『疾走』
誰か一緒に生きて下さい。
■監督・脚本 SABU
■原作 重松 清(「疾走」上・下)
■キャスト 手越祐也、韓英恵、中谷美紀、豊川悦司、大杉 漣、寺島 進
□オフィシャルサイト 『疾走』
“沖”と“浜”という2つの地域が存在する西日本のとある干拓地。“浜”の人々は“沖”を蔑み近寄ろうとはしなかった。 “浜”で両親と優秀な兄と暮らす心優しい少年シュウジ(手越祐也)は、幼い頃、そんな“沖”のヤクザもの、鬼ケン(寺島 進)とその愛人アカネ(中谷美紀)に助けられたことがあった。 やがて中学生になったシュウジは、同級生のエリ(韓英恵)に恋心を抱く。 両親を自殺で失い、孤独な彼女は“沖”にできた教会に出入りしていた。 シュウジは親友の徹夫とその教会に通うようになり、次第に神父やエリとも交流を深めていくのだが…。
おススメ度 ⇒★★ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★☆
いま、重松 清氏の作品にはまっていて、最近ずっと読んでいます。 この「疾走」が映画化されると聞いて、劇場で公開される前に読まなければと思いつつ、上・下巻あるのでちょっと早い目に読まないと間に合わないかなぁと思って読み始めたところ、すっかり虜になってしまった作品です。
こんなに主人公たちがインパクトがあり、しかもかなりグロい場面も多いので、これを映画化するのは難しいのではと思っていました。
話の中心にいるシュウジ。 このシュウジ役を手越祐也クンが演じたのですが、原作にある無機質な彼を演じるには無理があったように思います。 年代的には近いかもしれませんが、役者としての資質はあまりないような気がします。 もっともこの役に抜擢され、この原作が持つ意味を彼なりに考え、それを表現する才能を持ち合わせないというのが実感でしょうか。 つまりもっと刺々しくキレやすい、人間としてもやや平衡感覚をなくしつつある思春期の少年を演じるには、彼の理解するシュウジとはかけ離れたものになっていた。
SABU監督は脚本も手がけ、この途方もない、ある意味方向の定まらない、落としどころと人間模様を、どちらかといえばモノトーンの世界に血の赤だけが目立つような、少し錆びた匂いのする人間関係を、どんな風に描いてみせるのか楽しみだった。 いつも新しい視点と、彼なりの変化球で観る者を楽しませてくれるのだが、この作品はハッキリ言って残念なものになった。
というよりは、原作のカラーが凄すぎて、とてもどんな役者を持ってきても難しい作品であったことは事実だ。
ユリ(韓英恵)にしても、アカネ(中谷美紀)にしても鬼ケン(寺島 進)にしても、新田(大杉 漣)にしてもちょっとイメージが違う。 原作を読んでいない人がこのキャスティングだけを見たら、きっと観たいと思うのかもしれないが、恐らく原作を読んでいる人なら、無理があるキャスティングだと思うに違いない。
神父役の豊川悦司は悪くはないのだが、その長い髪型には何か意味があったのか? 不思議な感じだ。
重松作品の中でも極めて人間として対極にある人間同士、そして究極の選択肢、それは“死”である。
「人を殺めた者は、つまり自分を殺してしまっている」、のだと。 原作はそれをベースに展開しているものだと僕の中で消化している。
原作は二人称で主人公を語っている。 重要なのはこの映画化についてはしっかりしたストーリーテラーを置くべきだったと思う。 抑揚もない、濶舌の悪い人間に語らせたのだろう。 解せない・・・。
SABU監督で思い出した。 あのテンポのある映画を、今大ヒットしている『ALWAYS三丁目の夕日』に出ている堤真一氏は、このSABU監督の作品に出て頭角を現して来たことを。
ちょっと年齢差はあるかもしれないが、シュウジ役は勝地 涼クンで観てみたかったなぁ・・・。
今回の「疾走」は辛口の評価のようですね。僕は原作を読まない状態で映画を観たので、素直に良かったなと思うことができました。今、原作を読んでいますが、原作の中のシュウジの複雑な心情を映像として表現しきるのは難しかったと思うので、今回の映画の手越は良かったのかなと個人的には思います。かえって変に演技が上手すぎる俳優さんが演じるよりも、素直にシュウジの感情が伝わってくる感じで良かったのではないかなと思います。
原作をお読みになる前に観られたほうが良かったと思いますね! 原作のシュウジに出会ってしまうと、このカラーを表現できる役者のチョイスは難しいと思います。
ただNEWSのイメージを引きずるなら、全くオーディションで選考することも一考できたのではないかと思います。
>原作に興味が湧きました
この少ない人間の、その人間模様が映画では表現しきれていないと僕は思うのです。
是非時間があるときに原作を読んでみて下さい!
シュウジの心理状態は映画ではわからないところにあると思いますので^^
この映画、観たかったんです。でも、原作、とっくに読破してしまっていたから、cyazさんのレビュー、拝見できてよかったかも。重松氏にしては、かなり強烈な世界でしたから。<原作。
SABU監督も好きなんですけど、ここんとこ、ちょっと…かな? どのみち、映画には当分行けそうもないので、cyazさんのレビューを待ってマス!(びぇ~ん)(;_;)~~
>はや「頓死」寸前の自分です
う~ん、あんまり頑張りすぎないで、たまには映画で息抜きをして下さいね^^
>重松氏にしては、かなり強烈な世界でしたから。<原作
特に重松作品が好きで、この原作を読んでいる方には映画化をするのが大変なことは想像できると思います(笑)
SABU監督、覇気がないですねぇ・・・。
キャスティングは、原作が先だとどうしてもイメージができてしまいますよね。オニケンにせよアカネにせよ、外見がイメージできるよう書かれてましたから、たしかに読後では違う感じがでるし、読みながら「ああなるほど」と思いました。
私は手越くんのシュウジに違和感がなかったのですが、演技より、目の強さが印象的でした。
>久しぶりに読んだ重松清でしたが、このくらいガツンとくる話、いいですね
彼の作品の中でもこれほどインパクトの強いものはなかったですね!
>演技より、目の強さが印象的でした
それは感じましたが、まだまだ線が細いイメージでした!自分を殺した時のシュウジの生き様はもっと強烈であってほしかった・・・。
うーん、原作面白そうですね。
「原作を読んでから観るかどうか」というのはいつも迷うのですが、この映画に関しては読んでなくて正解だったのかもしれません。配役についてもそれなりに合点がいったし。
ということで、これから原作を読んでみます。
本年も宜しくお願い致します!