
私が初めて手にしたロードバイクはGIANTのTCR2で当時10万円ほどでした。今から20年ほど前の話です。CAAD10のフレームセットの価格が148,000円した時代でした。驚きなのが現在のCAAD13のフレームセットが165,000円だということです。20年前と比べ2万円ほどの価格UPで据え置かれているからです。これが、リムブレーキモデル用なら129,000円と逆に20年前より安くなっているのです。アルミの原材料価格が上がっていることを考えると、フレームの価格は材料費より研究開発費が大きいことが分かります。

先ほどSupersix EVOの価格が上がったと言いましたが、cannondaleは今回の価格改定に合わせてStd-Modのフレームセットの販売を開始しています。価格は290,000円です。私が購入した時の価格から逆算したフレーム価格が22万円程度でしたから、同じフレームなのでかなりの値上げの影響を感じてしまいます。

私が初めてロードバイクを購入した頃は、カーボンロードは30万円以上で、アルミロードなら10万円代という時代でした。そんな時代にCAAD10は特別で、フレームセットが148,000円、完成車は20万円と高額な製品でした。それでも、CAAD9まではHANDMAID IN USAを謳っていたcannondaleもCAAD10からは生産拠点を台湾に移します。CAAD10がアメリカで生産されていたら価格はとんでもないものになっていたはずです。

最初のロードバイクにGIANTのTCR2を選んだのは単純に価格でした。ただ、実際に乗り始めると満足が出来ず、TCR2を購入した年の冬にはCAAD10のフレームセットを購入してしまったのです。コンポは10速ですがULTEGRAをアセンブルし、結局、25万円以上の出費となりました。それでもCAAD12が発売されてからもCAAD10に乗り続けていたほど良いバイクで、今でもローラー台で使用し続けているのです。

フレームセット価格が165,000円のCAAD13も105DISK完成車の価格は290,000円とアルミロードとしては依然として高額な製品になっています。GIANTのカーボンロードと数万円程度の差なのです。それを考えるとフルカーボンで最新エアロの第4世代Supersix EVOが399,000円はむしろ異常に安かったと考える必要があるようです。シマノのコンポを始めとする各種パーツの値上げも完成車価格の上昇に拍車をかけています。

個人的にも第3世代のSupersix EVOを所有していたので、第4世代のSupersix EVOの価格が今の445,000円だったら、おそらくTREKのMADON SL5を購入していたかもしれないのです。これは、私のような高齢者の考え方で、所得の低い若い世代の人にはカーボンロードは高嶺の花なのかもしれないのです。

カーボンロードもトップグレードは200万円を超えるものも多く、誰もが手の届くものではありませんが、フレーム形状が同じでカーボン素材やパーツ類の質を落とした下級グレードでも50万円程度というのでは、私でも考えてしまいます。

ですから、若い人は背伸びをせずにアルミかクロモリでも良いので、まずはロードバイクの世界に飛び込んできて欲しいと願っています。クロスバイクでも7万円もしてしまう時代ですから、若い人が手軽に買える製品ではないかもしれませんが、自転車通勤に使い交通費を浮かせるなどの工夫をすれば、初任給が30万円を超える時代に入りつつあることを考え合わせれば、決してロードバイクは手に出来ない商品ではないとも思っています。

問題は若い人たちがロードバイクのメリットや楽しさを知る機会を増やすことだと思っています。そこがこの国のスポーツ自転車普及の最大のネックになっていると考えているからです。先日のロンド・ファン・フラーデレンでやパリ~ルーベの観客数や熱狂を観てしまうと、正直、この国では厳しいのかなあと思ってしまうのです。

ただ、この国は国土の約7割が山間地で、海にも囲まれていて、四季もありスポーツ自転車を楽しむには最適な国なのです。自転車の聖地に瀬戸内しまなみ海道があります。ここでは「サイクリングしまなみ」という大会が定期的に行われていますが、2024年における総合的な経済効果は5.2億円と試算されているそうです。事業費は3.6億円ほどで、大きな経済効果を生んでいます。バイクメーカー単体としてではなく、こうした地域や自治体を巻き込んだ仕組みが必要なのかもしれません。

私が暮らす北海道は広大な大地に広い道路が多く、スポーツ自転車で走るのに最適な地域なのですが、ツール・ド・北海道での選手の死亡事故を受け、今年の大会も中止になっています。これは大会側の警備上の不備で、コース内に車両が侵入したことが原因でした。こんな事故があると、ますますスポーツ自転車は危険だと思ってしまう人が増えてしまうでしょう。せっかく良い舞台があるのに、演出の不手際で芝居を台無しにしてしまった感じです。

スペシャライズドは日本ハムファイターズの球場がある北広島にエクスペリエンスセンターを開設し、憧れの最高グレードロードバイク「Tarmac SL8」を含む、50台以上の試乗車を常時取り揃え、最大7日間レンタル可能にしています。こうした試みはロードバイク初心者には有難いサービスでしょう。
個人的にはロードバイクのサブスクがもっとあっても良いのではと考え始めているところです。ただ、今の自転車のサブスクにはロードバイクが圧倒的に少ないのも事実です。価格が高いロードバイクのサブスクには大きなリスクが伴うからだと思いますが、実際にロードバイクのサブスクを始めているショップも出てきています。神奈川のちばサイクルはTREKのDomane AL2のサブスクを始めています。ただ、こうしたショップが少ないことも事実なのです。