スポーツライター・オオツカヒデキ@laugh&rough

オオツカヒデキは栃木SCを応援しています。
『VS.』寄稿。
『栃木SCマッチデイプログラム』担当。

『回り道も必要』@栃木SC通信

2008-03-22 00:42:12 | 栃木SC
明らかなアンバランス。戦略のひとつならば、個人のキャラクターを生かすならば、十分に合点が行く。それにしても、偏り方は顕著だった。時間を経るに連れて疑問がもたげてくる。単に意固地になり、執着してしまっているだけではないのか、と。右ワイドに先発起用された高安亮介の突破力とスピードに。右偏重は一向に是正される兆しが見えないどころか、ズブズブと泥沼にはまっていった。

「上手くビルドアップできなかったのが全て。同サイド、同サイドで行くのは難しい」
 
柱谷幸一監督は、問題点をそう分析した。例えばGK小針清允が右サイドバック岡田佑樹にボールを預ける。その時点で相手の陣形は崩れていない。高安の対面の選手も万全の準備を整えて待ち構えている。それでも、強引なまでにパスを通そうとした。いくらスピードがあっても、スペースを消されてしまっていては、抜きに掛かるのは容易ではない。目的地までの最短ルートを選択するあまり、攻撃が淡白になってしまった。進路を塞がれた高安はピッチから消去された。脅威を与えるべき場所が逆に足かせとなってしまう。
 
DFラインとボランチがポゼッションしながら機を伺い、サイドチェンジ、或いはコンビネーションを駆使して局面の打開を図っていくのが本来の栃木SCのスタイルである。一か八かのギャンブル的なパスを利すことは皆無に等しい。
 
ボールを散らす役割を担う向慎一は、「高安さんのよさを生かそうと、右、右になってしまった。相手もケアーしてくる。真ん中でボールを動かして、左にもっていくべきだった」と自ら選択肢を狭めてしまったことを激しく悔いた。続ける。「変化をつけられればよかった。ボク、(佐藤)悠介さん、(斎藤)雅也が起点になれれば、面白いサッカーになった」。

高安の速さは熟知している。それは、対戦相手のFC刈谷も同じこと。当然、警戒してくる。工夫が施されていない、安易なパスを出しても読まれてしまう。マークも剥がれない。一旦、逆サイドに振る、或いはボランチ、トップにあててから、右へはたく。単純な揺さ振りができていなかった。それどころか、一点に意識が集中してしまったことで、反対サイド、つまり左サイドは放置されたままになってしまった。佐藤は「ボールが触れないとリズムが作れない。ストレスが溜まった」とあけすけに話す。
 
高安の存在感が際立つのに45分以上を要してしまう。後半、上野優作がピッチに送り出されると、攻撃に緩急がつく。鳴りを潜めていたサイドアタックがようやく機能し始める。上野というワンクッションを挟んでから、サイドに展開したことで活性化が図れた。

直線で目的地に到達するのではなく、迂回したことが奏功する。良質なサイドからのアタックを可能にするためには、回り道も欠かせない。そして、修正能力も。「ゲーム中に、ボールが動いている時に修正するのはなかなか難しい」(柱谷監督)。だが、刻一刻と移り変わる状況に手をこまねいているわけにもいかない。「全部が全部、上手くはいかないが、悪い時間帯を減らして、いい時間帯を増やしていかなければならない」と佐藤は自省しながら、劣勢をイーブンに、更に攻勢に転じられるような能力を磨く必要性を説いた。

満遍なく両サイドからアタックを繰り出すには、能動的にサッカーを押し進めるには、コミュニケーションと連携を深め、気脈を通じ合わせることもまた、重要である。


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