珍友*ダイアリー

管理人・珍友の書(描)いた詩や日記、絵や小説をご紹介☆

『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第七話

2006-09-29 16:33:47 | 第二章 月の雫
「で?今夜は『自分ち』で寝れそうかい?」 
 座敷に戻ると、彼女が言った。顔はニヤニヤしている。
「ああ、夜までには完成すると思う」
「しかしお前ら、信じらんないね。本気でバスん中住もうとするなんて」
「しょーがねーだろ、金ねぇんだから。まぁ、住むっつったって、そんな大したことできないけど」
 かつての遊び仲間で、2つ年下の太一が、「家がねぇ、金がねぇ」と、ほざくおれに、「いいもんがありますよ」と、そのバスを紹介してくれたのが今朝のことだ。最初こそ、ふざけんな、と思ったおれだったが、今朝から太一と、他に呼んだ仲間2人と、4人でそのバスを洗ったり、周りの草を刈ったりしているうちに、案外住めるかも、と思ってきたのである。ここからほど近い海辺に最近乗り捨てられたという、もう動かないそのバスは、もともと運転席以外に座席のない、立ち乗りのバスだった。潮風や雨の影響をまださほど受けておらず、割かしちゃんとした形で残っていた。
「金がないなら、『ガーリック』で働いたらどうだい。昨日マスターが、お前を雇ってもいいと言ってたぞ」
 サラ婆が『ガーリック』に酒を飲みにいくのは、この家の少女たちを仕事に送り出した後である。おれが京一の家に泊まった昨夜は、おれたちが出てった後、ちょうど入れ違いに店に来たようだ。
「悪いけど、おれ、バーテンには向いてないわ。工事現場とかのが性にあってる」
「まあ、お前、体力だけはあるからな」
「うっす」
 わざとごつい声で言って、ふざけて、日に焼けた筋肉質の腕を突き出した。その時、壁の時計が目に入った。
「あ、そろそろ行くわ」
 休憩時間がそろそろ終わる。
「ああ、ま、ぶっ倒れねぇ程度にがんばんな」
「おう。じゃあな、また遊びに来る」
 そう言うと、おれと太一は、サラ婆の家を出ていった。



★最後まで読んでくれて、ありがとうございます!★
人気blogランキングへ←ランキング、参加してみました♪クリックで加点されます。よかったら、応援おねがいします☆




最新の画像もっと見る