夢中で木の根元を掘っていた僕たちは、掘るべき木を求めどんどん森の奥に入っていった。
サッちゃんはさすがにクワガタがいる木を分かっているだけあって、虫かごにはクワガタが沢山入っている。
他の二人マア君とエイジ君ももう既に一・二匹捕まえている。
しかしどの木の下にクワガタがいるのか未だに分からない僕は、友達が掘ってない木をがむしゃらに掘ってはみるもののまるでクワガタが出てこない。
4人とも次の木次の木と掘っては掘っては森の奥へ移動していった。
ふと気付くと僕たちの周りには既に道らしい道はなくなっている。
僕はこれ以上あまり進まない方がいいなと思いながらも、一人だけクワガタが取れない悔しさに穴掘りに夢中になっていた。
その時、虫かごにクワガタがいっぱい詰ったサッちゃんが手を休め辺りを見回した後、僕たちにだけ聞こえるようなささやき声で話しかけてきた。
「うしろ、うしろ。」
何だろう?と振り返ると、今まで通ってきた道のある辺りに打ち付けられた杭の上に大きなトンビがとまっている。
しかも僕たちが穴を掘っている所からかなり近さだ。
よく空を飛んでるのは見ていたが、間近で見ると明らかに僕たちより大きい。
その茶色い翼をたたみたたずんでいる姿でさえ、僕たちとあまり変わらないほどの大きさがある。
もし翼を広げようものなら、小学校低学年の子供ではとても適わないだろう。
一瞬にして緊張が走った。
明らかにトンビは僕たちを凝視して目を離さない。
僕はトンビに食べられるんじゃないか、と言う恐怖に駆られていた。
他の3人もどうやらそうだったらしい。
トンビと僕たちの沈黙とにらみ合いはしばらく続いた。
その緊張を破るようにエイジ君が真っ先に行動を起こした。
エイジ君はみるみる森のさらに奥へ逃げていく。
それに気付いたマア君もエイジ君に続いて無言で駆け出した。
「ヨッちゃん。」
サッちゃんの呼びかけにようやく僕も我に返り、サッちゃんと一緒に先に逃げた二人を追いかけることが出来た。
どれだけ駆けただろう、サッちゃんと僕は、大きく息をしながら待っていてくれたマア君とエイジ君に追いついた。
幸いトンビは追ってこなかったらしい。
しかし周りを見回しても深い緑が包み込むだけで、帰るべき道は見当たらない。
「どうする?」
「もうトンビのいる方へは帰れないね。」
「山の方へ行ってみよ。」
サッちゃんのひと言で、僕たちはとりあえず山へ向かう事になった。
ここへ来る途中通り過ぎた頂上に神社のある山だ。
いつも遊び場にしていた山なので、そこにたどり着きさえすれば問題なかった。
僕たちは、多分ここから南にあるであろう山へ向かって、多分南だと思う方向を向き歩き出した。
つづく![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/cat_1.gif)
(迷子の古事記 2013.11.15)
サッちゃんはさすがにクワガタがいる木を分かっているだけあって、虫かごにはクワガタが沢山入っている。
他の二人マア君とエイジ君ももう既に一・二匹捕まえている。
しかしどの木の下にクワガタがいるのか未だに分からない僕は、友達が掘ってない木をがむしゃらに掘ってはみるもののまるでクワガタが出てこない。
4人とも次の木次の木と掘っては掘っては森の奥へ移動していった。
ふと気付くと僕たちの周りには既に道らしい道はなくなっている。
僕はこれ以上あまり進まない方がいいなと思いながらも、一人だけクワガタが取れない悔しさに穴掘りに夢中になっていた。
その時、虫かごにクワガタがいっぱい詰ったサッちゃんが手を休め辺りを見回した後、僕たちにだけ聞こえるようなささやき声で話しかけてきた。
「うしろ、うしろ。」
何だろう?と振り返ると、今まで通ってきた道のある辺りに打ち付けられた杭の上に大きなトンビがとまっている。
しかも僕たちが穴を掘っている所からかなり近さだ。
よく空を飛んでるのは見ていたが、間近で見ると明らかに僕たちより大きい。
その茶色い翼をたたみたたずんでいる姿でさえ、僕たちとあまり変わらないほどの大きさがある。
もし翼を広げようものなら、小学校低学年の子供ではとても適わないだろう。
一瞬にして緊張が走った。
明らかにトンビは僕たちを凝視して目を離さない。
僕はトンビに食べられるんじゃないか、と言う恐怖に駆られていた。
他の3人もどうやらそうだったらしい。
トンビと僕たちの沈黙とにらみ合いはしばらく続いた。
その緊張を破るようにエイジ君が真っ先に行動を起こした。
エイジ君はみるみる森のさらに奥へ逃げていく。
それに気付いたマア君もエイジ君に続いて無言で駆け出した。
「ヨッちゃん。」
サッちゃんの呼びかけにようやく僕も我に返り、サッちゃんと一緒に先に逃げた二人を追いかけることが出来た。
どれだけ駆けただろう、サッちゃんと僕は、大きく息をしながら待っていてくれたマア君とエイジ君に追いついた。
幸いトンビは追ってこなかったらしい。
しかし周りを見回しても深い緑が包み込むだけで、帰るべき道は見当たらない。
「どうする?」
「もうトンビのいる方へは帰れないね。」
「山の方へ行ってみよ。」
サッちゃんのひと言で、僕たちはとりあえず山へ向かう事になった。
ここへ来る途中通り過ぎた頂上に神社のある山だ。
いつも遊び場にしていた山なので、そこにたどり着きさえすれば問題なかった。
僕たちは、多分ここから南にあるであろう山へ向かって、多分南だと思う方向を向き歩き出した。
つづく
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(迷子の古事記 2013.11.15)