真似屋南面堂はね~述而不作

まねやなんめんどう。創業(屋号命名)1993年頃。開店2008年。長年のサラリーマン生活に区切り。述べて作らず

意地悪捕鯨船もどきと辛い決断~「非情の海」②

2008-07-20 | 読書-2008
いずれにしても、捕鯨船をモデルに中小造船所で大急ぎで大量に建造できるように考えられた、速度わずか16ノット(浮上したUボートともし競走したら走り負ける!)の船に80~90人が乗り組んで何ができたかというと、

The Flower-class corvettes are credited with participating in the sinking of 47 German and four Italian submarines.(wiki)

そのために払った犠牲は:
36 ships in the class were lost during World War II, many due to enemy action, some to collision with Allied warships and merchant ships.
Of the vessels lost to enemy action, 22 were torpedoed by U-boats, five mined, and four were sunk by enemy aircraft.

こんだけえ?と思うなかれ。
戦果はただ沈めたUボートの数にあらず。

真の成果はコルベットが駆逐艦の助っ人としてUボートの邪魔をするなどして、そのお陰で無事に目的地に辿り着けた輸送船が運べた輸送量と考えるべきだ、という指摘は正しいと思う。

Success for the Flowers, therefore, should be measured in terms of tonnage protected, rather than U-boats sunk.(wiki)

こういう理解でよいかな:
「すわ、Uボートがいるぞ」となると、コルベットなどの護衛艦はその上と思しきところにすっ飛んで行って爆雷を投下する。
こうなるとUボートは浮上できず、また潜航したまま逃げようと思っても爆雷が降って来るし、静かに身を潜めているしかない。

我慢比べの結果、ドイツ人がかくれんぼが上手だと、水上艦が「うーむ、逃げられちゃったかな・・・」とあきらめて立ち去る(勝負は引き分け)。

その後、息も絶え絶え(蓄電池と酸素が・・・)になったUボートが浮上して、「ふう、助かった」となっても、船団はずっと遠くに去った後なので、潜水艦はまた1から次の獲物を探すしかない。

というような展開はしばしばあったと思うが、「Uボートを仕留めそこなった」けれども護るべき船団はとりあえず虎口(狼口?)を脱したわけで、小さなコルベットは十分役に立ったといえる。
(ウルフ・パック=Wolfsrudeltaktikという協同戦術だとまた話は別?)

何かの拍子にUボートを仕留めることができれば、それはもう祝杯をあげるべき大手柄だが、逆襲されて沈められたケースも上記のように少なくないわけだ。
(小説のコルベット艦「コンパスローズ」も雷撃されて、「いきなり?」という感じであっという間に沈没してしまう。90名中11名しか助からない。)

護るべき味方の船が沈められて要救助者が泳いでいる場合に、当然すぐに救助するでしょう、と思うのは平時の発想らしい。
救助するためには艦を停止する必要があるが、それは即ち「狙いやすい的を提供する」ことにほかならない。

さらに、Uボートがまだ近くに潜んでいると分かっている場合は、爆雷を投下してこれを攻撃する必要がある。

ヒトが浮いて泳いでいるところで爆雷が爆発したらどうなるか?という場面が小説中にあるのだが(お食事中の方はちょっと・・・という場面デス)、護衛艦の艦長は、水中の敵を仕留めるためには水上で助けを求めている味方を見殺しにする決断を迫られる。

潜水艦の攻撃を優先しろと命令されているのは、もし逃がしてしまえば、そいつのために将来更に多くの味方が犠牲になるかもしれないという理由と思われ、軍事的には正しい理屈なのだろう。

このような決断を元々軍人ではなかった志願予備隊士官にさせたわけで、目の前で助けを求める味方が爆発で吹き上げられる・・・・などということもあった由。

味方が泳いでいるところで爆雷を投下したシーンが、のちも主人公らの頭にちらつく。

The Flower Class Corvette Association(旧乗員会):
http://www.fcca.demon.co.uk/

話は変わるが(上記からの連想ではある)、抽選で選ばれた裁判員に有罪無罪だけでなく量刑まで決めさせるのはやりすぎだぞ。
アナタもワタシも、死刑判決にかかわる可能性がある、という制度でしょ。

そんな事までするようにと誰が頼んだ?
テレビニュースを見ながらビール片手に「ひでえな、あんなヤツ死刑にすりゃあいいんだ」と家族に向かって言うのとはわけが違うのよ。

きっとうまくいかないぞ。
「改革だ改革だ」と勢いで決めるとろくなことがない、のよい見本と後世の人々からあきれられるぞ。

つづく

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