「せいあ、おめでとーーーっ」
リズがそう言って、せいあに抱きついて、持っていた、せいあの荷物を渡した。すぐそばには、サラ婆、空音、樹里、ヒトデもいる。樹里はラウを腕に抱いていて、空音とヒトデは、はた目にも分かるほど泣いていた。樹里とリズ、サラ婆も涙ぐんでいた。
「よかったじゃん、フラれないで」
京一に後ろから声をかけられた。振り返ろうとすると、
「一回、フラれてんじゃーん」
と、横から飛んできたヨースケにどつかれた。
「うっせーよ」
と、少しよろけて、ムキになって彼らを振り向いた途端、あっと声をあげた。
「それ…」
京一の腕に抱かれた京太郎を、思わず指差した。京太郎は、おれがあげた、だぶだぶの白い『鮭』のTシャツを着ていた。
「ばぷーーーっ」
京太郎が元気に両手をあげた。
はしゃぐ京太郎を落とさないように、慌ててお尻を押さえて抱え直した京一が言った。
「それがさぁ、こいつ、この服、なんかミョーに気に入っちゃってて」
くやしそうに、照れ臭そうに。
「マジで?」
素直に嬉しかった。
京一が、京太郎をおれに抱かせてくれた。京太郎を抱くのは2回目だった。壊れてしまいそうなほど、小さくて柔らかい京太郎の体を、そっと京一の見よう見まねで抱いた。京太郎は、おれの腕の中でも、嬉しそうに、両手をあげてはしゃいでくれた。
「お前、やっぱ、いー奴じゃんか。センスいーなー。分かってっし」
京太郎の頬に、自分の頬をすり寄せて言った。心地よい肌の温もりと、かすかな優しい匂いを感じた。
「武蔵――――っ!お前、オレのせがれに、じょりじょりすんなーーー!」
すぐそばで、京一が両手をわなわな震わせて叫んだ。
「なんだよ、いーじゃん、な、太郎」
ねぇ。朝剃ったもん、ちゃんと。が、京一は、
「よくねぇーーーーっ!やりたかったら、今すぐ剃ってこい!ついでに、変なトコロで省略すんな!」
と叫ぶなり、おれの手から京太郎を、ばっととり上げた。
なんですと。
思わず自分の顎に手を触れると、短いヒゲの感触がした。
…ここまで来たらもう、自分のヒゲ発育細胞が、恐ろしい以外のなにものでもない。
ぐったりしているおれとは逆に、京一は怒ってるけど、顔は笑ってた。
≪つづく≫
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リズがそう言って、せいあに抱きついて、持っていた、せいあの荷物を渡した。すぐそばには、サラ婆、空音、樹里、ヒトデもいる。樹里はラウを腕に抱いていて、空音とヒトデは、はた目にも分かるほど泣いていた。樹里とリズ、サラ婆も涙ぐんでいた。
「よかったじゃん、フラれないで」
京一に後ろから声をかけられた。振り返ろうとすると、
「一回、フラれてんじゃーん」
と、横から飛んできたヨースケにどつかれた。
「うっせーよ」
と、少しよろけて、ムキになって彼らを振り向いた途端、あっと声をあげた。
「それ…」
京一の腕に抱かれた京太郎を、思わず指差した。京太郎は、おれがあげた、だぶだぶの白い『鮭』のTシャツを着ていた。
「ばぷーーーっ」
京太郎が元気に両手をあげた。
はしゃぐ京太郎を落とさないように、慌ててお尻を押さえて抱え直した京一が言った。
「それがさぁ、こいつ、この服、なんかミョーに気に入っちゃってて」
くやしそうに、照れ臭そうに。
「マジで?」
素直に嬉しかった。
京一が、京太郎をおれに抱かせてくれた。京太郎を抱くのは2回目だった。壊れてしまいそうなほど、小さくて柔らかい京太郎の体を、そっと京一の見よう見まねで抱いた。京太郎は、おれの腕の中でも、嬉しそうに、両手をあげてはしゃいでくれた。
「お前、やっぱ、いー奴じゃんか。センスいーなー。分かってっし」
京太郎の頬に、自分の頬をすり寄せて言った。心地よい肌の温もりと、かすかな優しい匂いを感じた。
「武蔵――――っ!お前、オレのせがれに、じょりじょりすんなーーー!」
すぐそばで、京一が両手をわなわな震わせて叫んだ。
「なんだよ、いーじゃん、な、太郎」
ねぇ。朝剃ったもん、ちゃんと。が、京一は、
「よくねぇーーーーっ!やりたかったら、今すぐ剃ってこい!ついでに、変なトコロで省略すんな!」
と叫ぶなり、おれの手から京太郎を、ばっととり上げた。
なんですと。
思わず自分の顎に手を触れると、短いヒゲの感触がした。
…ここまで来たらもう、自分のヒゲ発育細胞が、恐ろしい以外のなにものでもない。
ぐったりしているおれとは逆に、京一は怒ってるけど、顔は笑ってた。
≪つづく≫
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