日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

人民日報掲載、張氏、李氏の小論文に反論する。

2013年05月15日 | 日記

A.張、李氏、小論の主旨

1.5月8日の人民日報に掲載された小論で張、李氏が主張したいところのものを纏(まと)めれば、次のようになります。

 

a.日本は、カイロ宣言、ポツダム宣言を受け入れて無条件降伏した。

b.これら(本稿注: 両宣言がのべる所)の規定によって、台湾と付属島嶼(とうしょ)、澎湖(ほうこ)諸島が中国に復帰し、

c.のみならず、琉球問題も再議できる時が来た。

 

B.この主張は合理性を有するのでしょうか?

1.疑問 A : カイロ声明、ポツダム宣言の当事者、及び、継承者は誰でしょうか?

 

先ず、張、李氏の主張では中国の主体が欠落しています。「中国」とはどこの国のことでしょう? カイロ声明とポツダム宣言の当事者は、中華民国です。この国は今も台湾に存在します。中華人

民共和国を名のる彼らは、中華民国の存在を認めたくありません。その存在を認めれば、カイロ声明とポツダム宣言の当事者の地位は厳然たる事実として中華民国以外の何者も取って代わる

ことができないものの、その効力の継承者の地位に中華人民共和国が着いていることを演出したい中国共産党の人々にとって、その主張ができないという具合の悪いことになります。そのため

ここには、地図上の台湾が中国に復帰したという表現で、台湾を領土として存在する中華民国の正当な地位を剽窃しようとする意図が見えます。カイロ声明、ポツダム宣言の当事者、及び、歴

史の上での記念碑としてそれを継承できるものは誰でしょうか?

 

a.カイロ声明とポツダム宣言の当事者 : 中華民国政府(蒋介石 氏)

b.歴史上の記念碑として、カイロ声明とポツダム宣言を自国の事績として継承できる国 : 中華民国

 

2.疑問 B : 声明と宣言の効力の及ぶ期間は何時(いつ)まででしょうか?

常識的に考えて、宣言の効力は無期限に及ぶものではないと考えられます。

 

a.ポツダム宣言は第12条で次のように述べます。

 “12.The occupying forces of the Allies shall be withdrawn from Japan as soon as these objectives have been accomplished and there has been established in

accordance with the freely expressed will of the Japanese people a peacefully inclined and responsible government.” (原文)

 

「十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ」 

(和文)

 

b.即ち、条文にしたがえば、宣言の効力の及ぶ期間は、「平和的な傾向にある日本国民の自由に表明された意志に調和する責任ある政府が樹立されたとき」をもってひとつのメドとなります。こ

れを換言すれば、平和に対して責任を持ち、民主主義と言論、宗教、思想の自由を保障し、基本的人権の確立を執行することのできる日本国政府が国際社会において認められる時であり、この

政府が各国政府と平和条約を結んだ時だと言えます。

 

C.日本の主権回復と平和条約の締結

 

a.サンフランシスコ平和条約:1951年9月 8日  調印 (調印国 : 日本を含め49カ国)

                    1952年4月28日 発効

 

b.日華平和条約         :1952年4月28日 調印

                          1972年9月29日 日中(中華人民共和国)共同声明により失効

 

c.日ソ共同宣言         :1956年10月19日 調印

                       1956年12月12日 発効

 

d.日本の国連加盟     :1956年12月18日 総会において全会一致で承認    

 

e.日中共同声明       :1972年9月29日 調印 

 

f. 日中平和友好条約    :1978年 8月12日 調印

                      1978年10月23日 発効

 

D.結語

a.上記ように、各共同宣言、平和条約の締結、サンフランシスコ平和条約の締結、国連加盟と、日本は世界の各国からその平和義務を果していると認められて来ました。特に、サンフランシスコ

平和条約の締結をもって、日本国は連合国に対して、ポツダム宣言の各条項の履行を果していると認められ、以降は、世界の自由と民主主義諸国に連なる一主権国の責務として、平和義務を

自らに課したと言えます。

 

b.張、李小論のポツダム宣言の取り扱いは、あたかも時が1945年7月でフリーズ(凍結)して、その効力が現在に及んでいるかの書き方で、暴論と言えます。

 

c.張、李小論において、琉球を清代に遡(さかのぼ)って云々し、ポツダム宣言と沖縄の帰属を結び付け、新たに「歴史上懸案のまま未解決だった琉球問題も再議できる時が到来した」と中国共

産党機関紙において発表することは、中華人民共和国が沖縄を侵略する意図を内外にアッピールする、日本に対する干渉と言えます。

 

d.また、尚、日中共同声明の第3条に「日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」とあるのは、主権の存する日本国

民が、尖閣諸島、沖縄に対する張、李氏の如き主張と中華人民共和国政府の侵略を許容するものではなく、尖閣諸島、沖縄群島は、繰り返しになりますが、ポツダム宣言でいう平和を愛し、且

つ、主権の存する日本国民の、まさにその主権の存する「局限」の地域であることを、付け加えて置きます。

 

e.張、李氏に代表される考え方を持つ中華人民共和国の人々は、今や近隣諸国の人々を弾圧 (中華人民共和国内の人々、チベット、ウルムチは言うに及ばず、反日デモも日本人に対する弾

圧です)する、日本で言う悪代官もどきの人々になってしまいました。

 

f.私は、コミュニストによる一党独裁政権というものは、歴史における人間の一つの過渡性のものでしかないと考えています。彼らの一党独裁の国家形態はやがて衰亡し、他の政治制度(議会

制民主主義)の国に変わります。そして、この衰亡の過程は思うより早いかも知れません。何故なら、彼らの近隣の民族・諸国に対する理不尽な振る舞いや、自国での振る舞いを見ると、誰かが

異議を唱え、行動を起こすようになるからです。人は勇気を奮い起こして進むものです。何よりも他国の私がこのようなことを書いていること自体がその証しとも言えます。

 

g.中国の近現代の歴史はまだ浅く、人々は学び、知り、進むのです。

 

 

 

 

 

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