医療と薬の日記

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「医師の診察料金より薬局技術料の方が高い」という都市伝説

2015-12-08 17:15:51 | 日記
月に1~2回、薬局や医療に関する記事を作成し、BLOGOSに載せて頂いています。
記事を読んだ方からのコメントはどれも非常に興味深く(中には対応しづらいものもありますが…)、普段の業務中には聞けないような話も出てきますので、楽しみにしています。


そうしたコメントの中で、時折見かける内容があり、以前から気になっていました。
   『調剤薬局が得る手数料は、医師の診察代よりも高額であり、けしからん。』
というものです。
この意見は、患者側からのみでなく、医師の方から寄せられることもあります。
さながら都市伝説のごとく、まことしやかに広がっているようです。

そうした中、ビジネスサイトであるJBPRESSの記事にも、この内容が記載されているのを見かけました。

「医師の診察代金よりも高い調剤薬局技術料」として、薬局の報酬(平均2,200円)は医師の診察料(医師の診察料は1,920円を例示)よりも高額になっている、といった内容でした。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45383


◆ 比べるなら、平均どうしで比較すればいいだけ

実際のところ、この都市伝説の種明かしは簡単です。薬局の技術料と医師の診察料金を比べたいのであれば、平均の金額どうしで比較すればよいだけです。

厚労省が作成した資料に、受診(外来)1回あたりの医療費(診療報酬)が記載されています。
※中央社会保険医療協議会総会 第294回 資料 外来医療(その1)について
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000081549.html

平成25年では、診療所で6,330円、病院では12,750円です。
診療報酬のうち、技術料は概ね80%とされますから、診療所5,000円、病院10,000円程度が受診1回あたり技術料ということになり、これが薬局の技術料2,200円と比較すべき対象です。(詳細な内訳については資料に明示)

このような各施設での医療コストの傾向は、いずれの先進国でも似たようなものです。だからこそ医療費削減を考慮する際には、
  「大病院から診療所(クリニック)へ」
  「安定している患者はリフィル処方箋(複数回使用できる)で直接薬局へ」
  「軽微な症状の患者は市販薬へ(公的医療費を使わない)」
と患者を誘導することを検討する訳です。

今回のような言説が意図的なものなのか、それとも単に認識の誤りによるものか、私には分かりかねますが、困ったものだと思います。


※JBPRESSを運営するisMediaNETWORKに対し、問い合わせフォームより内容の指摘と記事の訂正を求めましたが、1週間経っても返事がありませんでしたので、やむを得ず今回の記事を作成しました。