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本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録。

川上弘美『ニシノユキヒコの冒険』あらすじと感想

2013-03-04 10:25:43 | 紙の書籍
新潮文庫 川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
パフェー 
草の中で 
おやすみ 
ドキドキしちゃう 
夏の終わりの王国 
通天閣 
しんしん 
まりも 
ぶどう 
水銀体温計 
解説 藤野千夜


【あらすじ】
「ニシノユキヒコ」こと「西野幸彦」は魅力的でものすごくモテるが、どうしようもない“ダメな男”。彼と関わった女性たちの視点で描かれるオムニバス。


【感想】
「ニシノユキヒコ」こと「西野幸彦」という、魅力的かつどうしようもない“ダメな男”の人生を、彼と関わった女性たちの視点で描かれている。一人につき一話のオムニバス形式。恋は満載だがタイトルの冒険はない。
こざっぱりと清潔で礼儀正しく、男前、堅実な会社勤めだったりするニシノくん。女性たちは誰もがいつの間にか惹かれていってしまうわけで。
ただし、誠実ではないところがミソ。決して一人の女性を大切にするということができない質。“ダメな男”を通り越して、もはや“ろくでなし”の称号を授けてもよいかと。
にもかかわらず、ニシノくんは思春期から晩年に至るまでず~っとモテ続け、常に数人の女性とおつきあいしているというありさま。女性どころか男性からも恨みを買いそうだ。暗い夜道は気をつけたほうがいい。
なぜ、こんな男にみな惹かれていってしまうのか? 不思議といえば不思議、こんな一文で「あぁ。。そうかぁ。。」と腑に落ちた。

>女自身も知らない女の望みを、いつの間にか女の奥からすくいあげ、かなえてやる男。それがニシノくんだった。

ふと、堺雅人主演の映画『クヒオ大佐』を思い出した。詐欺師のクヒオ大佐と同じなんだな、ニシノくんは。ただ詐欺をはたらかなかっただけで、女性が望むものを敏感に感じとり、それをいともやすやすと実行にうつすことができる。簡単で単純なことだけに、これをさらりとできる男性はほぼ皆無かと思う。

ニシノくんにいらいらしつつ、でもちょっとよいなぁ。。とも思い、もやもやしたものがいつまでも残る読後感。
女性におすすめ♪ 女性心理を知りたい男性にもぜひ♪


【余談】
これで川上弘美の文庫本は11冊目になった。まだまだ追いついていないけど。