DK大衆食の旅3

路麺好きがそんな感じで巡る大衆食の旅。

ナスのじり焼き@DK亭

2016年08月19日 | DK亭
ナスのじり焼きは、北関東の消えていった郷土食だと位置付けていいだろう。
埼玉の籠原、群馬の新町にそれぞれ疎開していた両親から教わった料理であり、戦中戦後の貧しかった時代を、生き抜くために生まれたんだと思う。



子供の頃、親に聞かされたのは、当時そこにあった食べ物は、北関東をぎらぎらと照らす夏の陽射しが育てたキュウリ、ナス、トマト。キュウリ、ナス、トマト。どこまでいってもそれだけだったという。
そして小麦粉。これは地場のものなのか、それとも例のGHQが配給したものなのか、定かではないのだが。

その大量に畑になるナスを細く切って溶いた小麦粉と混ぜてフライパンで焼いた、たったそれだけの料理が茄子のじり焼きだ。



自分は子供の頃、時々食卓に上がるそれを何気に気に入っていた。

その事を大人になってから親父に話すと、親父は見るのもいや。なんだそうだ。
朝昼晩の食卓に、おやつにまで登場したじり焼きは、もうトラウマみたいなもんだそう。

そんなトコロも消えていった理由のひとつなのかも知れない。



当時作って貰ったのはもっとぼてーと衣の多いヤツだったが、今回は薄衣で。ごま油で表面はかりっと。火の通ったナスはとろっと。



辛味噌を混ぜた醤油をどっぷしつけ、ごはんの上にバウンドさせた後、そのごはんごとかっこむ。そう、ちょうど焼肉でごはんをたべる要領である。

独りで食っていると、子供達が食べたいと寄ってきた。

これまでも何度か作って食べさせた事はあったが、今回、少し大きくなった子供達に、このナスのじり焼きの生い立ちも話してみた。

するとどうもじいじが、見るのもいや。と言ったトコロが気になってしまったらしく、しきりに、これ好きだよ。また作ってよ。との事。
まだ少し難しかったのかもしれない。

だが、まあ良い。

時代のうねり、人の流れの中で生まれた、この北関東の郷土食が、そんな訳で我が家の中でそっと受け継がれている。なんとなくそのことが大切なような気がしている。



















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