
世界アワーレコードホルダーにシクロクロスの世界チャンピオン、MTBの金メダリストという超豪華メンバーが揃ったティレノ・アドレアティコはクイーンステージを迎え、UAEチーム・エミュレーツのフアン・アユソが勝利し、ようやくリーダージャージに袖を通すことになりました。UAEに新たなエースの誕生の予感が漂います。

今年のティレノはイネオスのフィリッポ・ガンナが絶好調で、初日の個人TTからずっとリーダージャージを守り続けていたのです。登りもこなせる新ガンナの登場です。今季は身体も絞り、トラック競技ではなくロードレースにシフトしてきたのかもしれません。

対するアユソは個人TTで好走を見せるも、新ガンナの強さの前に2位キープを強いられ、なかなかトップに出ることができませんでした。ただ、今年のアユソは調子も良く、余裕をもって走っている感じがしました。好調のデルトロやベテランのマイカ等のアシストも大きいのでしょう。

最後のフォロンティニャーノの登りに入り、デルトロの牽引で集団がばらける中、アダム・イエーツのアシストを待つことなくアタックを開始したアユソに付いて行けたのはピドコックとヒンドレーだけで、ようやくガンナを振り切ることに成功します。残り3.3㎞地点でピドコック等を振り切り独走になり、クイーンステージを征しリーダージャージを手にすることに成功しました。

今季はここまでワンデーレースで3戦2勝と好調さを見せていたのですが、個人TTでガンナに敗れた後も落ち着いてチャンスを伺うような冷静さも見せていたので、ポスト・ポガチャルの最有力候補がようやく一皮むけた感があります。昨年は初日のTTでリーダーに立ちながら第5ステージでヴィンゲゴーに独走を許し、総合優勝を逃していたのです。

ヴィンゲゴーがヨルゲンソンと共にパリ~ニースを選んだことで、一躍優勝候補の筆頭に名前が挙がったアユソでしたが、実力があることも十分証明できたのではないでしょうか?今日のステージは集団スプリントになりそうなので、横風分断や落車などのアクシデントが無い限りアユソの総合リーダーは変わらないはずです。ただ、今年はポガチャルやヴィンゲゴーにも落車があるので、油断は禁物です。チームにはアダム・イエーツやラファウ・マイカといったベテランが脇を固めているので、万全な位置取りでエースを守るはず。そこはポガチャルで培ったノウハウがあるチームなのですから。

昨年まではツール・ド・フランスへの拘りが強くあったようですが、今年はおそらくジロ・デ・イタリアでエースを担うことになるはずです。スペイン人のアユソですが、春先の成績を見る限り寒さにも強い印象があるのです。今年パリ~ニース組が寒さに苦戦していることを考えると、チームを入れ替えていても面白かったのかもしれませんが、そもそも今年のジロはアユソがエースと決まっていたからこそのスケジュールだと思っています。

今年はストラーデビアンケでポガチャルが、パリ~ニースではヴィンゲゴーが落車し、レムコ・エヴェネプールも昨年の大怪我から回復中なので、今後の勢力図が大きく変わる年になるかもしれません。これまではログリッジとヴィンゲゴーのWエースで3大グランツール完全制覇で最強時代を築いたユンボ・ヴィスマの黄金時代を超えるUAE時代が到来する予感がしています。