしの こうこくなぞを みあげたりなんか しません。

 ながしばへ はいると、 いつも おかあさまの なさる

とおりを おもいだして、 そのとおりに しました。 

 

 ふたりは、 いちど おゆに つかると、 ながしばの

いっとう おくへ ばしょを とって、 まず、 せなかを

ながしあいました。 それが すむと、 れい子ちゃんが

キューピーちゃんを お手ぬぐいに つつんで、 また

おゆに はいりました。

「すこし、 ぬるめて あげましょうね。 赤ちゃんには、

ちっと、 おきつうござんすね。」と、 きみ子ちゃんは、

いっぱし、 おばさまが なんかのように こう いって、

水道の せんを ひねりました。

「まあ、 おそれいりました。」と、 れい子ちゃんは

おれいを いいました。

 そして、 お手ぬぐいで キューピーちゃんの おかおを、

じゃぶじゃぶと あらって、 「ちょいと、おねえさま、 

だっこしていてよね。」と、 キューピーちゃんを きみ子ちゃんに 

わたしました。

そして、 じぶんは、おかあさまが いつも なさる とおりに、

あごが すれすれに なるまで おゆに しずんで、 お手ぬぐいで、

えりから,  かたを こすりこすり しました。

 ふと みますと、 じきまえの よこの ながしばに

おとなりの おばさまが、 うしろむきになって、 足を

こすって いらっしゃるのが めに つきました。

 

「きみ子ちゃん、 おとなりの おばさまが いらっしゃるわよ。 あすこ。」

「ああ、 そうね。」

 おばさまは、 からになった おけと、 おゆが 

シャボンだらけになっている おけを ならべて おいでです。

「おゆを くんで あげなくちゃ わるいでしょう?」と、

きみ子ちゃんが 小さな こえで ききます。

「むろん、 くんで さしあげるのが ほんとうですわ。」と、

れい子ちゃんが いいました。 おとなの 人たちは

しりあいの 人が いると、 おゆを くんであげっこを

するのが きまりです。 ふたりは、 キューピーちゃんを、

さげものの 中へ ねかせておいて、 ひとつずつの

おけへ おゆを くんで 「おばさま どうぞ。」と、

いって そばへ ならべました。 おばさまは、

「あらあら、 これは どうもありがとうさま。

すみませんね。」と、 おじぎを なさいました。

「どういたしまして。」と、 れい子ちゃんが いいました。

 

ふたりは、また ひとつずつ くんで、 おかおを まっかにしながら、 

えっさえっさと かかえて いきました。

おばさまは。

「あら、 もう けっこうでございます。 どうも ありがとうさま。

すみませんですね。」と おっしゃいます。

こんどは きみ子ちゃんが、「どういたしまして。」と いいました。 

ふたりは なんだか じぶんたちが、 すっかり 頭を そくはつにでも

ゆった 大きな 女の人に なっているような きがしました。 

ふたりとも、 とても、 しとやかに たちふるまって、

にこりとも しませんでした。

 ふたりは、 ながしの 上に ひざを たてて すわりました。 

れい子ちゃんは ぬかで えりを こすりだしました。 

きみ子ちゃんは、 キューピーちゃんの からだを、 あらいこで

つるつる あらいながら、 おばさまに おゆを、

くんであげようと いいだしたのは わたしだわと おもって、 

ひとりで、 とくいになって いました。

 

 しかし、れい子ちゃんは、 やっぱり ほんとうの 

おねえさまだけあって、 もっと おねえさまらしいことを

かんがえつきました。 れい子ちゃんは、 手ぬぐいと、

あかすりと、 シャボンを もって、 おばさまの ところへ

いきました。

「おばさま ちょっと おせなかを おながし いたしましょう。」と

いいますと、おばさまは びっくりして、

「いえいえ、 もう けっこうでございます。 どうぞ どうぞ。」と 

おっしゃいます。

「ごえんりょなんか、 どうぞ。」と れい子ちゃんは、あかすりを

手ぬぐいにくるんで、 おばさまの おせなかを ごしごし 

こすりました。 その おせなかの はだの いろは、 すこし、 

うすちゃいろです。 たいそう ふとって、 はばの ひろい 

おせなかです。 まん中の ところに、 大きな赤い、 

おきゅうの あとが ふたつ ならんでいます。

なんだか みても いたそうなので、 そこは よけて

こすりました。

 

 「はいはい、 もう、 ありがとうさま。 もう けっこうです。」と、 

おばさまが、 むせるような こえで  おっしゃるので よしました。

そして 手ぬぐいを ひろげて ふたつに たたんで、 おばさまの

かたへ かけて、 上から、 さあっと、 おけの ゆを かけてあげました。

 おばさまは、 うつむきこんで、 ていねいに おれいを おっしゃいます。

 れい子ちゃんは、

「どうしていたしまして。」と ごあいさつをして、 もとの ところへ かえりました。

 なんだか じぶんが すっかり  えらくなったようで、 うれしくて、 むねが

どきどきしました。

 

まもなく、ふたりとも あがりました。 ゆう日が、 おもてがわの

高まどに はまった、 くもりガラスを うすぎいろく そめています。

きみ子ちゃんは キューピーちゃんを きれいに ふいてやって

ちゃんちゃんこを きせました。 そして、あせもが でないように、

しろいこなを ふるかわりに おしろいを おでこに つけてやりましたした。

しかし、 キューピーちゃんの ひたいは、 つるつるですから、

いくらやっても つかないで、 きみ子ちゃんの お手が しろくなるばかりでした。

れい子ちゃんは、 大きなタオルを かたに ひっかけて、

かた手で うちわを つかいながら、 すましていました。 みると、 むこうの

かがみに じぶんの すがたが すっかり うつっています。

 

と、 そこへ、 おふろやの 女中さんが おくから でてきました。

いつも、 ももわれに ゆっている、 いろのしろい、 えくぼのある、

おとなしい 人です。 きょうは、 しろっぽい ゆかたに、 あかい おびを

しめて、 レースの ついた エプロンを かけています。 女中さんは、

「まあ、 おじょうさんがた、 おふたりだけで いらっしゃいましたの?  

おえろうございますこと。 さあ、冬やが おべべを おきせして あげましょう。」と、

にこにこしながら、 ざるを ひきよせます。 ふたりは びっくりして、

「いいえ、 いいのよ。」

「あら、 いいのよ。」と いっしょに こえを たてました。 女中さんは

そんなことは、 耳へも いれないように、 きみ子ちゃんの きものを

とりあげて きせにかかりました。

 

★★★★★★★★★★★つづきはここから★★★★★★★★★★★

 

きみ子ちゃんは、

「あらぁ、 いいのよう。 きょうは ふたりだけで きたんだから、 いいのよ。」と、

くるくる まわって にげかけました。 女中さんは かまわず、

つかまえて、 どんどん きせてしまいました。 れい子ちゃんも

つかまって、むりやりに きせられました。 女中さんは、 そのうえに、じぶんの くしを ぬいて、 ふたりの かみまで なでつけて くれるのです。 そして、

「まあ、 おかわいいこと。」 と ふたりの おかおを みくらべました。 ふたりとも もう なきだしそうになっていました。 あんなに おとならしく、 えらくなっていたのに、こんなことを されたので、 まるで、 小さな 女の子に なってしまいました。 おふろやの 女中さんに おべべを きせてもらったりする 大人がどこに あるでしょう。 ほんとに くやしいわと、 ふたりとも、 そう おもって、 ふくれかえって たっていました。 なんて おせっかいな 女中でしょう。 いつもは、 すきな、 人だと おもっていたのですが、 あんなこと されたので、 その かおも、 ひきがえるみたいに いやらしく みえました。 

「さ、 ころばないで おかえりなさいまし。」と、 とを あけてくれます。 これでは、 まるで、 赤ちゃんに なってしまいます。

 ふたりは そとへ でると、 おもわず かおを みあわせました。 きみ子ちゃんは、 なみだぐんで、 いまにも、ああんと、 いいそうな かおを しています。 れい子ちゃんも、 ぷりぷりして、 のろり のろり あるきだしました。 

(おわり)

                                                                                      

   

御来訪ありがとうございます。