Cabin Pressure(脚本:ジョン・フィネモア 出演:ベネディクト・カンバーバッチ他)

イギリスBBCのラジオ・コメディ CABIN PRESSURE について語ります。

S3-2 パリ(前)

2013-05-01 06:10:50 | 日記
お待たせしました。シリーズ3の第2話 パリ です。

 ↓

この中で、ダグラスがいろんなバージョンを披露する「I told you so.」の韻を踏んだ言い回し。
「そう言ったでしょう」「だからそう言ったのに」「言わないこっちゃない」「ほらみろ!」
etc. etc. 考えましたが、韻を踏もうとすると、下手な訳がさらにひどくなってしまうので、
原文のまま掲載しています。
いつか、良案が浮かべば(浮かぶかな?)、改訂版を作成します。

それでは、どうぞ!


 ↓


(テーマ曲)
  今週は 「パリ」


アーサー: ♪Happy Birling Day to us! Happy Birling Day to us! ハッピー・バーリング・デイ、マーティンとダグラスとアーサー♪
マーティン:分かった。アーサー。もういいよ。
アーサー: ハッピー・バーリング・デイ!
マーティン:アーサー!
アーサー:ごめんね。僕、バーリング・デイが大好きなんだ。きみはどう?
マーティン:好きじゃない。単に高いチップをくれるからって、おかしなじいさんにこびへつらうためにパイロットになったわけじゃないんだ。
ダグラス:なら、しなければいい。
マーティン:うん。でも不幸なことに、僕はそれが不要になるくらい稼いでいるパイロットじゃないからね。
(ドアが開く)
キャロリン:あら、ダグラス。バーリング・デイのために早起きしたのね。
ダグラス:やあ、キャロリン。お互いにね。
キャロリン:今回は勝てないわよ、ダグラス。
ダグラス:興味深い理論だが、私が代案を提示しよう。今回、私は勝つよ。
キャロリン:あ、でも、、
ダグラス:私の理論は以下の前提から成り立っている。ひとつめ、私は毎回勝っている。ふたつめ、今日が今回で、みっつめ、私は今回勝つ。
アーサー:それってウイスキーのことだよね?
キャロリン:ええ、アーサー。これは一本200ポンドする、25年もののタリスカー・シングル・モルト・ウイスキーのことです。私がバーリングさんのリクエストに答えて、彼のためだけに買ったボトル。ここにいるダグラスには、一口たりとも飲ませません。
ダグラス:それは事実だ。自分で飲む気はない。売るだけだ。
キャロリン:どちらもできませんよ、どろぼうさん。理由を教えてあげるわ。今回のバーリング・デイでは、ウイスキーは常にしっかりと見張られているのよ。
ダグラス:ほう。ついにきみが同行するのか。それは確かにちょっと面白くなるな。
キャロリン:いいえ、私は行きません。バーリングさんと20分以上一緒にいたら、私はネクタイで彼を叩きかねないもの。そうじゃなくて、新任の空の探偵さんのことを言っているの。マーティン・クリーフ警部よ。
ダグラス:へえ、本当かね?
マーティン:うん。悪いね、ダグラス。でもきみの盗みを阻止できたら、彼女が100ポンドくれることになっているんだ。
ダグラス:そうか。そして私が盗んだら、きみが彼女に払うんだろう?
マーティン:、、うん。
ダグラス:おい、マーティン。そんなのにひっかかるなよ。彼女は損害をくいとめたいだけなんだ。私が盗むのは周知の事実だ。きみからその損失額の一部を巻き上げようって魂胆だぞ。
マーティン:うん。でももし僕が阻止できたらどう?
ダグラス:きみにとって素晴らしい結末になるだろうな。だがその計画には2点ほど打ち勝ちがたい小さな問題がある。私は私で、きみはきみだ。そして私は機転をきかせるまでもなく、きみを出し抜くことができる。
マーティン:そうなのかい?
ダグラス:そうさ。
マーティン:そうは思わないけど。
ダグラス:私はそう確信している。
マーティン:それ、やめてよ!
ダグラス:だが私はウイスキーを盗むし、その時、きみはキャロリンに100ポンド払わなきゃいけないけど、そんなお金がないと私にグチるだろう。その際の私の答えはこうだ。“I bold you go.”

バーリング:(外から)おい!ドアを自分で開けないといけないのかね!
キャロリン:(ドアを開けながら)バーリングさん。失礼しました。ノックの音が聞こえなかったの。
バーリング:ノックなんてしてない。怒鳴ったんだ。やあ。
マーティン:バーリングさん。いらっしゃいませ。
ダグラス: おかえりなさい。
バーリング:やあ、良い子のみんな。今一度私を手伝って、地上の束縛から離れ、神の御顔にパンチをくらわせる準備はいいかね?
ダグラス:「神の御顔に触れる」でしょう。
バーリング:いやいや、その言い方は気に食わん。気持ち悪い。
キャロリン:神様もそんなこと期待してないでしょうしね。
バーリング:おや、きみはまだいたのか。前回見かけなかったから、てっきり死んだのかと思った。
キャロリン:まだ生きてますわ。
バーリング:それは驚きだ。
(ドアの開く音)
エリザベス:バーリング。あんなところに車を停めたら、壁にあたって、私、ドアが開けれられないでしょう!
バーリング:わざとやったんだ。エリザベス、こちらがこの前話してた道化パイロットたちだ。機長、副機長、キャビン・ボーイ。
マーティン:いえ、実は僕が機長です。
バーリング:彼はいつもそう言う。なぜだか分からんがね。パイロットたち、こちらがエリザベス。私のひどい妻だ。見送りに来た。
マーティン:はじめまして。ひどいなんてとんでもない。
バーリング:こう言おうか、マーティンくん。きみが彼女と30年間連れ添ったら、メモを比較しよう。
エリザベス:ええ、はじめまして。どうぞよろしく、などなど。とにかく、みんなに50ポンドづつあげるわ。
ダグラス:これはありがとう。あなたがひどい人ではないという証拠が早くも出ましたね。
エリザベス:これはチップよ。今あげたのが、あなたたちが受け取れる全額です。バーリングと私は、いままでに彼があげていた莫大なチップについて話し合ったの。そして私たちはもうやめることにしたのよ。そうでしょう、バーリング?
バーリング:いや。
エリザベス:ではくだらないラグビーをくだらないパリで見たくないの?
バーリング:ラグビーはくだらなくないぞ。パリは、確かにバカげているが。
エリザベス:それで、私たちが決めたことは?
バーリング:チップは無し。
エリザベス:その通り。
バーリング:本当にひどい女だろう。私は言葉以上に嫌っている。
エリザベス:そうね。じゃあ行ってらっしゃい、バーリング。適度に楽しんできてね。それ以上やると、あとが怖いわよ。
バーリング:じゃあな。私がいない間、気をつけるんだぞ。坑道に飛び込まないように。

アーサー:こちらです、バーリングさん。
バーリング:飛行機のドアから飛行機に入るのか。これは驚きだな。
アーサー:もっと質問して!
バーリング:77年に三冠達成したのは?
アーサー:それって引っ掛け問題ですよね。僕、知らない。

キャロリン:運転手さんたち。搭乗する前に、こちらに来ていただける?
ダグラス:なんだい、キャロリン?
キャロリン:消防部のフィルが、バーリング・デイ恒例の「副機長の身体検査」を行います。
フィル:ごめんね、ダグラス。
ダグラス:これは本当に必要なのか、キャロリン?今日はスコットランド・ヤードのクリーフが私の行動を逐一見張るんだろう?
キャロリン:可能性があるものは全部チェックしないとね。それで、フィル、なにが見つかった?
フィル:彼はなにも持っていない。フライトバッグには、アップル・ジュースの大きなペットボトルが1本。
キャロリン:まあ、ダグラスったら。それがあなたの最上の手なの?
ダグラス:なんだって?私はアップル・ジュースが好きなんだ。
キャロリン:そう、でも今回はあきらめなさい。フィル、それは捨てて。
(ゴミ箱に入れる音)
ダグラス:必要なのに!
キャロリン:他には、フィル?
フィル:マニキュアの小瓶が1つ。
キャロリン:あら、またなのね?かわいいわ。同じトリックに私が2度もひっかかると本気で思ったの?知っているかしら。ダグラスはマニキュアを使って、自分がいじったボトルの蓋をふさぐのがお好みなの。でも今回は役に立たないと思うわよ、ダグラス。なぜなら今日はボトルは1本だけ。それを私が今、開けます。
(蓋が開く音)
キャロリン:では、試飲を。う~ん、これは上物だわ!ありがとう、フィル、もういいわ。では、マーティン、このウイスキーを、文字通り、そして比喩的にも、あなたの手に委ねます。これから6時間の間、ダグラスに渡さなかったら、100ポンドあげるわ。
マーティン:了解。ダグラス、僕に近づくなよ。機内に入って、操縦室に向かってくれ。
ダグラス:そんな風にボトルを抱えなくてもいいんだぞ、マーティン。
マーティン:いいから行って。頼むよ。
ダグラス:いいだろう。それでは、キャロリン。
キャロリン:行ってらっしゃい、ダグラス。幸運を祈るわ、マーティン。あなたの魂に神のお慈悲を。


マーティン:それじゃ、操縦室に入って。
ダグラス:今行くよ。
マーティン:ドアを閉めて。
(ドアを閉める音)
マーティン:よし。アーサー!
アーサー:やあ、スキップ。
マーティン:これがバーリングさんの特別なウイスキーだ。これから僕はパリに到着するまでダグラスを操縦室から出さないようにするけど、もし、どうにかして逃げ出すことがあったら、彼がこのウイスキーに触れたり、持ったり、借りたり、飲んだり、見たり、とにかくなにもさせないように。分かったかい?
アーサー:分かった。
マーティン:では、ダグラスが近づいてはいけないものは?
アーサー:ウイスキー。
マーティン:誰がウイスキーに近づいてはいけない?
アーサー:ダグラス。
マーティン:ダグラスがウイスキーにしちゃいけないことは?
アーサー:全部。
マーティン:本当に分かったんだね!
アーサー:うん。僕はバカじゃないんだ。
マーティン:誰がなにをどうしちゃいけない?
アーサー:僕は母さんの車を運転しちゃいけない。
マーティン:ええっ?
アーサー:ごめん、スキップ。それはさっきのだった。えっと、ダグラスがウイスキーに近づいちゃいけない。
マーティン:よろしい。ではこれを。


ダグラス:離陸後チェック完了。
マーティン:ありがとう。
ダグラス:それで、きみはウイスキーをアーサーに渡したのか。
マーティン:きみには関係ない。
ダグラス:ちょっと危険じゃないか?きみがずっと持っていたいのかと思ったが。
マーティン:いいや。だってウイスキーがここにあれば、きみはなにか非常事態を装って僕の気をそらせ、その間にかっぱらうから僕がそれに対応しないといけないけど、なにが起ころうとも、着陸するまで操縦室からきみが離れなければ絶対に大丈夫だ。
ダグラス:ふむ。よく考えたな。
マーティン:ありがとう。
ダグラス:では、ちょっと失礼してトイレに。
マーティン:ダメだよ!
ダグラス:必要にせまられているんだが。
マーティン:ダメだ。禁止する!
ダグラス:禁止する?
マーティン:うん。
ダグラス:ちょっと待った。あなたは私がトイレを使用するのを禁じるおつもりですか、機長?
マーティン:行かなくてもいいだろう?
ダグラス:いや。
マーティン:あと1時間だけ我慢することだね。
ダグラス:それはできない。健康に悪いんだ。
マーティン:そうか、分かったよ。(インターコム)アーサー、タリスカーを持って操縦室に来てくれないか?
アーサー:オーケイ。
マーティン:ダグラス、手を頭の上に乗せて。
ダグラス:手をなんの上に乗せろって?
マーティン:聞こえたろう?
ダグラス:頭の上に手なんて乗せないぞ。
マーティン:頭の上に手を乗せるか、トイレに行かないか。
ダグラス:いいだろう。
(ドアが開く)
アーサー:ほら、スキップ、、
マーティン:アーサー。こっちによこして、早く!ダグラスには近づけるなよ!僕にくれ、僕に直接!ありがとう。
アーサー:大丈夫、ダグラス?
ダグラス:ああ、ありがとう。
アーサー:頭が痛いように見えるよ。それとも帽子をなくしたのに気づいたとか。
マーティン:ダグラス、トイレに行きたまえ。
ダグラス:もう行きたくなくなった。
マーティン:それは驚きだね。とにかく行ってきてよ。10分後に同じことをされちゃかなわない。
ダグラス:仰せの通りに。
(ドアの音)
アーサー:最高にうまくやってるね、スキップ。
マーティン:ありがとう。
アーサー:彼は今回、いったいどうやって盗むのかな?
マーティン:今回は盗まないよ。
アーサー:うん、きっとそうだよね。でも、彼はとってもずる賢いから。
マーティン:彼がどんなにずる賢くても、ボトルに触らせなければ、絶対に盗めないんだ。
(インターコムの音)
バーリンク:もしもし?これはどうやって使うんだ?
マーティン:ああ、バーリングさん。大丈夫ですか?
バーリング:いや。さっきから「バカ呼び出しベル」をずっと鳴らしているんだが、まだバカがやってこないぞ!
アーサー:すぐ行きます、Bさん。
バーリング:よし。それから私のウイスキーを持って来い。
アーサー:承知!
(インターコム・オフ)
アーサー:オーケイ、スキップ。僕に、、
マーティン:アーサー、さっきなんて言った?
アーサー:えっと、たくさん。
マーティン:ダグラスがこの椅子に座るまで、僕はこのボトルを手放さない。
アーサー:オーケイ。
(無線の音)
マーティン:はい。MJN航空です。
キャロリン:もう彼が盗った?
マーティン:いや、彼は持ってない。「まだ」って言葉は心外だね。彼の手には渡らないよ。
キャロリン:もう盗ったの、ダグラス?
マーティン:彼は今、操縦席にいないよ。
キャロリン:なるほど。彼はウイスキーを盗むのに忙しいのね。
マーティン:いいや。ウイスキーは僕が今持っているんだ。大丈夫だよ、キャロリン。僕は出来るんだ、
(ドアが開く)
マーティン:あ、じゃあね、キャロリン。(無線オフ)手を頭の上に!手を頭の上に!
ダグラス:マーティン、頼むから、
マーティン:頭の上に!ありがとう、さあ、座って。ゆっくりと。よし、ありがとう。アーサー、ウイスキーを渡すよ。バーリングさんに差し上げてくれ。
アーサー:ありがとう、スキップ。
(ドアが閉まる)
ダグラス:本気でフライト中ずっとこれを続ける気なのか?
マーティン:そうだよ。そしてきみが最後に結局盗めなかったとき、僕が言う言葉は、「きみ、、そ、言わ、た、ろ」
ダグラス:具合が悪いのかね?
マーティン:「きみはそう言わなかっただろう?」だ。韻を踏もうと思ったのに。


バーリング:(ピンポン)ピンポン、(ピンポン)ピンポン、(ピンポン)ピンポン、、
アーサー:お待たせしました。Bさん。
バーリング:やっと!どこに行っていたんだ?中世からずっとベルを鳴らして、ピンポンと叫んでいたんだぞ。
アーサー:ごめんなさい。スキップがちょっと、、
バーリング:きみの「ごめんなさい。スキップがちょっと」なんて聞きたくない。さあ、早く私のタリスカーを注いでくれ。
アーサー:(注ぐ)はい、どうぞ。
バーリング:ようやくだな。(飲む。そしてむせる)これはタリスカーじゃない!ひどい味だ!
アーサー:わぁお!
バーリング:「わぁお」とはどういう意味だ?
アーサー:なんでもないんです。ただ、、副機長が魔法を使ったみたい!


(続く)