特殊な舞台で行われるパリ~ルーベでは機材が勝敗を分けることも少なくありません。ここのところファンデルプールで連覇しているのがCANYON AEROAD CFRです。しかもフィリップセンとの1・2フィニッシュという結果は単なる偶然とは思えません。先日、日本でも発売が発表された「テンソルエディション」に注目しています。これは実際にファンデルプールやフィリップセンがパリ~ルーベで使用したバイクなのです。

CANYONのデザインエンジニア、ルーカス・ビアは「パリ〜ルーベはロードバイクにとって最高の試験場だ。滑らかな舗装路ではバイクに大きな負荷はかからないが、石畳のような荒れた路面では、強烈な衝撃が断続的にフレーム全体に伝わる。これにより、レース中にヘッドセットやシートポストクランプなどが緩む可能性があるため、あらゆる状況下で安全性を担保できる堅牢な設計が不可欠となる。このような極限の条件に耐えられるバイクならば、他のいかなる状況でも確実に性能を発揮できると確信している」と語っています。

且つてはスペシャライズド等がパリ~ルーベ用に専用バイクを制作していた時代がありました。ただ、ディスクブレーキの普及とエアロ化の流れの中で、パリ~ルーベに特化したバイクはエンデュランス系へと移行して行ってしまいました。やはりレースではエアロ効果は無視出来ない大きな要因なのです。

AEROAD CFRは第4世代へと進化し、パリ~ルーベを連覇しているという事実は大きいと思っています。勿論、ファンデルプールの強さもあっての結果という見方もありますが、2年連続して2位に同じバイクのフィリップセンが続いているのです。しかも、昨年はTOP10の3台がAEROAD CFRだったというのは偶然では無いはずです。

登りでは分のあるコロナゴのV4Rsですが、パリ~ルーベでの優勝実績が無いのは気がかりです。V5Rsのテストバイクが注目を集めていますが、流石にいきなりの投入は無いでしょう。ただ、エースのポガチャルが参戦していない状況でしたから、これまでのデータはあまり意味が無いのかもしれません。

今年の注目は昨日の女子のレースで驚きの走りを見せたヴィスマ・リアースバイクのサーベロのS5でしょう。フェランプレヴォはSRAMのフロントシングルにタイヤの空気圧を走りながら調整出来るハブを使用していたからです。同じバイクを使用するファンアールトも同じシステムを利用して来るのかに注目しています。

ただ、ここ数年のポガチャルを見ているとENVEのホイールやハンドル、さらにはコンチネンタルのタイヤを上手に使いこなしている印象が強いのです。今年はサドルをプロロゴからフィジークの3Dプリントサドルに変更しています。サドルがパリ~ルーベの秘密兵器にはなり得ないのですが、ポガチャルはトータルでバイクのバランスを上手く取っているという印象が強いのです。165㎜のショートクランクも然りです。

ただ、昨年発表された最新エアロロードのY1Rsに関しては、チーム内からも乗り心地が悪くパリ~ルーベでは使えないという意見が出ていると聞きます。勿論、パリ~ルーベでは使われることも当然ありません。AEROAD CFRも初めから今の性能があった訳ではないのです。今回の「テンソルエディション」でも分かる通り、CANYONは長年に渡りパリ~ルーベでのデータを集め、フレームのどこにどのくらいのカーボンをどのような向きで配置するかを考え抜いたようです。

勿論、他のメーカーもデータは集めているはずで、少なからずフレーム設計に反映されているのですが、CANYONが一歩リードした感じなのです。ただ、女子のレースを観る限り、AEROAD CFRを乗りこなすにはそれなりのパワーが不可欠で、パワーで劣るライダーにとって必ずしもプラスに働くとは言い切れないと思っています。 女子のレースではエアロと軽量化を併せ持つバイクが優位という実情もあるようです。女子は圧倒的にスペシャライズドが強いという結果なのですから。
ともあれ、ポガチャルが初めて走るパリ~ルーベはいよいよ今夜スタートします。初出場のツール・ド・フランスでいきなり総合優勝をしてみせた怪物がさらに進化し、歴史あるパリ~ルーベまで勝ってしまうのか、マチューが3連覇を果たすのか、ワウトの復活はあるのか、とにかく見所満載のレースになることは間違いありません。