私の母は「断捨離」という言葉を嫌う。私が「断捨離」という言葉を使うと不機嫌になる。
昭和一桁生まれ、モノのない時代を生きてきた母はモノをとても大切にする。そして口癖は「もったいない」
先日、実家で着物を着る準備をしていたら「明日はこれを来て行きなさい」と母が洋服の箱を抱えて部屋に入ってきた。
取り出したるは50年近く前に母が誂えたというカシミアの着物用の防寒コート。
「5、50年⁉ いややそんなん!絶対着いひんし!しかも何?この古臭いボタン!無理無理、絶対無理!」
「こんなものに流行はない!」と言い張る母と険悪なムードになり、着る気など全くなかったが一応家に持って帰った。
箱にきちんと折りたたまれて入っていたコートは、まめに防虫剤を入れ替えていたというだけあって虫に食われることもなく新品同様の美しさを保っている。
翌日、帰りに実家に立ち寄った。着物を着たまま、コートを着たまま…。
そして得意満面で話す母の話を我慢して聞いた。
一昨年大掛かりな「断捨離」をしたはずの我が家はまたモノに溢れている。
また「断捨離」しないといけないと思うほど家の中が乱れているのは、いらないモノが増えたからではなく、モノをきちんと片付けることができないからかもわからない。これでは何度「断捨離」しても同じ状況から脱することはできない。
今年はモノを捨てる「断捨離」ではなく「片付ける」ことに徹してみたいと思う。
