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宮部みゆき『おまえさん(下)』あらすじと感想

2020-08-17 11:30:46 | 紙の書籍
講談社文庫 宮部みゆき『おまえさん(下)』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
おまえさん(十九~二十一)
残り柿
転び神
磯の鮑
犬おどし


【あらすじ】
父親が殺され、瓶屋を仕切ることになった一人娘の史乃。気丈に振る舞う彼女を信之輔は気にかけていた。一方、親兵衛の奉公先だった生薬問屋の当主から明かされた二十年前の因縁と隠された罪。
正は負に通じ、負はころりと正に変わる。平四郎の甥っ子・弓之助は絡まった人間関係を解きほぐすことができるのか?


【感想】
弓之助が大方の謎が解けたので、関係者を集めていざ謎解きをすることになる。おとく屋の二階に平四郎、弓之助、本宮源右衛門、真島信之輔、政五郎、おでこ、大黒屋藤衛門、佐多枝、おとしが一同に会した。エルキュール・ポワロの謎解きのシーンのようでもある。
弓之助の推理した話が長く一向に着地しないので、さすがに謎解きを引っ張るにしても冒頭から冗長気味。
誰かが話す、また誰かが合いの手を入れる。エンドレス。
話が回想という名の枝葉を茂らせ剪定が必要なのに、どんどん逸れていって話が長くなる。ちょっとイライラ。

同心の平四郎は瓶屋の後添え佐多枝のことをよく思っていなかった。佐多枝がおとく屋の二階に呼び出されたとき、初めてちゃんと対峙してそれが間違っていたことに気がつく。「つまり、人が人をどう思うかということなど、何かの拍子にころりと変わるのだ。掌を返せば雨、掌を返せば雲。今まで見くびってていて、相済まぬ。」と心の中で詫びる。
まぁ。。そんなものだろうとは思う。それでも、自分の非を素直に認めるところは偉い。できそうでできないことのひとつだから。

ご隠居の源右衛門が言った「余分の命」という言葉が深く哀しい…。自分も武家の長男ではなく冷や飯食いの身から婿入りし、数年で訳あって出戻り、親戚をたらい回しにされてきた身の上なのだ。どこにも自分の居場所がなかった人生だった。
長男に生まれなかったのは自分のせいではない。だが、武家に限らず跡取りの長男以外は皆、無駄飯食いで長じれば厄介者になる。さっさと婿入りするか、自分でなにがしかの生きる道を見つけなければならない。生きていかなけばいけないからだ…。
自分の身の上を憐れみ、人を妬み、恨みを募らせた者が他者に刃を向けてしまう。哀しいがそれはやっぱりだめだ…。辛くてもだめだ…。

瓶屋の一人娘史乃が最初から怪しい匂いがしていると思っていたら、案の定ビンゴ! 史乃と医者の見習いだった秋川哲秋が犯人だった。思ったより意外性のない結末。
追ってをかけられ手傷を負い、川に飛び込んだ哲秋こと哲次は水死体となり発見される。その筵を掛けられた遺体に対面した史乃は、身も世もなくすがりついて泣きわめく。「おまえさん!おまえさん!」。
裕福な瓶屋の一人娘、まだ十五歳の小娘は祝言も挙げぬうちに女になっていた。史乃の佐多枝や哲次の馴染みの夜鷹に対する嫉妬が、女だな…と溜め息が出る。
作品のタイトル『おまえさん』はこの史乃の魂の叫びだったのだな。。

ラスト、平四郎が胸の中で呟く。「人は何にでもなれる。厄介なことに、なろうと思わなくても何かになってしまうこともある。柿になったり、鮑になったり、鬼になったり仏になったり、神様になってみたりもする。それでも所詮は人なんだ。人でいるのが、いちばん似合いだ。」
そうだなぁ。。としみじみ思った。












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