金山のまぼろし

全力で生きる!!

114 会社の新年会

2021-06-24 18:39:11 | 幻の走り屋奮闘記エピソード2

 

 

社内でのイベントは全て大歓迎の反対だ。

 

強いて言えば、一番マシなのが仕事だ。

 

僕はおかしいのだろうか‥?

 

会社には仕事をしに行っているのだ。

だから、版部の僕は版の製造に関することだけはしてもいいかな、と思っている。

 

特に嫌いなのが「僕たち仲間だよね。」という雰囲気作りだ。

 

仲が良くて仲間意識が出るならいいが、性格が合わなさそうなのに仲を良くして行こう、という動きは要らないし違和感を感じまくる。

それを僕の同僚たちは初期にやっていた。アーメン。

 

そして、みるみるうちに同僚たちは仲良くなっていった。

 

 

 

逆に嫌でも仲良くなっていかないとやっていけないのかもしれない。

 

そんな同僚たちも含め、会社の先輩たちも一緒に新年会を夕方から行うらしい。

 

勝手にやるがいい。僕を呼ぶな!

 

と思ったところでそんなことは不可能なので、参加することになっている。

 

正月休みが終わって、ハードパンチャーからのハードパンチ炸裂だ。

 

ギブアップ!と言いたいがファイティングポーズをとらされる。

 

CR-Xのスガシオ先輩や雑用専門の先輩の近くでお茶を濁したい。

 

間違っても同僚たちの中に入れてくれるな。

 

席が決まっていなかったら、その時はちゃんと周りを見て場所取りをしろよ、僕!

 

 

 

・・・

 

 

 

夕方の帰宅ラッシュに混ざり、なんとか太田市の南一番街の一角に僕は着いた。

 

皆集まっているようだ。

 

声を出すなら「やだなー。」しか出ない。

 

店内に入ると先に着いていた雑用の先輩が座っていた。

 

パワー感の無い先輩だが、とりあえず先輩の横に座った。

 

ぞくぞくと美人集団が入って来る。

 

それを見て「入ってきたぞ」と同僚たちがざわついていた。

 

同僚たちには気付かれないように、「空いてたから座っちゃいました」的な感じで顔もとぼけるように僕は座っている。

 

 

・・・

 

 

出来るだけ周りの人と話をしたくないので、考えた。

 

 

ずっと食べていれば、周りの人と話さない口実が出来る。

でも、すぐに目の前の出された食べ物は食べ終わってしまう‥。

 

仕方なく、ちびちび食べることにした。

 

一口で食べられる唐揚げも小柄な女性並みに少しづつ食べていれば、いつも口がふさがって話さなくていい状況が作れる‥。

 

 

・・・

 

 

宴もたけなわ、忍耐の時間は終わりお開きになるようだ。

 

社長 「坂本くん、2次会いくよな!?」

 

坂本 「はい、行きます!」

 

ざけんじゃねーよ!

 

 

社長は30代。僕たちが入る自社ビルを建てている。上り調子だ。

シラフでも顔が赤ら顔でテカテカ光っている、いかにもお金持ちそうな男性だった。

 

僕は雑用の先輩と同僚たちも混ざって社長のよく行くお店に歩いて向かった。

 

このまま僕だけY字に道を別れて歩いていきたかった。

 

 

・・・

 

 

店内は赤っぽく薄暗かった。

ソファーとローテーブルが並んでいる。

パブというところらしい。キャバレーとは違うのだろうか?

 

社長とその取り巻きの営業の人たちはその人たちだけのテーブルで、また他の先輩たちは部の集まりで、当然、僕は同僚たちと一緒のテーブルでくつろいでいる。

 

嘘でもいいからこういう時はくつろいでるっぽくした方がいいと思う。

 

僕の横には制作部のおばちゃんが座った。

 

おばちゃん 「今回の新入社員はイケメン揃いよね?」

 

坂本 「え?‥ああ、そうかもしれないですね。」

 

あえて正確に言うなら一番年上のFDに乗っているブロッケンさんはブロッケンジュニアに似ているのでカッコいいとは言えてもイケメンとは言い難いかもしれないな、と思った。

 

おばちゃん 「2次会は社長の奢りだそうだから、楽しんじゃってね。」

 

坂本 「うわー、そうなんですか。有難いですね。」

 

ちーん。

 

 

この苦行はいつまで続くのだろうか?

 

カラオケが始まり、同僚の元ハンドボール部のハンド君が美声で「オーマイ リトルガール」と歌いだした。

 

社長 「ハンドくん、上手いな!」

 

ハンド(間奏中) 「ちーっす!」

 

 

僕の心の中は オーマイ ガー! っだ!

 

カラオケは誰かの番かは知らないが、選曲中なのだろうか、シーンとしている。

 

 

僕は酔ったフリをして遠くの壁を眺めていた。

 

 

バシンッ!

 

何か濡れて冷たい物体が僕の顔に右側から飛んできた。

 

イテッ‥。

なんだ?

 

右の方を見ると社長が僕を見ていた。

 

社長 「おいっ坂本くん! 楽しんでるか!!」

 

坂本 「はいっ!」

 

右頬に残っている濡れたおしぼりの衝撃の余韻に気を取られながら、咄嗟に返事をした。

 

 

僕たちの席についていたホステスさんみたいな女性が僕を見た。

 

女性 「あら、この人カッコいいわね。」

 

ブロッケン 「ああ、こいつは顔は良くても、全然喋らないから、なー坂本。」

 

坂本 「あんまり喋んないっすね。」

 

ハンド 「坂本さん、酒入っても変わんねーな。」

 

坂本 「いや、沢山飲んだし、僕は酔ってるよ。」

 

 

南一番街の夜は深まっていった。