大阪のまちづくりぶろぐ

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木曽川と大阪を結ぶもの~福沢桃介と関西電力古川橋変電所~

2012年05月11日 | その他
今回は、大都市大阪の成立過程で不可欠なインフラのうち、大きな役割を果たしている電力について、その発展期について書いてみたいと思います。

京阪電鉄の京橋駅から、京都方面へ乗り門真市の少し向こう、古川橋駅を過ぎた進行方向の右手に、倉庫のような、工場のような、異様に大きい建物があったことをご存じな方が多くおられることと思います。相当古い建物だったので、現在では解体されているようです。この建物に興味をもったので少し調べてみました。

まず、予備知識として、福沢桃介という人をご存じでしょうか?明治元年(1868年)武蔵国(現、埼玉県)生まれ、かの高名な福沢諭吉の娘婿となり、多くの仕事を経て、明治の終り頃に名古屋電燈で木曽川水系の電源開発に取り組み、その後、大正9年に大同電力株式会社を立ち上げ、木曽川水系の電源開発および大阪方面への送電線の工事を行っています。これにより、木曽川の水力発電による電力を、深刻な電力不足の状況の大阪へ送ることができるようになりました。昭和12年(1937年)逝去。
福沢桃介さんは、木曽川水系で、八百津発電所をはじめとして、賤母発電所、大桑発電所、桃山発電所、読書発電所、落合発電所、大井発電所を建設し、関西へ電力を送っています。これらの発電所は、現在は関西電力の所有となっています。

さて、本題の、古川橋駅近くの古い大きな建物について、近くへ行ったついでにウロウロとまち歩きしてきました。既に述べましたが、大きな古い建物はなく、変電所の建物と鉄塔などの送電関係の設備がある、大きな変電所がありました。関西電力の古川橋変電所の看板がかかっておりました。入口の横に、下のような大きな記念碑があり、春先に行ったので横に植えてある桜が満開でした。


(記念碑の写真)

記念碑の横に、下の写真のような説明板があり、そこに以前見た、古い建物の写真もありました。

(説明板の写真)

説明板は、既に解体した変電所建物についての説明でした。内容は、はるか木曽川で発電した電気を、大阪送電線でこの地の大同電力大阪変電所に送電し、そしてこの変電所から大阪および周辺地域に送電していたと書いています。

(大同電力大阪変電所の写真、説明板から拡大したもの)

記念碑の銘板は、達筆すぎて読めませんでした。説明板によれば大同電力の創始者、福沢桃介さん自筆の書だそうです。

「曾水一条電 浪華萬燭春」

読み方は、「そすいいちじょういなずま なにわばんしょくのはる」で、意味は、「木曽川の一筋の水が電気となり、浪速のまちをあかあかと照らす。まるで春のようだ・・・」

福沢桃介さんは、木曽川で発電した電力を大阪へ送電できたことを喜び、感慨深く、また、大阪の町が発展していくことを望んで、さらに、その思いを後世の人たちに伝えたいとこのような詩を残し、銘板にして変電所の正面に掲げたのではないでしょうか。もし、今日の大阪の繁栄をご覧になったらさぞかし喜ばれるのではないでしょうか。また、関西電力は、このように記念碑の形で残すことで、桃介さんの思いと変電所が大阪のまちづくりに役立ったことを、後世に伝えようとしているように思いました。

小生、学生時代(随分前のこと)に、旧中山道(主に木曽路)の妻籠、馬篭宿場他に旅行したことがあります。その時に、木曽川に沿って水力発電所があったことを思い出しました。大河木曽川、奥深い山の緑の中に、近代の建築物である発電所がポツンと存在しているが、周辺の景色、景観になんら違和感なく存在していたことが印象的でした。木曽川と関西・大阪、一見関係ないように思いますが、電気の道でつながっていることが、よくわかりました。
東北大震災以降、よく聞く言葉に「絆」があります。木曽川と関西・大阪、この間を電気の道(送電線)でつながっている。このことも、「絆」、「縁」と言えるのではないでしょうか、大事にしたいと思う今日この頃です。もし、将来、木曽路へ行くことがあったら、桃介さんの遺した、水力発電所・桃介橋等の近代建築遺産を見て、明治の偉人たちの強い想い・信念他を是非共有したいと思います。

(ところで)
福沢桃介さんのことを、webでしらべてみると、川上貞奴さんとの関係を書いてあることを見つけました。川上貞奴さんといえば、明治時代、夫の川上音二郎さんと共に、欧米へ講演旅行を行い、「オッペケー節」で大盛況をおさめた、日本で初めての女優として有名です。学生時代の日本史の教科書に書いていました。川上音二郎さんと死別後に、福沢桃介さんとの縁があったようです。
双方、歴史に名を残すもの同士、お互いひかれあうものがあったのでしょうね。

(参考HP)
・関西電力 東海支社HP 木曽川開発の歴史
  http://www1.kepco.co.jp/tokai/kisogawa/kisogawa.htm
・南木曽町観光協会公式HP 福沢桃介記念館 
  http://www.town.nagiso.nagano.jp/kankou/midokoro/nagiso/midokoro_43.html


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