木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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開発費と販促費

2006年02月21日 | デザイン契約など(相談室)


 こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

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■開発費と販促費
21:【デザイン相談室】運用11

 前回は、デザイナーとの間でよく問題になる「デザインの2次利用」についてのお話をしました。

 商品開発のためにデザイナーが描いた3DCADスケッチを販売促進用のカタログへ流用したり、一つの商品デザインを、開発デザイナーに連絡なしで、全く違う商品に、流用してしまうことは、著作権法上、「複製権の侵害」にあたり、法律違反だという話でした。

 今回は、このようなことを避けるための、企業側の対策についてお話しましょう。


開発費が少ない

 開発費が少ないこと。これが、「デザインの2次利用」がトラブルに発展してしまう一番の原因です。

 例えば、商品開発用のためのデザイン開発時に、デザイナーが十分に満足するだけの対価をもらっていれば、デザインスケッチをカタログなどへ転用されても、決して不満には思わないでしょう。
 (ただし、法律的には、デザイナーに2次利用することを伝えなければなりません。)

 メーカー側も、十分な対価が支払えるのであれば、最初の契約の時点で、デザインの2次利用についての条項を追加しておくことができます。

 しかし、実際のところ、メーカーの開発部門は、開発費がなくて困っているという話もよく聞きます。

 無断でのデザインの2次利用は、そんな企業側の内部事情によることが多いようです。


販売促進費

 企業の中で、商品開発費と販売促進費は、厳格に分けられています。

 販売促進費は、ほとんどの場合、広告代理店などの外部を使わざるを得ないため、その費用を、自社だけの判断で決められません。

 ところが、商品開発費は、基本的に社内で開発するために発生する費用です。そのため、企業の財政事情や経営方針により、販売促進費と較べて、簡単に減らしたり増やしたりされてしまいます。

 最近の不況のお陰で、商品開発費はどんどん少なくなっています。それに較べて、販売促進費は意外と減っていません。


商品デザインと販売促進

 そうです。
 「デザインの2次利用」の問題、特に、スケッチを販売促進用のカタログへ流用してしまう場合の、解決策は、商品デザイン開発費用を、開発費ではなく、販売促進費で計上すればいいのです。

 もともと、デザインと販売促進は、大変相性がいい。

 販売促進部門の担当者のほうが、開発部門の担当者より、商品デザインの重要性を理解している場合も、多々あると思います。

 広告やカタログやポスターなどに、デザイン的センスは欠かせません。

 紙面上のレイアウトやタイポグラフィーも大切ですが、やはり、商品の外観に魅力がないと、いい広告もできない。販売促進部門は、そういうことを、痛いほど理解されていると思います。

 また、商品デザインも、もともと、外観イメージを変えることで、売上を向上させることが、大きな目的ですから、これは販売促進と同じです。
 (ただし、デザインの効能はそれだけではありません。企業の社外・社内へのブランドイメージの向上など、違う側面もあります。)


デザイン費用は販売促進費で

 ほとんどの企業では、商品デザインは商品開発に関わるものだし、デザイン開発費用は商品開発費でまかなわなければならないと考えているのではないでしょう?

 また、開発部と販売部の部門間の力関係もあり、デザインを含めて、商品開発に関わることすべてを、開発部の中で収めたいという考えもあるかもしれません。

 しかし、デザインは、企画・開発・設計・販売などの枠にとらわれずに、もっと自由に、企業活動全体に関わるものだととらえるべきです。

 というよりも、デザインとは元来、そういうものです。

 ならば、開発・販促の枠にとらわれず、販売促進費用から、デザイン開発費を出して、販売部も積極的に商品デザイン開発にかかわるような体制にしたほうが、より多くの意見をデザイン開発に反映でき、結果、売りやすくて、売上に結びつく、いい商品ができるでしょう。

 それに、販売促進部の方が、大きな予算を持っていることも多く、また、販促の担当者のほうが、デザインの重要性を理解している場合も多いですから、開発部よりも、デザインに対して、多くの対価を考えてくれるでしょう。

 販売促進部からの発注であれば、デザイナーもスケッチなどの2次利用について、直接の担当者と話ができるため、揉め事になる可能性も、きっと少なくなるはずです。

 商品デザイン開発費を、販売促進費から出す。

 一度、考えてみてください。


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