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吉祥寺でクレープというとマリオンが有名だろうか。
渋谷や原宿で日本で初めてクレープを販売した店としても知られた存在。井の頭公園に向かう途中、丸井の横のベンチで食べたなんて人も多いと思う。
それはそれとして良いのだが。その駅の反対側、人が行き交う商店街の傍をちょいと入ったビルの谷間。
この素晴らしき大衆クレープ店はひっそりとある。
40年前、パリに居たおかみさんが紆余曲折あって始めたと店だという。
日曜日。開店前だというのに既にちょっとした行列ができていた。そこに並び、順番に作られるクレープを眺めながら待つコトに。
直径40㎝近くはあろうかという大きな台の上で焼かれる生地。
その上には、おいおいどんだけ盛っちゃうのよ!と思わず突っ込みたくなる量の具が乗せられて。
そう、手渡されたクレープを持った瞬間の充足感(笑)
そしてもちもちとした生地がすさまじくうまい。
この生地が全体を引き上げていると思う。
お腹いっぱいになるように。と40年前パリで食べた大きなサイズそのままに。
子供もお小遣いで買えるように。と200円台から。
うまくて。安くて。大きくて。
見渡す限り大手チェーンが軒を連ね、すっかり魂の抜け落ちたかのように見える吉祥寺の町の片隅に
しっかりと根を張るソウルフードである。
さて、順番が回ってきた。
次男のチョコアーモンドクリームにアイストッピングはクレープにあるまじきふくらみをたたえていた。
かみさんのツナレタスもたっぷりどっしりうまい。
そして自分はラムレーズン。甘さを控えラムの香り高いぶどう。バターの香りと塩気が相まって、さながらレーズンバターでラムを飲ってる感覚に陥る。
そんなオトナの味が用意されているという点も実に素晴らしい。
周りで食べているみんなの笑顔は、食べ物の本質を現していた。
それは開店前から絶えることのない注文に休みなくクレープを焼き続けるおかみさんがいるからで。全く頭が下がる思いだ。
その大変な労働を支える40年前パリで食べたクレープへの思いが、吉祥寺の小さな路地のビルの谷間を明るく照らしていた。
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