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中橋怜子の 言の葉ノート

自然、人、モノ、そして音楽…
かけがえのない、たおやかな風景を
言の葉に込めて

「お水取り」は穴場で

2017-03-07 | 奈良の風景


いよいよ東大寺二月堂の修二会の行が始まりました。
大和の春も、もう直ぐそこです。

修二会は、752年に創始され今日に至るまでの1260有余年、一度も欠けることなく連綿と受け継がれてきた「不退の行法」です。
修二会というより「お水取り」という方が私たちはしっくりきますね。
行中の3月12日深夜(13日の午前1時半頃)、若狭井という井戸から観音さまにお供えする「お香水(おこうずい)」が汲み上げられます。これが「お水取り」の行なのですが、いつの間にか、修二会自体を「お水取り」と呼ぶようになりました。

「お水取り」と言えば、何といっても火の粉を撒き散らすお松明ですが、実はあのお松明は練行衆の道明かりで、修二会の期間中、10本のお松明に夜ごと火が点けられ、火の粉を撒き散らしながら、二月堂の回廊を駆け巡ります。

10本のお松明に加え、大きな籠松明が上堂する12日夜、全てのお松明が一同に欄干に並ぶ14日夜のクライマックスを前に、6日夜、友人らと修二会に行って来ました。

クライマックスには、全国・全世界から押し寄せる何万人もの人で、とても寄り付けないほどの混雑なのですが、それまでの夜は比較的人も少なく、特に月曜日〜金曜日の夜は穴場です。

夕方5時ごろぐらいまでに行けば、二月堂に上がることができ、直ぐ目の前でお松明の行を見ることができます。
二月堂に上がらなくても、直ぐ下の芝生の特別席を陣取ることができます。

明日から3日間の夜はまだまだチャンスです!


夕方5時、いざ二月堂へ。
それにしても二月堂裏参道は、信じられないくらいの静けさです。



二月堂の階段。
お松明が出番を待っています。



欄干や廊下など、二月堂の回廊に丁寧に水が散布されます。
防火対策も万全です。



奈良の街が闇に沈み始めました。
左側の天に伸びるシルエットが、二月堂の良弁杉です。



インクブルーの空に二月堂の灯や、ろうそくの火が幻想的に浮かび上がります。
さて、まもなくお松明が上がって来ます。





二月堂周辺は、いつの間にか人で埋め尽くされています。
会場には英語、中国語、韓国語…各国の言語でアナウンスが流れています。
まもなく、会場の全てのライトが消されます。



7時。お松明が上がって来ました。
火の勢いが想像以上です!



練行衆が欄干にお松明を転がしながら回廊を走ります。







練行衆も回廊も火の粉まみれです。
そこへ、竹箒を持ったおじさんが現れて、欄干に飛び散った火の粉を素早くはき落とします。



回廊を駆けるお松明は全部で10本。
クライマックスの日のお松明に負けじと劣らずの圧巻です。
ぜひ、この幻想的かつ荘厳な行を、穴場で体験してください。











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飛鳥時代の幻のチーズ「蘇」を訪ねて

2016-11-28 | 奈良の風景
「チーズ発祥の地 奈良」この言葉を探っていくと飛鳥時代の「蘇(そ)」なるものに辿り着きました。

飛鳥のころ、仏教と共に大陸から牛乳の薬効や牛の飼い方などが都に伝わってきました。
7世紀の末には、天香久山の麓で牛が飼われ、その乳から「蘇」が作られていたという記録が残っているそうです。

「蘇」とは今のチーズに近いもので、牛乳を焦げ付かないように撹拌しながら7〜8時間熱し、水分を飛ばして固形にしたものです。
当時、貴族や皇族の間で、医薬、滋養強壮、美容、不老長寿の妙薬として広まり、そして700年の11月、「貢酥(蘇)の儀」を発令し、諸国から朝廷に「蘇」を納めさせるまでにいたりました。
お偉方がそうまでして食べたかった、そうとう美味なるものだったのでしょう。
ちなみに、11月11日がチーズの日になったのは、1300年以上昔のこの「貢酥の儀」の発令された月に由来するとは驚きです。

庶民には夢のまた夢、口に入ることはなかった超高級食品「蘇」、貴族たちが夢中になった「蘇」、いったいどんな味だったのかとても気になります。

奈良県橿原市、天香久山の南麓の牧場で、飛鳥時代の「蘇」を、当時の製法のままに復元し販売されていると知り、早速訪ねてみました。

衛生上、工場に入ることができなかったので、この牧場で「蘇」の担当、責任者でいらっしゃる奥様が、写真を元に丁寧にご説明してくださいました。
温度、湿度など自然に左右される「蘇」作り、牛もまた自然のもので、お乳の成分が一定ではないので、同じように作っていても、その時によって味が違い、失敗することもあると、そのご苦労を聞かせてくださいました。


毎朝、牧場で絞られる新鮮な生乳のみで作られます。添加物は一切なし。材料は生乳のみです。焦げ付かないように撹拌しながら熱していきます。



水分が蒸発し粘りが出てきました。



やや飴色に変わり、さらに粘りが出てきました。かなり量が減りました。



いよいよ固まって来ました。生乳がこの状態になるまでには7〜8時間かかります。量は約10分の1になるそうです。



型枠に入れます。



お豆腐のように切り分けて、出来上がり。



ほんのり甘いチーズ?甘さを抑えた生キャラメル?奥深くにバターの味も感じます。
美味しい!!



美味なるものが世の中に溢れている今これを口にしても美味しいのです。1300年前にこれを口にした人は、さぞかし驚いたことでしょう。世の中にこんなに妙なる味の食べ物があるなんて…。
貴族たちがハマったそのわけがわかります。
ちなみに、当時は栄養の摂り過ぎで成人病を抱える貴族がたくさんいたとか。
「蘇」に限らず、全国から集まってくる美味しいものを、毎日食べていましたからね。
帰りに、ミルク工房で、搾りたての牛乳で作った温かいミルクコーヒーをいただきました。


「飛鳥の蘇」ネット販売もされているようです。気になる方はお試しあれ。





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采女祭 ー古都の名月の夜を彩る王朝絵巻

2016-09-19 | 奈良の風景
古都奈良の夜を彩る風雅なお祭り「采女祭」が9月15に行われました。

昨年に引き続き、今年も池を巡るお船の上で『やまと采女ものがたり』(2016年采女祭バージョン 脚本・作曲/中橋怜子、効果音/大橋了久)の〈うた語り〉をさせて頂きました。

奈良の時代の帝とひとりの采女(後宮で帝の給仕をする女官の職名)との悲恋の物語。その内容については、また改めて綴らせて頂くとしまして、中秋の名月のもと、猿沢池に繰り広げられた王朝絵巻さながらの雅やかな光景を、みなさんから頂いたたくさんの画像の中からほんの一部ですがご紹介させて頂きます。

愛らしいミス采女さんたち。




まるでタイムスリップしたかのような光景


百人一首から抜け出してきたような大和美人のお嬢さん


うた語り船、出航。


船は池の畔に沿ってゆっくり進みます。




お祭りのクライマックス。秋の七草で美しく飾られた花扇が猿沢池に投じられ、采女の霊が慰められます。


無事に終了!
大活躍!「采女祭」担当、奈良観光協会の嶋田さんと。お月様も雲の合間からお顔を出して祝福!


効果音の演出で〈うた語り〉をぐっと盛り上げてくださった大橋さんと。


オマケ
出航前の準備中。帝に扮する観光協会・采女祭保存会会長 乾さんがパチリ!緊張をほぐして下さいました。




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深野 ささゆりの里を訪ねて

2016-02-16 | 奈良の風景
小雪舞う、奈良県宇陀市室生深野を現地の方に案内して頂きました。

「にほんの里100選」にも選ばれている深野は、奈良市内から1時間余りという立地にありながら、今も故郷の原風景をそのまま残す、まるでタイムスリップしたような山里です。
コンビニも、自動販売機さえ一つもありません。あるのは懐かしい日本の故郷の風景、美しい湧き水、山の神様、鳥のさえずり、村の人たちの笑顔…。観光客が押し寄せるわけでもなく、私はこの深野を奇跡の村だと思っています。

壊すことも新しく作ることも簡単、「守る」ことがどれほど大変なことか、今日、現地の方のお話を伺いながら痛感しました。

6月中旬には「ささゆり」が村のあちこちに咲きます。上品な香りを漂わせながら、うつむきかげんに楚々として咲く姿が印象的な日本原種のユリです。
激減する「ささゆり」も、保存会を作り懸命に守っておられます。

私は今回で三度目の訪問、何やら深いご縁を感じる所です。


茅葺の古民家を再生して作られた「ささゆり庵」


棚田もひっそり春の訪れを待っています。


山の中腹に位置する深野。豊かな湧き水が斜面を這うように、集落の中を、田んぼの中を走り抜けています。


大きな杉の木が屋根を作る湧水場。このような場所が村の中に何箇所もあります。




白壁と杉板の土塀の路地


日の出を映す棚田(2015年5月10日撮影)


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三輪の里のお酒

2015-06-30 | 奈良の風景
昨夜は奈良経済同友会のフォーラムで創業355年三諸杉(みむろすぎ)醸造元今西酒造株式会社 代表取締役 今西将之氏のお話を拝聴しました。
今西酒造は三輪の里で一軒だけ残る酒蔵、江戸時代(1660)に創業以来、大神(おおみわ)神社に奉納するお酒を造り続けた老舗です。

大神神社は日本最古の神社で本殿はなく御神体は三輪山、国造りと農商工、産業全ての神様であり、とりわけ酒造りの神様として有名な神社です。
三輪山に降る雨が旨し水となり、井戸から湧き出ずるその水が旨し酒を造ります。
米作りから洗米、蒸米、麹米、酒母、もろみ、酒粕、清酒、生酒、火入れ、熟成、瓶詰めに至るその一つ一つの工程を詳しく分かりやすく説明してくださいました。
大吟醸、吟醸、本醸造との違いは精米歩合の違いなんですね。今まで疑問に思ってい日本酒のあれこれが一気に解決しスッキリしました。ワインやウイスキーのことを知る前に、日本人ならやはり日本酒のことをもっとちゃんと知るべきだと痛感しました。
こんな機会を与えてくださったことに心から感謝いたします。

試飲会になると待ち侘びた男性陣のテンションが一気に上がりフォーラムの盛り上がりも最高潮に!

私は個人的に戦国武将が愛した室町時代の復元酒、純米「菩提酛」が好きでした。やっぱりどこかに武将の血が…。
大吟醸は美味し過ぎて…覚えてはいけない味です(笑)

先日、山辺の道を歩いた時に大神神社の二の鳥居の横の献酒樽の前で撮った写真。ここには全国の酒蔵が酒樽を奉納しています。
あなたのごひいきのお酒の樽、ありましたか?

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清酒発祥の地

2014-11-23 | 奈良の風景

私は幼少の頃を京都の伏見で過ごした。
伏見と言えばお酒、小学校への道には幾つも酒蔵があり、酒蔵と酒蔵の間の細い路地を通り抜けて通ったことを思い出す。

今年の春、公演で新潟に行かせて頂いた時には、あまり日本酒の味の分からない私でさえ「美味しい!」と思わず声を上げてしまう絶品のお酒を飲ませて頂いた。連れて行って頂いた酒屋さんにはずらり凄い数の日本酒!米どころ新潟ならではである。

日本の各地で日本酒が造られているわけだが、果たして発祥の地はどこなのか…
それが意外にも奈良なのである。
お恥ずかしいことに、このことをつい最近知った私である。

15世紀、室町時代なかばに奈良の正暦寺で清酒が生まれたという。
ここ正暦寺で開発された、全量に白米を使う“諸白(もろはく)”、酒母に蒸し米などを3回に分け加える“三段仕込み”、酒質を安定させ腐敗を防ぐための“火入れ”などの技術革新が、それ以前のどぶろくとなどとは異なる高品質な“清酒”を生み出したという。

現在の奈良県は生産量こそ多くないが、酒造技術や酒どころとしての風土が綿々と受け継がれており、個性的なお酒が多数揃っている。
清酒発祥の地として是非とも頑張って欲しいところ、応援したいところである。

あくまで参考までにであるが(笑) 兵庫県伊丹市にも清酒発祥地の碑が立っているという。灘の酒か…

今夜の会には、奈良を代表する酒造店による日本酒の試飲会があるという。
清酒発祥についてのお話なども伺えるかと楽しみにしている。

今、NHKの朝の連ドラでスコッチウイスキーが注目されているが、日本人としてはやはり日本酒。
近い日に、女性に向けての日本酒の勉強会なども必ず実現したいと思う。








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和モダン

2011-09-08 | 奈良の風景
雲ひとつない初秋の青空、爽やかな空気に誘われて朝からぶらり奈良公園に行ってきました。
奈良公園に到着した時は朝の冷え込みはどこへやら、汗ばむような暑さにジャケットを着てきたことを後悔…しかし木陰に入るとスッと汗がひいてしまうような涼しさ、もう秋なんですね。
まだ観光客もほとんどいない静かな奈良公園、まずは1895年に帝国奈良博物館として開館された奈良国立博物館本館へ。フレンチルネッサンス高揚期の様式で建てられたというだけあり、建物のそばを静かに歩いているとまるで中世のフランスにタイムスリップしたような、そんな錯覚を起こします。
ティータイムはやっぱり奈良ホテルへ。1909年開業、一昨年100周年を迎えた建物です。創業当初の華やぎと気品を今もなお受け継いでいる重厚な建物は、いつ訪れても心が落ち着き優雅な気分にさせてくれるお気に入りの空間です。BGMのジャズに酔いしれながら飲むコーヒーの美味しいこと!
それにしても昔の人のなんとモダンなこと!博物館本館といい、奈良ホテルといい、和の気品を残しつつ、洋の重厚な華やかさを見事に取り入れたその素晴らしい「和モダン」にただただため息…。
この居心地の良さ、やはりその時代を生きたご先祖の血がこの体のどこかを流れているのだろうと解釈する私であります。


Official Site
http://cotonohacobaco.com/

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