信号待ち、2秒ほど出遅れただけなのに後ろの車がブーブー鳴らすものだから、ついカッとなって車の中で叫んでしまった。
その人の人間性は車の運転にも滲み出るものだ。外に聞こえていないことをいいことに声を荒げるわたしの人間性も含めて…。
「わかい人」
車にのっていたら
ほそい道でバックができなくて
もたもたした車がとまっていました
いくらまってもバックができなかったので
おとうさんは
「バックもできんのんやったら車にのるな」
と車の中でどなっていました
それやのに車からおりて
しんせつにうごかしてあげました
にこにこしていました
わかい女の人でした
(小学1年生の詩)
免許を取ったばかりの時に、私もこの詩と全く同じようなことがあった。
バックしようとするのだが、焦れば焦るほど車は思うように動いてくれず、しまいにはハンドルを右に動かしたらいいのか左に動かしたらいいのかわからなくなってしまった。対向車はどんどん溜まる。クラクションはブーブー鳴らされる。
騒然とした空気が漂う中、「変わりましょう」とににこにこして車をスルスルっと動かしてくださった男の人がいた。
その人は、目の前の対向車ではなく、確かその4~5台ほど後ろの車を運転していた方だったと思う。
車は一気に流れだし、その男の人の車も行ってしまった。あの時きちんとお礼が言えなかったことが未だに悔やまれてならない。
人が困っていても知らんぷりの人、文句だけ言う人、救いの手を差し伸べてくれる人、たくさんの車が鼻を付き合わせたあの瞬間に人間模様を見た気がした。
人間性が内側から滲み出ると言うが、それは車を透しても見えるのだ。
今朝「わかってるやん!!」と車内で叫んだ瞬間、あの日、にこにこして車を動かしてくださった人のことを思い出した。