珍友*ダイアリー

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『僕たちなりの大人~Our Own Adult~』第六十六話

2006-09-30 15:35:33 | 第八章 旅立ち
 息を詰めてうつむいた。
 そうか…。だけど。
「やだよ」
 うつむいたまま、つぶやいた。けれど声は、震えない。
「え…」
 彼女が小さな声をあげた。
 顔をあげた。
 少し離れた場所の彼女の顔を、彼女の瞳を、真っすぐに見て言った。
「おれは、お前を連れていく」
「…っ」
 今度は、彼女が息を呑んだ。
 見つめ合ったまま、少しの沈黙。
 彼女は、さっきのおれと同じようにうつむいた。
 が、すぐに顔をあげると、
「うん」
 とっておきの笑顔。
 おれたちが互いの所へ歩み寄ろうと、足を踏み出した、その時、
 ワーーーッという歓声や拍手や口笛の音とともに、頭上から、まるでパレードのような、色とりどりの紙吹雪が降ってきた。おれも彼女も驚いて、頭上を見上げた。そこには、
 みんながいた。『ガーリック』の二階のテラスや、一階の入り口や窓から、身を乗り出して、こっちを見ている。
 二階のテラスに、空っぽのカゴを逆さまにして振っている、ヨースケと太一と刃がいた。どうやら、彼らが紙吹雪を降らしたようだ。
 ヨースケ、京一、リズ、京太郎、店長、サラ婆、太一、刃、マサキ、空音、樹里、ヒトデ、鉄平とゆかいな仲間たち、凛花、凪、茂さん、深夜さん、慎吾さん、そしてラウ…………おれたちがこの街で出逢った全ての人たちが、そこにはいた。数えきれないほどの人たちの中で、たった1人、マナだけを除いて。でもマナは今、中央の病院で、必死に病気と闘っている。
 舞い落ちる紙吹雪の中、みんなが次々に入り口から出てきた。
                           ≪つづく≫

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