<おれの村には川島なお美がいた。
それからも、いっぱい恋をしていっぱいワインを飲んで、たまには牛を追い蚕と遊び、そして時々おれと、相撲もとった。おれが宇宙パイロットになるため東京にいくときは、ドン・ペリ二オンを開けてくれた。
村を飲み込み、村に飲み込まれ。九十四歳で精作兄に戻るまで確実に、川島なお美は、村で太り続けたのである。>
第三話「蚕谷村忌憚・なお美の夢」
最近、私はとあるコールセンターでアルバイトしている。
電話中顧客情報がパソコン画面に表示されるのだが、たまにその中に、芸能人と同姓同名の人もいる。本人だったらどうしようと少しドキドキする。
そんなわけで今日、本屋で『同姓同名小説』(松尾スズキ 新潮文庫)をみかけて購入してしまった。
芸能人と同姓同名の人を中心に繰り広げられる短編小説集。
兄が突然川島なお美になってしまったり、みのもんたが若者とアパートでだらだら過ごしたりする。上祐と麻原の話まで出てくるのには驚いた。
読者は登場人物のビジュアルやキャラクターを知っているので、その既存のイメージと小説の中のありえない姿を重ねて楽しめる。のだが私の場合、荻野目慶子や乱一世といわれても顔がピンとこない。彼らが主人公の話は普通の小説として読み、そしてなんとなく疎外感を味わった。
表紙のデザインは、新潮文庫の三島由紀夫作品の装丁(白地に、題名と著者名のみを大きくレイアウトしてある)の、題名の朱色を青に変えただけのもの。
「同姓同名」にかけたということなんだろうか。
でっかい字でみてみると、「松尾スズキ」という名前ってシュールだなとあらためて思う。
それからも、いっぱい恋をしていっぱいワインを飲んで、たまには牛を追い蚕と遊び、そして時々おれと、相撲もとった。おれが宇宙パイロットになるため東京にいくときは、ドン・ペリ二オンを開けてくれた。
村を飲み込み、村に飲み込まれ。九十四歳で精作兄に戻るまで確実に、川島なお美は、村で太り続けたのである。>
第三話「蚕谷村忌憚・なお美の夢」
最近、私はとあるコールセンターでアルバイトしている。
電話中顧客情報がパソコン画面に表示されるのだが、たまにその中に、芸能人と同姓同名の人もいる。本人だったらどうしようと少しドキドキする。
そんなわけで今日、本屋で『同姓同名小説』(松尾スズキ 新潮文庫)をみかけて購入してしまった。
芸能人と同姓同名の人を中心に繰り広げられる短編小説集。
兄が突然川島なお美になってしまったり、みのもんたが若者とアパートでだらだら過ごしたりする。上祐と麻原の話まで出てくるのには驚いた。
読者は登場人物のビジュアルやキャラクターを知っているので、その既存のイメージと小説の中のありえない姿を重ねて楽しめる。のだが私の場合、荻野目慶子や乱一世といわれても顔がピンとこない。彼らが主人公の話は普通の小説として読み、そしてなんとなく疎外感を味わった。
表紙のデザインは、新潮文庫の三島由紀夫作品の装丁(白地に、題名と著者名のみを大きくレイアウトしてある)の、題名の朱色を青に変えただけのもの。
「同姓同名」にかけたということなんだろうか。
でっかい字でみてみると、「松尾スズキ」という名前ってシュールだなとあらためて思う。