珍友*ダイアリー

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第九話

2006-09-29 16:32:54 | 第二章 月の雫
「なに、せいあちゃん、彼氏いんの」
「今はいないけど。前は太一とつき合ってたよねー」
 へっ? 傍らの太一を見る。
「太一、おめ、そんなこと一つも言ってなかったじゃねーか」
「やっ、だいぶ前の話だし、それにちょっとの間だけっすよ。今はもう友達だし」
 彼が少し慌てて、かわいらしく(キモチワル)、きまり悪そうに笑う。と、
「あーーっ、おれ、マナんとこ行かねーと。最近、顔出してなかったから」 
 思い出したように声をあげた。
「おい、家作りどうすんだよ」
「いや、これホント、マジなんすよ。あいつ最近、元気ないみたいで。おれ、ここんとこ忙しくて、ほとんど顔出してやれてなくって。すんません」
 マナとは、太一の5つ違いの妹である。心臓の病気で、幼い頃から何度となく入退院を繰り返していた。おれが3年前にこの街を出てった時には、退院して、だいぶ元気になっていたのに、1年前に病状が悪化して、また入院してしまっていた。 太一の表情は真剣だった。おれも心配になる。
「そうか…。せっかく今日仕事休みなのに悪かったな。おれも近いうちに見舞いに行くよ。マナちゃんによろしく言っといてくれ」
「すんません。武蔵さんが来てくれたら、あいつ、きっと喜びます」
 そう言うと、彼はペコッと頭を下げて、病院に向かった。
 おれも空音たちと別れて、マサキたちの所へ急いだ。

 日の沈む頃に、おれの『家』は完成した。サラ婆に宣言した通り、かなり縦長な『部屋』に、ベッドを無理矢理押し込んで、その前に小さなテーブルを置いただけの、いたって簡素な家である。当たり前だけど、扉は手動。だが、ちゃんと扉がついているだけでもありがたい。窓ガラスの割れているところや、床の、穴が開いている部分には、大工見習いの刃が、仕事場からタダでもらってきてくれた板きれを打ちつけた。テーブルは、その余りの板で作ったものである。ベッドは、夕方、3人でマサキの実家に行き、今は使っていないのを譲ってもらって、マサキのトラックに乗せて運んできた。安い、電池式の、小さなランプを買い、テーブルの上に置いた。
「なんか秘密基地みたいっすね」
 自分たちの仕事ぶりと、家の仕上がり具合に、満足げにマサキが言った。



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