そんなもんだから、せいあにかけ寄ろうとすると、
「ぶっ!」
…こけた。よりによって、何もない所で。周りのみんなが笑う。
「…」
さっさと起き上がって立ち上がろうとすると、こけた時にくっついたっぽい小さい黄色の紙が、手の腹からひらりと地面に落ちた。そこら中に散らばっている、紙吹雪のうちの1枚のようだ。
「?」
よく見ると、活字で印刷された文字で、何か書いてある。その紙を拾い上げて、読んでみた。そこには、こう書いてあった。
『さまよえる武士(ぶし)を導(みちび)く星(ひかり)。 その星(ほし)を守(まも)るべき、たったひとりの武士(ゆうしゃ)。』
ブーーーーッ。思わず吹き出した。
なんだコレ。わけわかんねぇ。サムイし、クサイし、ムリありすぎだろ、ヨースケさんよ。おれのためにご丁寧に、全部ふりがなふってあるし。でも『星』って、ひかりって読むんだっけ。『武士』って、ゆうしゃ?って、さすがにそれはないか。
またしても、ごちゃごちゃ思いながら、おれは結局、その紙をジーンズのポケットに入れた。どうやら本格的に漢字に目覚めたらしいヨースケは、今は、せいあたちと一緒に騒いでいた。
…キライなんだよね、おれ。こーゆーの。
夏祭りの日に読みかけた、ベストセラーの詩の本を思い出した。
でも、一生に一度くらいなら、こんな風に祝われてもいいかも。マジ。
せいあたちのところに行くと、空音と樹里が茶化すように言ってきた。
「武蔵――。あんた、せいあのこと泣かすんじゃないわよ」
「うっせ」
『分かってるよ』は、胸の中でだけつぶやいた。
横のサラ婆と目が合うと、彼女は静かにこう言った。
「武蔵、せいあを頼んだぞ」
その顔は真剣そのものだった。祈るように見つめられて、おれもそれに応えた。
「ああ」
傍らのせいあを見た。彼女もおれを見上げた。彼女の足元には、ラウがちょこんと座っている。
せいあが、ヒトデの顔を真っすぐに見て言った。
「ヒトデ、あんたは娼婦には向いてないよ。何か、別の仕事探しな」
「え…」
ヒトデが、ちょっと寂しそうな瞳をした。
「でも、ずっとあの家にいていいんだからね」
せいあが笑った。
「…はい」
ヒトデも、澄んだ瞳で笑った。
≪つづく≫
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「ぶっ!」
…こけた。よりによって、何もない所で。周りのみんなが笑う。
「…」
さっさと起き上がって立ち上がろうとすると、こけた時にくっついたっぽい小さい黄色の紙が、手の腹からひらりと地面に落ちた。そこら中に散らばっている、紙吹雪のうちの1枚のようだ。
「?」
よく見ると、活字で印刷された文字で、何か書いてある。その紙を拾い上げて、読んでみた。そこには、こう書いてあった。
『さまよえる武士(ぶし)を導(みちび)く星(ひかり)。 その星(ほし)を守(まも)るべき、たったひとりの武士(ゆうしゃ)。』
ブーーーーッ。思わず吹き出した。
なんだコレ。わけわかんねぇ。サムイし、クサイし、ムリありすぎだろ、ヨースケさんよ。おれのためにご丁寧に、全部ふりがなふってあるし。でも『星』って、ひかりって読むんだっけ。『武士』って、ゆうしゃ?って、さすがにそれはないか。
またしても、ごちゃごちゃ思いながら、おれは結局、その紙をジーンズのポケットに入れた。どうやら本格的に漢字に目覚めたらしいヨースケは、今は、せいあたちと一緒に騒いでいた。
…キライなんだよね、おれ。こーゆーの。
夏祭りの日に読みかけた、ベストセラーの詩の本を思い出した。
でも、一生に一度くらいなら、こんな風に祝われてもいいかも。マジ。
せいあたちのところに行くと、空音と樹里が茶化すように言ってきた。
「武蔵――。あんた、せいあのこと泣かすんじゃないわよ」
「うっせ」
『分かってるよ』は、胸の中でだけつぶやいた。
横のサラ婆と目が合うと、彼女は静かにこう言った。
「武蔵、せいあを頼んだぞ」
その顔は真剣そのものだった。祈るように見つめられて、おれもそれに応えた。
「ああ」
傍らのせいあを見た。彼女もおれを見上げた。彼女の足元には、ラウがちょこんと座っている。
せいあが、ヒトデの顔を真っすぐに見て言った。
「ヒトデ、あんたは娼婦には向いてないよ。何か、別の仕事探しな」
「え…」
ヒトデが、ちょっと寂しそうな瞳をした。
「でも、ずっとあの家にいていいんだからね」
せいあが笑った。
「…はい」
ヒトデも、澄んだ瞳で笑った。
≪つづく≫
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