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伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』あらすじと感想

2014-05-22 11:00:49 | 紙の書籍
新潮文庫 伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
動物園のエンジン
サクリファイス
フィッシュストーリー
ポテチ
解説 佳多山大地


【あらすじ】
動物園のエンジン
私は大学の先輩、河原崎さんを誘って夜の動物園に行く。同じ大学の同級生、恩田も一緒に。

サクリファイス
黒澤はやばい仕事を本業としている。あるとき山田という男の人探しを頼まれる。

フィッシュストーリー
麻美は東京に帰るため飛行機に乗っていた。そこでハイジャックに遭ってしまう。

ポテチ
今村と中村は空き巣だ。新築マンションの一室に忍び込んだとき、女の声で留守電が入る。


【感想】
「フィッシュストーリー」を除くと、極悪人とまではいかない小悪人な裏街道の人たち(男性)が多く出てくる。ある意味、真っ当な市井の人とは言い難いような人たち。
不快でははないが、黒澤などはその冷めた感情が怖いと思う。「ポテチ」の中で、「俺には、人にとって大事なことが分からない」と言うところが怖いのだ。こういう人をサイコパスというのだろうか?
平気で人殺しをするような輩はもちろん怖いのだが、こういう心根をもった人間が実はもっと怖いような気がする。
読後感が一番よく、救いを感じられたのは「フィッシュストーリー」。嫌味のない“正義”の話。ロックバンドの一枚のレコードを通じて、人と事柄が時間を越えてリンクする。
あと、女性はといえばこちらも「チルドレン」にも通じるタイプ。短大や大学に在籍していても真面目には通わず、バイト(お水も)やホストクラブ通いやらに没頭していたりする。そして、その中で登場人物の男性と知り合い、交際して…という展開。

他の作品へのリンク。冒頭の何気ない描写が、後々、大きな意味をもつ伏線が張られたり、最後にきっちりと回収。この展開の仕方は作者お得意な手法なのかと。
全体的にちりっ…とする作品集。


【余談】
伊坂幸太郎の作品は『チルドレン』に続いて2冊目。こちらはシリーズものでない中編が4編の作品集。

ふと、思い出した話がある。以前にどこかで聞いた話。
居酒屋で大学生のグループが飲んで騒いでいて、たまたま近くにいた中年の男性にたしなめられた。その男性は実は「や」のつく自由業の方で、こうおっしゃったそうな。
「俺はな!人を殺したことはあるが、親を泣かしたことはねぇ!」
つまり、「親の脛かじりの分際で遊んで騒いでんじゃねぇ~!」と言いたかったらしい。
すごい本末転倒な理屈だとは思うが、彼は彼なりの“筋”と“正義”があってのことなのだろう。理解には苦しむけど。


【リンク】