Cabin Pressure(脚本:ジョン・フィネモア 出演:ベネディクト・カンバーバッチ他)

イギリスBBCのラジオ・コメディ CABIN PRESSURE について語ります。

S3-5 Rotterdam(後)

2013-05-27 06:11:43 | 日記
後半です。


 ↓


マーティン:おはよう。キャロリン。
キャロリン:マーティン、早いのね。ロッテルダム行きは2時なのに。
マーティン:知ってる。でも、今日あのビデオを撮るんだろう?その前にこれを聞いてほしいんだ。
キャロリン:マーティン、
マーティン:昨日一日かけて携帯で録ったんだ。きみも同意してくれると思うけど、これこそまさにきみが求めているものだよ。冷静、威厳、そしてリラックス。聞いて。(録音映像スタート)やあ、みんな。私はマーティン・クリーフ、機長だよ。みんなが今日搭乗する機の責任者。私のチームのみんなと、地上スタップのみんなを代表して、今日のMJNの搭乗を大歓迎します。これから軽く飛行機を飛ばす前に、みんなにセーフティ・デモンストレーションの短い映像を見てもらいたいんだ。分かってるさ、退屈だって言うんだろう?でも、分からないよ。これがきみたちの命を救ってくれるかもしれない。あ、あの、も、もちろん、飛行機事故の確率はきわめて低いんだけどね。オーケイ。それでは、セーフティ・デモンストレーションのB面でお会いしましょう。チャオ!
キャロリン:信じられない。これがあなたのいうリラックス?
マーティン:リラックスかつ威厳もある。まるで、かっこいい教師みたいに。
キャロリン:そうね。でも残念ですけど、フォンズ教授、空席は埋まりましたわ。マーティン、こちらに来てもらえるかしら?
マーティン:ぼ、僕はここにいるよ。
キャロリン:どうしてあなたを呼んでいると思うの?
(ドアが開く音)
もう1人のマーティン:こんにちは。私はマーティン。機長です。はじめまして。
マーティン:うわぁ、そんな!ぼ、ぼくが、、きみが機長ってどういうこと?
もう1人のマーティン:ああ、きみが副機長だね。よろしく。
マーティン:僕が機長だよ!
もう1人のマーティン:あれ?私が機長だと思ったけど。
キャロリン:その通りよ。マーティン、このマーティンは本物の機長です。マーティン、こちらは役者さん。機長の役を演じます。
マーティン:でも、彼はパイロットの服を着てる。
キャロリン:そうね。役者はなんだってするのよ。
マーティン:でも制服だよ!どこでその制服を手に入れたんだ?
もう1人のマーティン:ナップ=シャッピーさんからいただいた。
キャロリン:実を言うと仮装用のお店で調達したの。
マーティン:でも僕のより上等だ!
キャロリン:そうなのよ。これからはあそこで買おうかしら。
(ドアの開く音)
ダグラス:おはよう、みんな。 あ。ハロー。
もう1人のマーティン:ハロー。私はマーティンです。
ダグラス:驚いたな。なにがあった?魔法のランプを見つけたのか?
マーティン:僕はここだよ、ダグラス。
キャロリン:マーティンは役者よ、ダグラス。歓迎の挨拶のために私が雇ったの。
ダグラス:ああ。
キャロリン:私ったら、賢い解決法を見つけたでしょう?これなら誰もベルギーの無料旅行をする必要がないわ。
ダグラス:実を言うと、キャロリン、たぶん私は説得されたら、
キャロリン:いい?計画としては、飛行前に、マーティン、操縦室であなたのスピーチをリハーサルしてから、一緒にロッテルダムに行きます。これなら実際に飛行中に撮影できるわ。ダグラス、セッティングを手伝って。マーティンはお茶の準備を。いえ、あなたじゃなくて、小さいマーティンよ。
マーティン:僕は小さいマーティンじゃない!
キャロリン:ダグラス、ついてらっしゃい。
(ドアの音)
もう1人のマーティン(大マーティン):さっきは失礼。あなたは本当にパイロットなんですね?
マーティン:ええ、そうです。僕は機長です。
大マーティン:それは素晴らしい。
マーティン: きみは違うんだね?
大マーティン:違うって?
マーティン:パイロットじゃないんだ。
大マーティン:とんでもない。違うよ。
マーティン:きみは本物のパイロットに見えるのに。
大マーティン:そう?それって、ほめ言葉?
マーティン:きみのような姿になれるなら、僕は人生の1年分を差し出してもいいよ。
大マーティン:ああ、うん。それは、ありがとう。
マーティン:それで名前は本当に、
大マーティン:マーティン。こんにちは。
マーティン:きみが言うとかっこよく聞こえる。苗字はなに?
大マーティン:ダヴェンポート。
マーティン:マーティン・ダヴェンポート。「こんばんは。こちらはマーティン・ダヴェンポート機長です」 しかもきみは名前がダダダァ~ダダなんだ!
大マーティン:なんだって?
マーティン:きみは僕より機長らしく見えるし、機長らしく話す。僕よりかっこいい制服を着て、それに名前まで僕よりかっこいい。すごく自慢だろうね。
大マーティン:私は、ただ仕事をしに来ただけさ。
マーティン:ねえ、試しに聞きたいんだけど、きみがニース空港で最終着陸態勢に入るとき、北西から20ノットの風が吹いていたら、どっちの滑走路を使う?
大マーティン:まるで分からないよ。
マーティン:当ててみて!
大マーティン:えっと、滑走路、B?
マーティン:B滑走路?なんだいそれ。そんな滑走路はないよ。
大マーティン:さっき言ったように、
マーティン:04左か、04右だよ。
大マーティン:じゃあ、04右?
マーティン:違う、左だよ!どうして知らないの?
大マーティン:私はパイロットじゃないからさ。
マーティン:もったいない。すごくもったいないよ。


(ドアの開く音)
アーサー:やあ。母さんがリハーサルの準備はいいかって聞いてる。
マーティン:いや。
ダグラス:ああ。
アーサー: (奥へ)準備いいって!
マーティン:あの人、身長はどれくらいだろう?
ダグラス:マーティン。私には分からんよ。185か188くらいかな。
マーティン:そうだよね。完璧な身長だ。平均より高いけど、高すぎない。
ダグラス:いいかげんにしたらどうだ?
(ドアの音)
キャロリン:さあ、運転手たち。ムービー・マジックを作リ出す準備はいいかしら?あるいはムービー・マジックが作られるのを横で座って見る準備は? 中へどうぞ、マーティン。
大マーティン:おじゃまします。
ダグラス:いらっしゃい。
マーティン:身長は、マーティン?
大マーティン:188だけど。
マーティン:ほら!そう言ったろう。結婚してる?
大マーティン:うん。
マーティン:もちろんそうだろうね。子供たちもいるんだろう?
大マーティン:ああ。2人。
マーティン:男の子と女の子?
大マーティン:どうして知ってるの?
マーティン:勘だよ。
キャロリン:もういいわ。残りの気味の悪いストーカー・クイズはあとに取っておいて。はじめましょう。ほら、小さいマーティン。大きいマーティンに機長の席を譲りなさい。
マーティン:本当に、キャロリン、僕は小さいマーティンじゃない!
キャロリン:あなたはそう言い続けているけど、巻き尺には別の意見があるみたいよ。
ダグラス:私の席を使ってくれ、マーティン。
キャロリン:なんですって?ダメよ!あなたはここにいなさい。ダグラス。
ダグラス:いや、そうは思わない。私は、さっき言ったように、とてもシャイなんだ。
キャロリン:大人げないこと言わないの。
ダグラス:大人げないんじゃないさ。グランプリに行けないなら、ビデオには出ない!
キャロリン:分かったわ。小さいマーティン、今日はついているわね。あなたの映画デビュー作よ。ダグラスの席に座って、顔はカメラに映らないようにして。
マーティン:副機長の席に?僕は副機長じゃない。僕は、
キャロリン:マーティン!いいから座りなさい!(座る) どうもありがとう。では、大きいマーティン、
マーティン:お願いだ、キャロリン。
アーサー:至上マーティンって呼んだら?
キャロリン:なんですって?
アーサー: 最大。
キャロリン:いいでしょう。至上マーティン。まずあなたたち2人が操縦している姿を2、3秒撮って、それから、座席にいるあなたがセリフを言うのよ。
大マーティン:オーケイ。どうやれば操縦しているように見えるかな?
キャロリン:足を上にのせて、くだらない言葉遊びをしながら、チーズをおなかいっぱい食べるのよ。
大マーティン:えっと、
キャロリン:あら、ごめんなさい。今のは風刺がききすぎていたわね。ただ操縦桿を握って、満足気にしていればいいわ。
マーティン:もちろん、これはただの提案だけど、どちらかが管制塔になには言ってはどうだろう?天気情報をもらうとか、雰囲気が出るようなことを。
キャロリン:そうね、いいわ。至上マーティン、やってみて。
大マーティン:よし。どう言えばいい?
マーティン:おや、どう言えばいいか分からないんだね。
キャロリン:マーティン、教えてあげなさい。
マーティン:あるいは僕が言ってもいいよ。
キャロリン:いいでしょう。ただし簡潔にね。では、始め。
マーティン:シャンウィック、こちらはG-T-I。レイキャビックの天気を教えてください。
キャロリン:それでは至上マーティン、始め。
大マーティン:ハロー。よ、ようこそ。一同を代表して、その、M&M航空、ごめんなさい!MJN航空へ。みなさんは、たくさんの航空会社のなかから、えっと、我々を、その、ごめん。次が出てこない。セリフは?
ダグラス:ふむ。これは興味深い。


大マーティン:大丈夫かな?どう思う?
マーティン:その、、問題ないと思うよ。
大マーティン:どうして彼女はあんなに急いで出たんだろう?それに、もう1人も一緒に連れていったのはなぜ?
マーティン:さあ、まるで分からない。ねえ、マーティン、教えてくれないか。きみはたくさん仕事をかかえているの?役者業で忙しい?
大マーティン:いや、たくさんではないよ。いまは、どちらかというと落ち着いてて。きっとみんなそうだろう?
マーティン:うん、そうだね。でも、食べていけるんだろう?
大マーティン:それが、正直に言うと、役者業だけじゃないんだ。タクシーの運転手もしている。副業でね。でも、ある程度は、そっちが本業かも。
マーティン:なるほど。きみはずっと役者になりたかったの?
大マーティン:うん、ずっと、ずっとね。5歳のときからなんだ。私がやりたいのは絶対にこれだけ。疑いなく、このために生まれてきたのに、でも、周りを説得することができない。すごく不満なんだ。
マーティン:気持ちは分かるよ。それで、キャロリンはどうやってきみを見つけたの?
大マーティン:ウェブサイトに載せているんだけど、いつもはそこから仕事はこないんだ。だから驚いたよ。しかもオーディションもしていないんだ。
マーティン:そうなのかい?びっくりだね。で、立ちいったことを聞くようだけど、彼女はいくら払うって?
大マーティン:えっと、実は、無償でやることにしたんだ。分かるだろう?善因ってやつさ。
マーティン:え、MJNが?僕たちは善因じゃない、悪因だよ
大マーティン:演技したかっただけだよ!誰も僕に演じさせてくれないんだ!
マーティン:ねえ、えっと、きみはフィットンに住んでいるのかい、マーティン?
大マーティン:うん。
マーティン:今度飲みに行かないか?
大マーティン:マーティン、申し訳ないけど、私は、
マーティン:そうじゃない!僕も違うよ。そういう意味じゃなくて、軽く一杯、ビターかスタウトを1パイント、
大マーティン:ああ、うん。もちろん。それは楽しみだ、マーティン。
マーティン:僕もだよ、マーティン。


キャロリン:いいわ。さっさと済ませましょう。あなたに歓迎の挨拶をお願いしたいの。
ダグラス:グランプリに行けるならやろう。
キャロリン:グランプリには行けません!
ダグラス:それならマーティンズのどちらかを選ぶんだね。
キャロリン:分かったわよ。(ドアの開く音)あなたに、
ハーク:ハロー。
キャロリン:ハーク!ここで何をしているの?
ハーク:きみをオペラに連れて行くんだ。
キャロリン:それは明日でしょう。
ハーク:いや。伝言を聞いてないのかい?
ダグラス:ああ、マーティンが忘れたようだ。
キャロリン:ちょっと待って。ねえ、ハーク、「ハロー、MJN航空へようこそ」って言ってみて。
ダグラス:なんだと?
ハーク:ハロー、MJN航空へようこそ。
キャロリン:いいわね!
ダグラス:いや、絶対ダメだ。
キャロリン:ハーク、あなた、今夜予定はある?
ハーク:うん。きみをオペラに連れて行く。
キャロリン:でも私はこれからロッテルダムに行くから、それは出来ないわ。その代わり、私と一緒に来て、おしゃれな制服に身を包み、MJNの歓迎メッセージを録画させてくれない?
ダグラス:ダメだよ!
ハーク:へえ、いいね。面白そうだ。
キャロリン:ダグラスは残念だけど出来ないんですって。すごくシャイなのよ。
ハーク:それは可哀想に。もしこの気の毒な男に自信を与えることができたら。
ダグラス:分かったよ、キャロリン。私がやる。喜んでやるよ。お願いだ。
キャロリン:ありがとう、ダグラス。でも、本当言うと、私はハークの声のほうが好きなの。
ダグラス:なんだって!そんなバカな。(ビデオ向けの声で)楽しいフライトになりますように。
ハーク:(こちらもビデオ向けの声で)リラックスしてフライトをお楽しみください。
ダグラス:どうぞ、ぜひリラックスして。最高に素晴らしいフライトを。
ハーク:みなさまには是非とも、最も快適で素敵なフライトを。 
キャロリン:もういいわ!二人ともやめて。私はシロップの海で溺れそうよ。ダグラス、もし私が慈悲深くも、あなたにMJNの歓迎挨拶を担当させてあげるとしたら、私の見返りはなにかしら?
ダグラス:いいだろう。私はグランプリへ行かない。
キャロリン:あら、でも忘れないで。はじめからグランプリには行けないのよ。で、あなたは私になにをしてくださるの?


キャロリン:それでは、みんな、準備はいい?これからMJN航空の最初で-そして、お願いだから最後の-メジャー映画を上映いたします。アーサー、再生ボタンを押して。
アーサー:オーケイ。アクション!
(音楽が流れて)
画面のダグラス:ハロー。私はリチャードソン副機長です。MJN航空のご利用ありがとうございます。どうか穏やかで快適な旅をお楽しみください。みなさまの安全は私たちにとって大切ですので、飛行機を頻繁に利用なさる方も、続けて上映されるセーフティ・デモンストレーションをよくご覧ください。
キャロリン:そして誰よりも私たちを上手に導いてくれるのは、、
(音楽が変わって)
画面のダグラス:ハロー。私はスチュワードのダギーです。
(みんなの歓声)
ダグラス:なんてこった、、
画面のダグラス:私は副機長の双子の弟です。MJN航空は家族経営を誇りにしています。離陸の前に、私がこの機内における安全手順を実演しますので、どうか皆様ご注目ください。
マーティン:確かにきみは注目の的だよ、間違いない。
アーサー:僕の制服がよく似合うよ、ダグラス。帽子もね。
マーティン:特に帽子がね。
キャロリン:シーッ。見逃すわよ。
画面のダグラス:指示があった際は、救命胴衣を頭からかぶり、紐をウエストに回して、胸の前でしっかり2重に結んでください。
キャロリン:なんの果物に似てると思う?グレープフルーツみたいだけど、もっと大きくて、もっと黄色いわ。
マーティン:メロンだ!
画面のダグラス:飛行機の外に出たら、赤いタグを強く引っ張り、膨らませます。
(みんなの歓声)
キャロリン:見事だわ。そう思わない、ハーク?
ハーク:まさにその通り。私にはとてもあんなに上手にできないよ。第一、絶対にやらない。
ダグラス:もう止めてもいいだろう?
キャロリン:とんでもない。これからがいいところなのよ。
画面のダグラス:救命胴衣には、注意を引くために、電灯と笛がついています。
キャロリン:でも、ダギー、教えてちょうだい。笛はどうやって使うの?
(笛の音)
(みんなの歓声)


 (エンド・クレジット)