今回は、懐石用吸物盆です。
箱には、「春次作 溜塗桐絵栗吸物盆」とあります。
金森春次は尾張の塗師で、蒔絵師山本春正の分家十家の一人です。明治・大正期に活躍し、風雅に富んだ漆器を多く残しています。
箱の中に入っていたのは・・・
丸盆、6枚です。本来は10枚組だったのでしょうが、4枚失われています。
径 23.7㎝、高 1.9㎝。明治。
全部の盆に、桐が二つ描かれています。金泥と銀泥の中間のような漆絵です。
最初、型摺りの絵かと思ったのですが、桐は筆で描かれています。
見れば見るほど、同一の型摺り絵に見えます(^^;
2枚の盆を較べてみましょう。
うーん、この桐の絵、ちがう所は? ・・・・・
ありました!◯◯◯◯。
では、もう一方の桐絵は・・・
これはもう、今はやりの間違いさがしですね。
絵師は、遊びで、小さな差異を仕掛けたのでしょうか(^.^)
さて、原点に戻って、この盆の塗りはというと、
栗材の木地を生かした塗り方です。木目の凸凹が残っています。
溜塗は、生地の上に赤系統の塗り(弁柄、朱漆など)を施した上に、透明な漆(透漆)を塗ったものです。ですから、透明感のある赤色が特徴です。
今回の品は、そのような一般的な溜塗とは少し異なり、透き漆塗りは最小限にとどめて、栗の木肌を全面に出しています。
裏側も栗の味わいが生きています。
そして、中央には大きく黒の真塗りが。
隠れた所に渋い味わい。
なかなかにニクイ演出ですね(^.^)
最初の2枚の盆較べの右側の盆のみ、「四四」の桐ではなく「四三」の桐になっていますね。
ホント、裏側の中央の大きな黒の部分を、こんなに立派に塗りで仕上げる必要はないですよね。
裏側で、誰も見もしないんですものね。
江戸の粋のようなものが、まだ、残っている感じですね(^-^*)
あの~、余計なことですが、最初の文章に「吹物盆」とありますが、「吸物盆」ですよね、、、。
これぞ職人魂でしょうか。
これも品のある素敵な盆ですねぇ。
大人の品ですね。
吹は早速訂正しました。
考えてみれば、反対の意味なのに、吹、吸、どちらも「すい」なのですね(^^;
吸物盆というからには、吸い物をのせるのだと思いますが、使い方がよくわかりません。
多分、給仕をするための盆ではなく、配膳の一部にするのだと思います。