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日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

シュンペーター批判 Ⅰ

2025年04月30日 | 日記

 

 

A.シュンペーターの著述の中の一つの言葉である「種族衛生の意識的政策」

 

1.シュンペーターは、マルクスが予見した「社会主義」を、彼(シュンペーター)自身が発見した、「企業者機能と新結合、及び、銀行家による企業者への信用(貨幣)供与」によって、資本主義社会が拡大(発展)して行く、いわば、資本主義発展史観とも言うべき視点から、論考し、マルクスとは異なった方法で、社会が公共化して行くことを、私たちに提出しています。しかし、彼が提出した公共化は、私たちが望む、人々が自由である公共化ではなく、「中央集権的な社会主義」(『資本主義・社会主義・民主主義』・下巻・原版の通しページp793)です。

 

2.また、彼は、彼の著書である『経済発展の理論』の中で、恐慌の予防法と治療法について「計画経済」に言及(岩波文庫、同著下巻、p263)し、(恐慌に至る前の)個々の不況において現れる事象については、経済の好況期に修正されるダメージについては放任し、大不況期に陥る経済の好況・不況の波の中では修正され得ない損害と傷については、「信用供与によって支持しなければならない」と述べています。この信用供与政策は正しいのです。これは、現在、各国政府が行っています。

 

3.だがしかし、彼は、続く叙述で、「その政策(このブログの筆者注:政府による信用供与)は、種族衛生の意識的政策が事態の自然的放任からはけっして収めえない成果を収めたのと同じ意味で、成果を収めることができよう(同著下巻、p264)」、と述べます。この記述によって、シュンペーターは、「政府による信用供与政策」が優れて効果があることの例証として、(政府による)「種族衛生の意識的政策」を挙げます。

 

4.「種族衛生の意識的政策」は、ある特定の人種の他人種に対する優越性を鼓舞し、目的とする政策を進めることです。早い話が人種差別です。「種族衛生の意識的政策」の具体例をシュンペーターは述べていません。しかし、彼はこの短い語句の中に「衛生」まで含めています。人種差別に衛生意識が加わると、対象とされる人種・民族は収容・管理され、究極の場合はホロコーストで絶滅させられます。シュンペーターは、「私は社会主義を擁護するものではない」と述べます(『資本主義・社会主義・民主主義』・下巻・原版の通しページp790)。彼の意識には、生産を管理すると同時に、人々を管理するこの意識を含んでいることを、私たちは、第一に人権主義者として、同時に、自由主義者、民主主義者、自然環境保護主義者、科・化学技術主義者として批判し、知らなければなりません。

 

5.これは、シュンペーターに心酔する人たちにとっては厳しい指摘でありましょう。しかし、私たちは、人間の社会に関わっているのであり、人々が自由に資金を集められ、自分たちの思考の成果を財やサービスや福祉として、社会に提供して行く社会こそ、私たちの求める社会であり、シュンペーターはこの視点から批判されるのです。しかし、彼の心酔者たちは、「その先にシュンペーターの社会があるのだ」と言いましょう。しかし尚、私たちはそれを求めません。

 

B.シュンペーターの社会

 

1.シュンペーターは、マルクスの意識とレーニンの実践から、自己の社会理論を、経済の法則性として確立しようとした人だと、本ブログの筆者は認識しています。

 

2.マルクスの考えを簡単に言いますと、次のようになります。彼は、世界が商品の山でできていると考えました。そして、この商品の山が作られ、販売されて、それによって得たお金が、働く人(便宜的に労働者と呼びます)の賃金と、商品を作るための工場や機械を持っている人(便宜的に資本家と呼びます)のお金になり、再び商品が作られて行くサイクルを考えました。するとこのサイクルの中では、商品を多く作ってそれが売れれば、資本家はより多くのお金を得ます。しかし、労働者の取り分はあまり変わりません(労働者の相対的窮乏)。そして、資本家は、多く作って売れれば、もうけが増えるのですから、そのようにしたいと考え、工場で多く作る過剰生産が生じます。すると、今度は商品の単価は下がり、同時に売れないという不況となり、この不況に政治家がかかわる政策や、企業が支払わなければならない支払いができないという、信用経済の破綻の発生や、それが連鎖することによって、パニックが生じ、恐慌となります。この時、資本家は、労働者の取り分を減らすことによって工場や機械を維持する取り分を得ることができます。また、恐慌においては、労働者は失業(労働者の絶対的窮乏)し、資本家は破産し、生産は沈滞します。マルクスは、この商品生産に関わる労働者と資本家の関係を、非和解的対立へと結びつけ、労働者が(商品)生産を管理する社会主義を考えます。そして、マルクスは、この生産管理を国家として成功させるために、労働者階級の独裁国家を提案します。かつ、その時がいつであるか彼は明示しませんが、マルクスは、この国家は死滅するという予見を立てます。これがマルクスの社会主義です。

 

3.しかし、実際の歴史においては、社会の中で商品はその数を増し、生産量も増えることによって、その収入から得る労働者の取り分(賃金)も増え、労働者は豊かになりました。とは言うものの、残念なことですが、この社会の中に貧困は残っています。私たちは、すべての人々が社会の中で何らかのリーダーの地位につき、収入も豊かになることのできる社会を作って行かなければならないのです。

 

4. また一方、マルクスが考えた国家の形の核心でもある、労働者階級による独裁国家は、レーニンが、ロマノフ朝ロシアにおいて、ソビエトを樹立し1917年に実現させました。そして、ソビエトの歴史は、粛清の歴史として、私たちが良く知る所となっています。粛清の歴史は、現代においても、ウクライナ戦争で、人間に対するフィルタリングとして、現れています。私たちは、この人間が人間であることを否定する思想と歴史を終わらせ、博物館の陳列物としなければなりません。

(シュンペーター批判 Ⅱへ続きます。)

 

 桜


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