
雹と雪でレースが一時中断されたパリ〜ニースの第4ステージは先行するヴィンゲゴーをジョアン・アルメイダがフィニッシュ手前で抜くという驚きの勝利を挙げています。この日、寒さにやられた感のあるヨルゲンソンが少し遅れてゴールしたため、総合首位にはヴィンゲゴーが立つことになりました。

それにしても登りゴールの1㎞を切ってから先行したヴィンゲゴーが敗れるのは初めてみました。相手はポガチャルではなくアルメイダなのです。この敗因はおそらくフロントシングルギアにあった可能性が高いと思っています。昨年のツールでも終盤の山岳ステージでもフロントシングルを選択していたヴィンゲゴーですが、今年はクランク長も短くしているのです。

ヴォルタ・アオ・アルガルベの個人TTでは150㎜のショートクランクを使っていたヴィンゲゴー。ただ、山岳ではフロントはWを使っていたのです。それをこのステージではフロントシングルを選択して、敗れているのです。勿論、昨年のツールの後半はポガチャルに完敗しています。

ヴィンゲゴーはポガチャルに勝つために色々な試行錯誤をしているように見えます。ショートクランクの使用はその典型でしょう。それにしても150㎜というのは特殊過ぎます。ショートクランクのメリットはケイデンスを上げ易くなることですが、その一方でトルクを掛け辛くなるというデメリットもあるのです。TTのようにケイデンスが一定なレースには向いているのかもしれませんが、スピードの上げ下げが多い山岳ステージでは必ずしも有利とは限らないのです。しかもシングルチェーンリングとの組み合わせなら尚更でしょう。

このステージでヴィンゲゴーは最後の1級山岳ラ・ロッジュ・デ・ガルド(距離6.7km/平均7.1%)で、バーレーン・ヴィクトリアスのレニー・マルティネスのアタックに反応する形でしたが、高いケイデンスを維持しながら、残り2km地点でマルティネスを引き離します。誰もがこのままゴールまでヴィンゲゴーが行くものと思ったはずです。ところが、残り1㎞を切り、ゴールが目の前に迫る中、追走集団からアルメイダが飛び出し、ゴール50m前でヴィンゲゴーを抜き去ったのです。こうしたゴール前スプリントにフロントシングルにショートクランクではトルクが掛けられなかったことがヴィンゲゴーの敗因でしょう。

相手はポガチャルでは分からなかったのですが、UAEのセカンドエースのアルメイダにも負けてしまったことで、逆に明らかになってしまったのかもしれません。チームの戦略にも関わるので、ヴィンゲゴーはクランク長やフロントシングルには全く触れませんが、今後のレースでは見直しも含めて考えなければいけないかもしれません。

今流行りとなりつつあるショートクランクですが、トルクをケイデンスで補うことになる為、やはり適正値があると思っています。ハイケイデンスで回すことを考えても100rpmを超えることは、余程心肺機能が高い人でなければ現実的ではありません。ハイケイデンスと呼ばれているポガチャルでさえ、100rpmを超えるのはアタックする時だけなのです。プロントン内では90rpm代が普通なのです。

TTのように距離が短いレースではハイケイデンスを維持出来ても、200㎞近く走るロードレースでは極端に短いクランクはむしろマイナスになりかねないのです。ポガチャルの適正値は165㎜なのですが、誰もが同じではないことは知っておく必要があると思っています。まして、150㎜というショートクランクは諸刃の剣になりかねない代物なのです。
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