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聖教新聞 (2019/ 6/22) 〈スタートライン〉 NPO法人「スチューデント・サポート・フェイス」 谷口仁史 代表理事

2019年12月20日 21時30分38秒 | コラム・ルポ

〈スタートライン〉 NPO法人「スチューデント・サポート・フェイス」 谷口仁史 代表理事

2019年6月22日 聖教新聞


独りで悩まないで。どこかで希望は拾える!
 
 
 

 日本では今、不登校や離職、家庭不和や体調不良などから、ひきこもり状態にある人は、100万人を超えたともいわれる。それに立ち向かうように、アウトリーチ(訪問支援)を軸に、子どもや若者の支援に命を懸ける男がいる。NPO法人「スチューデント・サポート・フェイス」の谷口仁史代表理事である。社会的孤立に苦しむ人々への支援の在り方、問題解決のために一人一人ができることなどを聞いた。

 ――社会的に孤立する子ども・若者の支援において、アウトリーチ(訪問支援)に力を入れる理由は。

 専門家の配置や相談窓口の開設など「施設型」「来訪型」が公的支援の主流になっています。
 しかし、小学生から高校生までの不登校数の推移、15歳から39歳までの無業者数は、2000年代から見ても、高止まりして減っていない。
 また、私たちが、これまで相談を受けてきた6割以上の方が、過去にどこかで支援を受けていたことが分かっています。
 支援を受けても、必ずしも状態が改善できずに、孤立の問題が長期化、深刻化してしまっているのも現実だと思うのです。
 社会復帰に失敗してしまった当事者が新たな支援を受けようという意欲は、どんどん低くなっていくに違いありません。
 こちら側から“必要な支援を届ける”という発想に立たないと、社会的孤立は、むしろ悪化する可能性が高くなるのではないか。
 だからこそ、私たちはアウトリーチを基盤とした取り組みを展開しているのです。

自立するまで伴走!

 ――2003年に法人を設立し、アウトリーチの活動を開始。相談者の9割以上が、ひきこもりからの脱却、学校復帰、就職などの状態改善につながっているという。

 私たちのアウトリーチは、押し付けるものでも、場当たり的なものでもありません。配慮に配慮を重ねます。
 特に初動を大切にしています。臨床心理士、社会福祉士、産業カウンセラー、学校心理士、幼稚園・小学・中学・高校・特別支援学校教諭、理学療法士など、多職種の専門家の知見を生かします。そして、得た情報をもとに“どんな人たちと関わる中で傷つきが発生したのか”“その子にとって何が必要か”などを皆で検証します。
 当事者とは“価値観のチャンネルを合わせる”ことから始めます。さまざまな要因が複雑に絡み合い、心に傷を負っている当事者です。“専門家である私を受け入れてください”などという姿勢で訪問しては問題を悪化させてしまうだけです。まずは、当事者の“好きなこと”“興味があること”にスッと入っていきます。
 ゲームが好きであれば、私も徹底してゲームを勉強します。趣味の時間を共有する中で、信頼関係を築きながら、自立までの支援につなげていくのです。
 さらに、ひきこもり、不登校、非行などの背景には、いじめ被害や虐待、DV、家庭の貧困など深刻な問題が隠れている場合がほとんどです。
 背景にある原因を解決せずして、当事者の自立はありませんので、一つ一つの原因を一緒に解決していきます。
 私たちのアウトリーチとは、当事者が自立するまで責任を持って見届けていくもので、分野横断的かつ継続的なもの。つまり当事者との“伴走型支援”です。
 03年度から18年度まで、3万3000の家庭に相談員を派遣し、9割以上の人が孤立状態を改善することができました。
 こうした実績が認められ、私たちは今、公的な支援機関である「佐賀県子ども・若者総合相談センター」「指定支援機関」「地域若者サポートステーション事業」などを国や県から受託し、当事者の自立を目指し、支援の入り口から出口までの広範な役割を担っています。
 さらに、各地の公的支援の現場でも今、徐々にアウトリーチの手法が取り入れられています。

家庭を支える仕組み

 ――若者支援に取り組もうとしたきっかけは。

 教師を目指していた大学時代、学力の低い生徒の家庭教師を引き受けることになりました。当初は学習障害が疑われていましたが、実際は違いました。家庭に入ってみると勉強に集中できない原因が見えてきたのです。
 親からの日常的な暴力がありました。勉強を教えるとともに、親御さんにも子どもとの関わり方を提案。事態が好転するに従い、学力も向上していきました。家庭に入らないと見えない姿があるということを痛感させられました。
 そしてもう一つ。
 私は中学1年の時、いじめに遭っていた親友を支え続けていました。彼は立ち直り、後に就職もし、立派になっていきました。
 私が大学4年の時、彼から相談があると電話がかかってきました。久しぶりに深刻な声でした。「ドラッグに手を出した」と――。聞くと、私が彼を守ったように、親友も高校で不登校だった子を支えていました。彼は、その子にドラッグを勧められ、断り切れなかったのです。
 精神的にかなり追い込まれていることを感じ、すぐに対策を取ろうとしましたが、これが最後の会話になってしまいました……。
 彼をドラッグの道に引きずり込んだ人間を許すことはできなかった。私は、その人間を捜し出しました。
 話をしてみると、その本人も問題を抱えた家庭に育ち、小・中学校時代は不登校。高校は中退していました。
 先ほどの家庭教師の体験と結び付きました。子どもを家庭から支える仕組みがないと、“悪循環”は変えていけない、そう感じたのです。

人材が埋もれている

 ――孤立状態にある人に、周囲の一人一人が支援できることは。

 まずは、誤解や偏見をなくすことです。どうしても、ひきこもり状態にある人に対し、当事者の“甘え”“怠け”だという偏見が大勢をしめてしまう時がある。だけど、全然違う。
 家庭や学校など、子どもだけでは変えられない環境要因があって、問題が生まれている。むしろ、社会で孤立する人は、まじめな人が多いというのが実感です。学歴や社会的地位に関係なく、誰にも起こり得ることでもある。人口減少が進む現代にあって、ひきこもりによって大切な人材が埋もれてしまうのは大きな損失であるといえます。
 だからこそ、一人一人が、社会全体の課題、責任だと思って向き合ってほしい。
 その上で、周囲に当事者がいれば、各都道府県などに設置されている公的機関に相談することが大切です。「子ども・若者総合相談センター」「ひきこもり地域支援センター」や「生活困窮者自立支援制度」等があります。包括的な支援を受けられますので、ここから自分に合った機関を探すことができます。
 世間には、本人の望まない“支援”を押し付けたり、高額な代金を請求してきたりする業者も存在しています。インターネットで検索した場合、悪徳業者が上位にヒットするケースもある。
 こうした業者に注意しながら、二人三脚で自立までの段階的な見通しを示してくれる人、継続的な支援をしてくれる人を見つけることが解決への第一歩になる。そうすれば、どこかで必ず、希望を拾うことができます。
 私は社会的孤立や排除を生む、さまざまな要因に対し、立ち向かい続けていきたいと思います。

 たにぐち・ひとし 1976年、佐賀県生まれ。社会的孤立に関する子ども・若者支援を行うNPO法人「スチューデント・サポート・フェイス」の代表理事。その活動はNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介された。佐賀県子ども・若者総合相談センター長、佐賀県ひきこもり地域支援センター長などを務める。

 【編集】伊藤大輔 【インタビュー写真】吉橋正勝 【レイアウト】清水湧揮

 ※イメージカットはPIXTA


前々職場のパワハラから、自分も50代にして引きこもりになりそうだったから、人ごとではないんだよね。

とても興味深い記事だよ。


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