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《書評》共産主義の系譜(猪木正道)

2018年06月26日 | 書評


共産主義の系譜というタイトルどおり、マルクスからユーロコミュニズムまでの共産主義の歴史を概観した本である。この本を読むと、マルクス主義の変転メカニズムがよく理解できる。マルクス主義は精密な経済学に裏打ちされた革命の必然性と、革命的祖国愛に基づく主意性を内包しており、両方ともが革命成就のための重要なエレメントであることは論をまたない。しかし資本主義国家が安定期に入り中産階級が多数を占めると、革命の必然性は革命を彼岸へと追いやる詭弁になり代わり、改良的で議会主義的な修正マルクス主義が幅を利かすようになる。一方で貧しい労働者農民が多数を占める半封建国家では、革命の切迫性が現実のものとしてあるが、民衆の意識が立ち遅れているため革命家の主意性が要求される。ここで問題になるのが、マルクス主義は資本主義が高度に発達した社会の中で自己の歴史的使命に覚醒したプロレタリア階級による革命を前提としており、マルクス主義の適応に地域的かつ時間的ズレが生じることだ。革命党派と革命を成功させた国家は生存本能に従い、半封建国家で成功した土着的マルクス主義と党秩序を普遍的善として措定するため、いよいよズレは固定されたまま○○主義と権威づけられ各国に輸出される。共産主義者、社会主義者を名乗る者同士が、「反革命」「裏切り者」と罵り合う原因はここにあり、けっして指導者の性格や野心による変節ではない。一個人としてこの流れと構造を理解していないと、党派や国家の論理に振り回され消耗することになる。このズレを止揚するには、世界人口のプロレタリアートと資本家への二分化と、従属関係のないインターナショナリズムの復権しかないと思われる。

なお著者の猪木正道氏は防衛大学校長も務めるなど基本的に反共スタンスの人なのだが、本書を読むとマルクスに対する愛憎半ばの感情が露出しており興味深い。一読して理解されると思うが、本書に込められた熱量と密度は尋常ではない。その捻じれた感情ゆえにか、フォイエルバッハまで遡りマルクス主義の実像に肉薄できた稀有な書物である。



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