遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

黄瀬戸茶碗

2019年03月29日 | 古陶磁ー全般
たまには名品、やはり迷品?

たいした品が並んではいない、いつもの骨董屋。

オヤジがいつになく嬉しそうな顔をして、奧から出してきた風呂敷包み。

もったいぶって開けると、名品の予感。

『東京の陶々庵が欲しがっていたけど・・・・・・』

この種の殺し文句にからきし弱い私。
大枚をはたいて、一目散に家へ。






黄瀬戸の茶碗

発掘伝世でしょう。
上品な枇杷色の釉薬がかかっています。
使われているのはキメの細かな白肌色の土で、高台から上3分の1ほどは土見せです。
薄造りで、一気に引き上げた轆轤の勢いが伝わってきます。

室町時代の灰釉茶碗ですが、これはもう、黄瀬戸の茶碗と言ってよいでしょう。

しかし、黄瀬戸茶碗が素人の所へやって来る、そんなことがあるだろうか?

この時代の灰釉茶碗は、瀬戸、美濃両方で作られています。
この茶碗は、どちらでしょうか?



しばらくして、知人から、陶片をもらいました。





これは、まぎれもなく、灰釉茶碗の陶片です。
しかも、瀬戸。なぜなら、知人は瀬戸の人(笑)。

私の茶碗と比較してみます。





両者、似ているけれども、違いは歴然。

釉薬が全然違います。
透明感があり、ツルツルとした肌触り、冷たい感触の瀬戸に対して、
鈍いマットな枇杷色、柔らかでしっとりとした感触。

荒く堅い土の瀬戸に対して、
キメ細かく柔らかな土。全体が薄造りです。

削り出し高台の瀬戸に対して、
付け高台。

このように比較していくと、
私の茶碗は、美濃で焼かれた黄瀬戸茶碗と言えるのではないでしょうか。


謎の石噛み

もう一つ、この茶碗の特徴は石噛みです。

美濃や瀬戸の中世陶で、こんなにも多くの石を噛んだ品を見たことがありません。








ざっと見渡したところで、少なくとも8個の石を噛んでいます。

石の所から、短いニュウが伸びていますが、雨漏りもみられます。

唐津などには、意図的な石噛みもあるようです。
が、味をだすためだけなら、この茶碗のように多くの石を噛ませる必要はないでしょう。

これだけの石が入っていても、この薄造り。しかも、内側は、石の混入が感じられないほど、なめらかに処理されています。

わざわざこのような土を用いた理由は、何なのか、不明です。


お茶を飲んでみる

この茶碗が発掘されてから、どれだけの人の手にのったのでしょうか。
瀬戸の陶片と較べると、あまりの違いに驚きます。
数百人の喫茶で使い込まれた位では、ここまでなめらかな感触にはならないでしょう。

とにかく、おどろくほど手にフィットします。
しいて表現すれば、たなごころに優しい。

そこで、茶を点ててみました。
ちょうど良い具合の茶だまりで、心得の全くない私でも、そこそこにできました。





うーん、のみやすい。

かつて、大コレクターのお宅にうかがったとき、犬山城主成瀬家伝来の光悦茶碗で茶をいただきました(手が震えた)が、お茶を飲むには私の茶碗の方がいい。














コメント (2)
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