サッカーを生業に出来るか、否か。もっといえば栃木SCのユニホームに2008年シーズンも袖を通せるのか。先発のお鉢が回ってきた高安亮介は水際に立たされていた。自身の中で「このチームに残れるか、残れないか。大事な一戦」と位置づけたのは、昨季の後期第11節、ホームでの三菱水島FC戦だった。
スタミナが切れることなど全く怖くなかった。むしろ、体力を温存して持ち味が発揮できなくなることを恐れた。足が悲鳴を上げるまで攻守に全力を尽くす。試合後、後悔しないためにも。並々ならぬ決意で臨んだ一戦。序盤から高安の群を抜くスピードにマッチアップしたDFはきりきり舞いになる。繰り返される縦へのドリブル突破。貪欲に勝負を仕掛けたことで、チームに推進力をもたらす。ゴール、アシストを記録するには至らなかったが、数多のFK、CKのみならずPKまで獲得したその存在感は際立った。不安材料に挙げていたスタミナは途中で切れてしまったが、猛烈なアピールはその後の出場時間を増やし、シーズン後の契約に結び付いた。人生を懸けたといっても過言ではない試合で見事に結果を残した。教師と並ぶ幼き頃からの夢であるプロ契約を自らの手で勝ち取った。そんな思い入れのある試合だからこそ、「スタートからピッチに立ちたかった」。誰よりも強い気持ちを抱えていた。しかし、スタメン表に高安の名前はなかった。
今季初出場、初先発したFC刈谷戦、チームの低調なパフォーマンスと同調するように高安は埋没してしまう。右ワイドの高安を軸に攻撃を組み立てる戦術が裏目に出てしまった。
「左で作ってからボールをもらえればチャンスになっていた。個の力で行くのは難しかった」
そう振り返るとおり、個の力で打開できる以前の問題、つまりスピードを生かせるスペースが全くなかった。一発で裏を突こうするボールが高安の頭を越えていくシーンが多々見られた。こびりついたマークを外せない。常に苦しい状況でボールを受けるしかなかった。右サイドの血流は詰まってしまう。後半になると幾分かタッチライン沿いを疾駆できるようにはなるが、波に乗りかけたところで交代を告げられる。代わりに入ったのは小林成光。その小林は緩急自在のドリブルで高安とはまた違ったアプローチの仕方でリズムを変え、流れを掴む一助となった。縦に急ぐことよりもアクセントをつけることを心掛けたことが奏功した。迎えた三菱水島FC戦。スタメンに名を連ねたのは、高安ではなく小林であり、1ゴール2アシストに加えて先制点の起点にもなるなど、気を吐いた。
高安が登場したのは後半32分。ベンチからの指示は、こうだった。
「守備をしてから、チャンスがあれば勝負しろ」
アタッカーに対して守備を課したのはフィールドプレーヤーがひとり少なかったからだった。反撃を食い止めながら「行けるところは行こう。思いっきり」と35、43分にクロスを供給し、38分にはドリブルからCKを獲った。だが、当然、満たされるはずがない。もやもや感は払拭されなかった。
「2回くらいは勝負できた。でも、まだ、物足りない」
トレーニングで結果を残し、試合で使ってもらうことで更にアピールし、次に繋げる。ぶつ切りにならないように、点を線にする努力を怠らなかった。だからこそ、刈谷戦での乏しいプレー内容に歯がゆさをおぼえた。「たら」「れば」を言い出したら切りがない。もしも刈谷戦で相手にとって厄介極まりない脅威と成り得ていたならば、ベンチに控えることはなかったかもしれない。
ポジションを争う小林が先に目に見えるカタチでの結果を残した。負傷離脱している星大輔は柱谷サッカーを熟知しており豊富な経験も有している。戦線に復帰してくれば、高安に先発機会が巡ってくる可能性は低くなる。ジョーカーとして重宝はされても。
「スタートからやりたい。その思いは強い」
キックオフの笛をピッチで聞く11人に選ばれるために、サバイバルを勝ち抜くのに、猶予はそれほど残されていない。瞬間、瞬間の競争を制し、強烈なインパクトを植えつける必要がある。
スタミナが切れることなど全く怖くなかった。むしろ、体力を温存して持ち味が発揮できなくなることを恐れた。足が悲鳴を上げるまで攻守に全力を尽くす。試合後、後悔しないためにも。並々ならぬ決意で臨んだ一戦。序盤から高安の群を抜くスピードにマッチアップしたDFはきりきり舞いになる。繰り返される縦へのドリブル突破。貪欲に勝負を仕掛けたことで、チームに推進力をもたらす。ゴール、アシストを記録するには至らなかったが、数多のFK、CKのみならずPKまで獲得したその存在感は際立った。不安材料に挙げていたスタミナは途中で切れてしまったが、猛烈なアピールはその後の出場時間を増やし、シーズン後の契約に結び付いた。人生を懸けたといっても過言ではない試合で見事に結果を残した。教師と並ぶ幼き頃からの夢であるプロ契約を自らの手で勝ち取った。そんな思い入れのある試合だからこそ、「スタートからピッチに立ちたかった」。誰よりも強い気持ちを抱えていた。しかし、スタメン表に高安の名前はなかった。
今季初出場、初先発したFC刈谷戦、チームの低調なパフォーマンスと同調するように高安は埋没してしまう。右ワイドの高安を軸に攻撃を組み立てる戦術が裏目に出てしまった。
「左で作ってからボールをもらえればチャンスになっていた。個の力で行くのは難しかった」
そう振り返るとおり、個の力で打開できる以前の問題、つまりスピードを生かせるスペースが全くなかった。一発で裏を突こうするボールが高安の頭を越えていくシーンが多々見られた。こびりついたマークを外せない。常に苦しい状況でボールを受けるしかなかった。右サイドの血流は詰まってしまう。後半になると幾分かタッチライン沿いを疾駆できるようにはなるが、波に乗りかけたところで交代を告げられる。代わりに入ったのは小林成光。その小林は緩急自在のドリブルで高安とはまた違ったアプローチの仕方でリズムを変え、流れを掴む一助となった。縦に急ぐことよりもアクセントをつけることを心掛けたことが奏功した。迎えた三菱水島FC戦。スタメンに名を連ねたのは、高安ではなく小林であり、1ゴール2アシストに加えて先制点の起点にもなるなど、気を吐いた。
高安が登場したのは後半32分。ベンチからの指示は、こうだった。
「守備をしてから、チャンスがあれば勝負しろ」
アタッカーに対して守備を課したのはフィールドプレーヤーがひとり少なかったからだった。反撃を食い止めながら「行けるところは行こう。思いっきり」と35、43分にクロスを供給し、38分にはドリブルからCKを獲った。だが、当然、満たされるはずがない。もやもや感は払拭されなかった。
「2回くらいは勝負できた。でも、まだ、物足りない」
トレーニングで結果を残し、試合で使ってもらうことで更にアピールし、次に繋げる。ぶつ切りにならないように、点を線にする努力を怠らなかった。だからこそ、刈谷戦での乏しいプレー内容に歯がゆさをおぼえた。「たら」「れば」を言い出したら切りがない。もしも刈谷戦で相手にとって厄介極まりない脅威と成り得ていたならば、ベンチに控えることはなかったかもしれない。
ポジションを争う小林が先に目に見えるカタチでの結果を残した。負傷離脱している星大輔は柱谷サッカーを熟知しており豊富な経験も有している。戦線に復帰してくれば、高安に先発機会が巡ってくる可能性は低くなる。ジョーカーとして重宝はされても。
「スタートからやりたい。その思いは強い」
キックオフの笛をピッチで聞く11人に選ばれるために、サバイバルを勝ち抜くのに、猶予はそれほど残されていない。瞬間、瞬間の競争を制し、強烈なインパクトを植えつける必要がある。