遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古伊万里片身替染付宝相華紋陽刻瓢箪形皿

2024年03月06日 | 古陶磁ー全般

以前、色絵丸文が描かれた唐草陽刻瓢箪形中皿を紹介しました。17世紀後半に作られたと思われるこの皿は、唐草紋の陽刻が施された細長の瓢箪形ボディに3つの色絵丸紋が描かれています。かなり以前にこの皿を入手しました。

【古伊万里色絵丸文唐草陽刻瓢箪形中皿】(細長の瓢箪形皿)     16.1㎝x12.8㎝。高台、9.9㎝x7.8㎝。高 2.4㎝。江戸前期。

以来、瓢箪形の皿に興味をもち、骨董市やネットオークションでかなりの数の品を見てきました。そして、いくつかの事に気がつきました(あくまでも個人的見解です(^^;)。まず、瓢箪型の伊万里皿は、明治までずーっと作られていること、色絵が多い事、瓢箪の形は、ふっくらとした安定型が多く、細長い瓢箪皿は、江戸後期以降、量産されるようになった事です。

よく目にするのは、このような形の瓢箪形皿です。

【伊万里唐草陽刻色絵松竹丸紋瓢箪形皿】(ふっくら瓢箪形皿)   12.7㎝x12.7㎝、高 1.9㎝。高台径 7.4㎝x7.4㎝。江戸時代中期以降。

その他、時代が下がるにしたがって陽刻がシャープでなくなり、江戸後期以降は陽刻無しの品物が多くなりました(大聖寺伊万里、コピー品などはこの限りではありません(^^;) 。

瓢箪の形からすると、私の古伊万里色絵丸文唐草陽刻瓢箪形中皿(最初の写真)は、細長で近代の品ということになります。しかし、これは、どうみても江戸前期の品です。でも、同じような品を他に見たことが無いのです。すると、何かの拍子にたまたま造られた品か?

うーん、わからない・・・・

ということで、悶々とした日々を送っていた(相変わらず大袈裟)ところ、最近、ネットオークションで次の品を見つけ、入手しました。

15.9㎝x12.8㎝。高台、9.9㎝x7.4㎝。高 2.4㎝。江戸前期。

おおこれは、他に類例があるのかと悶々としていた細長の瓢箪形皿そのものではありませんか。しかも染付け、さらに片身替わり。

皿の左側に、染付けで唐草紋が描かれています。陽刻の唐草紋と同じ図柄です。墨弾きで輪郭線を描き、地の部分は濃、花びら、葉は淡、と濃淡で塗り分けています。細長色絵瓢箪形皿の場合には気づきませんでしたが、染付け部分には、陽刻が施されていません。一方、上のふっくら形の色絵瓢箪形皿では、全面が陽刻です。細長色絵瓢箪形皿も陽刻模様は今回の染付片身替瓢箪形皿と全く同じで、左側に陽刻はありません。そして、三つの色絵丸紋も、この陽刻の無い部分に描かれています。

それにしても、この図柄は珍しい。ず~~っと御無沙汰(10年?)の柴コレを探ってみることにしました。8巻まで全部目を通すとなると気が遠くなるが・・・と、まずⅠ巻をひもとくと・・

早々に、似た模様がありました(57頁)。

1660~1670年代とあります。

今回の品は、陽刻部が唐草紋であるだけでなく、さらに、片身で染付の唐草紋が描かれています。いわば、ダブル唐草(^.^)  しかも、古典的な唐草紋です。そこで、敬意を表して、「宝相華紋」としました。名付けて、「古伊万里片身替染付宝相華紋陽刻瓢箪形皿」。「宝相華紋」は、「染付・・・・」と「・・・・陽刻」の両方にかかっています(^.^)

実は、今回の品を入手する2週間ほど前に、同手の瓢箪型皿がネットオークションに出ました。あれよあれよという間にどんどん上昇。最終的には、諭吉センセーが17人も並ぶという、トンデモナイ落札額になってしまいました。当然、ギブアップ。

その後すぐ、別の業者さんが同種の品を出品され、めでたく私の手元にやってきた次第です。

その訳は、

高台にホツ(写真右下)有り、発色(特に裏面)がイマイチ、だからでしょう(^^;

しかし・・・

箱の中に、古い紙きれが。

「粟田美術館蔵 額入皿と同様  秋田市”辻兵”家旧蔵の品」

粟田美術館に、同じような品が額に入って展示されている。秋田きっての素封家、辻兵に所蔵されていた品。

これが本当なら、やはり、細長の【古伊万里色絵丸文唐草陽刻瓢箪形中皿】は、悶々とするだけの意味がある品だったのでしょう(^.^)

 

 


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8 コメント

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Unknown (ぽぽ)
2024-03-06 12:46:24
遅生さんへ
!!!遅生さんでしたか(^^)
私も遅生さんのブログの形と同手で染付の衣装がよく名品だと眺めておりました。
私も1回目はあまりの高騰に眺めていましたが、2回目は札いれました笑
ご存知かもしれませんがこの出品者さん独特で良いものは1000円スタートですがギリギリに恐らくサブで自分の売りたい最低金額を入れるようなやり方されているようです。
遅生さんはそのギリギリ超えた設定最安でお買い得だったんではないでしょうか?
多分私は3番目笑笑かなり無理しました。
多分履歴あるので今後同士討つは回避できそうです(^^)
因みに秋田の辻兵は名前を聞く実業家だったと思います。今はそうでもないかもですが昔はかなり栄えていた名家です。商工会の会長をやったり検索すると結構情報あります。
それしても良い物手にされましたね。羨ましい(^^)
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遅生さんへ (Dr.K)
2024-03-06 13:48:09
良いものを手に入れましたね(^_^)
古伊万里の値段が全体的に下がってきているとはいえ、それでも、やはり、この手になると、「最終的には、諭吉センセーが17人も並ぶ」という結果を招くのでしょうね!

素晴らしいですね(^-^*)
元は、染付と色絵の対で作られていたものと思われますよね。
故玩館に来て、やっと、また一緒になれたということですね(^-^*)

染付の文様の時代を柴コレⅠの57頁で確認されたのですね。この文様には古格があり、また、珍しい文様でもありますから、この文様は良い基準になりますよね。
そうすると、この染付瓢簞形皿は、1660~1670年代に作られた可能性が高くなりますね(^_^)
この染付瓢簞形皿と色絵瓢簞形皿は対で作られたものと思われますので、色絵瓢簞形皿も1660~1670年代に作られた可能性が高くなりますね(^_^)
まさに、江戸前期に作られたということになりますね(^_^)

ところで、細長い瓢箪形皿の場合には、色絵や染付の文様部分には、陽刻が施されていないけれども、ふっくら形の色絵瓢箪形皿の場合には、全面が陽刻なんですね。
これを読んで、私も、私の瓢簞形皿を良く見てみましたら、新しく買った瓢簞形皿も以前に買った瓢簞形皿にも、文様部分には陽刻が施されていないことに気が付きました。
文様部分にまで陽刻を施しているかいないかが、江戸前期か江戸中期かを区分する一つのヒントになるのだろうかと思いました、、、?
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ぽぽさんへ (遅生)
2024-03-06 15:52:33
久しぶりの皿の落札です。
以前は、毎日、なにがしかの品を落とさないと眠れなかったです(^^;
が、もはや、資力、体力、気力が3拍子で衰えてきていますから、チェックもせずに眠る事が多いです(^.^)

染付けですから、ひょっとして競合するかもしれないとは、私も思っていました。普段、こういうきちっとした絵付けの陶磁器に手を出すことはないのですが、今回ばかりは後へ引けませんでした(^^;
この品は、Drがおっしゃるように、単独より、対である方が価値が増すと思います。
実は2年前、私が所有する江戸時代の画家の絵に深く関係した資料が出たことがあります。二つの品物が揃えば、日本美術史の半頁くらいは書き換えられるくらいの意味がありました。その時は、福沢先生、50人までくらいついたのですが、無念にも破れました。
それ以来、ネットオークションはほんの遊び程度にしかやってなかったのです。
今回は久しぶりに熱くなりました(^.^)
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Dr.Kさんへ (遅生)
2024-03-06 16:35:12
私は、染付け伊万里の皿を必死で入手した記憶はほとんどありません。まあ手元に置いておこうかと思って買った物ばかりです。
が、たまにはこんな事もあります(^^;
この皿は、酒田の人さんやぽぽさんがコレクションする類の物ですね。

最初に出た染付皿には、驚くような値がつきました。その品には、目跡が一つありました。私の色絵瓢箪皿と全く同じです。
ところが、私が落札した染付瓢箪皿には目跡はありません。チョッと引っ掛かりますが、例によって、まあ、それくらいはいいか、です(^^;
それに、手取りは全く同じですから(^.^)

陽刻が部分的になされていないのは意外でした。全面にあるものだとばかり思ってました。初期の瓢箪皿は、絵を描く事に配慮して陽刻が施されているのですね。以前、Drもアップされた江戸中期の陽刻染付け皿(丸型)、確か同様の皿を私もアップしました。絵と漢詩が書いてあったと思います。陽刻との関係がどうなっていたか、もう一度見てみようと思います。例によって、すぐには出てこないかも(^^;
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遅生さんへ(その2) (Dr.K)
2024-03-06 19:43:12
陽刻が施され、そこに絵と漢詩が書かれているものというものは、多分、私の場合は、2021年7月3日に紹介した「染付 虎人物詩句文 輪花皿」(江戸中期~後期)のことだろうと思いますが、それは、虎と人物の陽刻文の所に染付で漢詩を施したものですね。
それですと、後に染付で漢詩を書くことを予定しているのか、虎と人物の陽刻文様の空いた部分に染付で漢詩を書いたのかがわかりませんね(~_~;)

私も、「陽刻が部分的になされていないのは意外でした。全面にあるものだとばかり思ってました」。初期の色絵皿は、後に色絵を施すことに配慮して、その部分には陽刻が施されていなかったのですね。
それで、2022年3月24日に紹介しました江戸前期の「色絵 花丸文 唐草陽刻 隅切小角皿」を、もう一度、良く観察してみましたら、やはり、色絵のあるところには陽刻が施されていないことが分かりました。
先入観で見ているので気づかなかったのですね(~_~;)

中期以降の陽刻文のある色絵の古伊万里につきましては、まだ探していないのですが(もっとも、私のコレクションには存在しないのかもしれませんが)、今後、気を付けて見ていこうと思います。
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Dr.Kさんへ(弐) (遅生)
2024-03-07 07:52:03
漢詩、虎絵の陽刻伊万里皿、確か、私も同じでした。
夕べあちこち探してみたのですが、やっぱり見つかりませんでした(^^;
もう少し時間をかけてさがします。
図録の写真ではわかりませんね、触ってみないと。

伊万里が手本にした中国陶磁器はどうだろうかという疑問が湧きました。古染付や南京赤絵に陽刻があったのか、その場合、絵付けと陽刻との関係はどうか、それとも伊万里のオリジナルか、興味深いですね。
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遅生さんへ (酒田の人)
2024-03-07 23:53:15
この染付の品は珍品ですね!、初めて見ました
明らかに同じ型で作られていますが、片身替りで染付というのは
類品のないタイプの品だと思われます。
個人的な見解ですが、やはり染付の品の方が若干時代が下がると思われます
裏面の唐草繋ぎが古九谷様式の時代の特長ではない点が気になる部分です。
とは言え、約束通りにならないのが骨董の世界ですから
このような品を入手することが骨董収集の醍醐味なのは間違いありません。
さすがに遅生さんです。
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酒田の人さんへ (遅生)
2024-03-08 07:40:35
今回ばかりは、Dr.をはじめ、酒田の人さんやポポさんたちを差し置いて、しゃしゃり出ました(^^;
おまけに、荷物到着で一悶着。
もうこれ以上、ガラクタを増やすな、の厳命が下っていたからであります(^^;
これは、ガラクタではない、と主張しても結果は目に見えていますから、グッと我慢。
ま、それだけの価値がある物でよかったです(^.^)

裏の唐草模様については、私もチョッと時代が合わないなーと思っていました。でも、唐草紋の使い始めのパターンなど誰にもわからないのだし・・・いつものように、まあいいか(^^; 
それにしても、表の染付との意気込みの落差が余りにも大きいですね。
メチャクチャポジティブに言えば、これも珍品かと(^.^)

ps. 18世紀前半とするのが、無難な所だと思います。
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