スポーツライター・オオツカヒデキ@laugh&rough

オオツカヒデキは栃木SCを応援しています。
『VS.』寄稿。
『栃木SCマッチデイプログラム』担当。

『聞こえてこない』@栃木SC通信

2007-05-30 23:52:09 | 栃木SC
白旗を揚げてしまったのだろうか。試合の感想、選手個々の評価、戦略、土壇場で追い付かれドローに終わったことによる謝罪の言葉は聞かれた。しかし、最後まで「優勝」という2文字は高橋監督の口から出てこなかった。「準加盟クラブ」「なにがなんでもJへ」保持している権利と昇格に対する意気込みは囲み取材の所々で口にしたが、最大の目標に関しては触れなかった。こちら側があえて突っ込まなかったということもあるのだろうが、「優勝が厳しくなった」とさえ言わなかった。

アローズ北陸戦から始まった怒涛の7連戦。勝ち点1を分け合ったホンダFCとの最終戦を終えての戦績は1勝3敗3分け。大きく負け越した。その過程で上積みできたのは勝ち点6だけ、喪失した勝ち点15は引き離された首位・佐川急便SCとの差(勝ち点12)に等しい。もたつく間に佐川急便SC、FC岐阜、ロッソ熊本のトップ3には水をあけられた。完全に頭ひとつもふたつも抜けだされてしまった。前期13節終了時点で昇格圏内の4位に位置しているが、8位・アローズ北陸とは勝ち点で2しか離れておらず、1敗しただけで簡単に順位は引っくり返る。安閑とはしていられない危機的状況下に置かれている。

僅か13試合で絶望的ともいえるリードを奪われた。黄色信号というよりも、既に赤信号が灯っている。「優勝」するには。「あくまでも目標は優勝」とは言えない心中は察する。だが、最終的な到達点を下方修正するには、時期尚早ではないのだろうか。望みは薄いかもしれないが、上位陣が足踏みする可能性がないわけではない。栃木SCが苦しんでいるように佐川も、岐阜も、ロッソも必ず落ち込む時期が来る筈だ。このまま突っ走るとは思えない。だからこそ、指揮官には現実的には困難な数字が突きつけられていようとも「優勝」を絶対に諦めて欲しくはない。安易に「4位以内」など狙ってもらいたくはない。それは、フロントも同様である。「4位以内」などといった声も聞こえてくるが、嘲られようと構わないではないか。例えば「優勝を成し遂げるために新たに選手補強をした」と言ってしまえばいいのだ。言葉の力は強い。公言することで勝機が巡ってくることも十分に有り得る。何が起こるか分からないではないか。

人間、いったん低いところに構えれば、ズルズルと落ちていくだけである。あくまでも「優勝」の先に「J2昇格」があることを忘れずに今後も戦っていかなければならない。現実を直視しなければならない時も来るだろう。でも、まだシーズン前に描いた理想を引っ込めるには早過ぎる。ここまで今季のJFLを戦ってきたことから身に染みていることだろうが、4位を確保したまま最後までやり過ごせはなしない。志しを高く持たなくてどうする。

西川吉英は固く誓った。「最後まで諦めたら、戦うことをやめたら負けを受け入れることになる。可能性がある限り戦っていく」。


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