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宮部みゆき『おまえさん(上)』あらすじと感想

2020-08-15 11:14:00 | 紙の書籍
講談社文庫 宮部みゆき『おまえさん(上)』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
「おまえさん」(一~十八)


【あらすじ】
痒み止めの新薬「王疹膏」を売り出していた瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の同心・平四郎は、将来を嘱望される同心の信之輔と調べに乗り出す。検分にやってきた八丁堀の変わり者“ご隠居”源五右衛門はその斬り口が少し前に見つかった身元不明の亡骸と同じだと断言する。
両者に通じる因縁とは…。


【感想】
『ぼんくら(上)(下)』、『日暮らし(上)(下)』に続く江戸時代もの。『日暮らし(上)(下)』は読了したのに、もたもたしていて感想をアップし損ねた作品。やっぱり、感想は読了直後にさかさかとアップしないといけないな~。
どちらもNHKでドラマ化されていて、読みながら演じていた役者の顔が浮かび、本所の岡っ引き政五郎を亡き大杉漣が演じていたことを思い出したりした。

宮部みゆきの時代ものには、①艶っぽいが性格に難のある女、②利発で健気な子供、③酒毒で頭がいかれた乱暴者がよく出てくる。この作品では、①はおでこの生みの母親おきえ、②はおでこと平四郎の甥の弓之助、③は包丁を振り回してお縄になった仙太郎。
よく登場するということは、これらのキャラクターは物語を作りやすく、話を転がしやすいのだろうか?

主人公の平四郎は昼行灯のようないたってやる気のない御仁。口癖は「めんどくせぇなぁー」だ。読んでいてイライラすることもしばしば。
とはいえ、律儀な働き者の小平次やお徳、しっかりものの妻、やり手の政五郎などがいて、一人くらいは気の抜けた者がいたほうが、読んでいてほっ。。とできるのかもしれない。この性格が暴力や殺人、差別や偏見、嫉妬や妬みなどの重さから、作品全体を軽くしてくれるのだと思う。

弓之助は恐ろしいほどの美形に生まれついた少年だ。あまりに美しいので、「この子は町屋で育つのは剣呑です」と平四郎の妻(弓之助の母親は姉)に心配され、武家である井筒家の養子にしたいと願っている。
「弓之助のように生まれつくこと。その違いはどれくらいのものなのか?人生の道のりは、どんなふうに異なるか?」と、平四郎は己の馬面は棚上げにして考えるのがおかしかったりする。
本人の預かり知らぬところの容姿の美醜が、人生をどう転がすのか興味があるのだろう。もっともだと思う。

事件を探索していく件はわくわくする。幾つもの些末な事柄がひとつひとつ集まってきて、ピースがぱちぱち!とはまっていくようで小気味よく楽しい。
身元不明の死体だった男は、「両足の中指が長い」ことが決めてとなって身元が判明する。これは…。横溝正史の『悪魔の手毬唄』と一緒だよ~と思ったのは、私だけではないと思う。宮部みゆきが知らぬ訳はないので、横溝正史へのオマージュなのだろう。

人間関係、過去の因縁が絡んで絡んでもつれきった糸を、ひとつひとつ丁寧に解いてゆく小気味のいいミステリー。
下巻はどう展開していくのか楽しみ♪






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